新型コロナウイルスの影響で、企業の倒産や縮小が相次ぎ、仕事を失う人が増えるという予測があります。政府はこうした事態に、雇用の維持と事業の継続のための補正予算を組んで、助成金の拡大や困窮者への給付金などの実施を進めています。しかし、これらはまだ制度として固まっていない状況です。そこで、ここでは現行の制度の中で、すぐに貰える手当・給付金をご紹介します。

  • 働けなくなった時に貰えるお金とは?

    働けなくなった時に貰えるお金とは?

傷病手当金

会社員などが加入できる健康保険の被保険者であれば、病気やケガで会社を休んだ時に、傷病手当金の給付を受けることができます。

条件としては、連続して3日間会社を休んだ場合に、4日目以降の休んだ日について支給されます。

支給額は欠勤1日につき、支給月以前12カ月間の標準報酬月額の平均額を30で割った金額の3分の2となっています。月収が30万円であれば、およそ6,600円になります。

傷病手当金で気になるのは、新型コロナウイルスに感染して、仕事を休んだ場合にも支給されるのかという疑問ですが、これは支給の対象となります。

また、自覚症状はないものの、検査で陽性となり、仕事を休んでいる場合、あるいは、自覚症状があり、仕事を休んでいたが、検査の結果は陰性で別の疾患に罹患していた場合、どちらも傷病手当金の支給対象となります。その他の詳細は 「新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について」(厚生労働省)をご覧ください。

申請方法は加入している保険組合から「傷病手当金支給申請書」を取り寄せて、必要事項(医師の記入と事業主の記入が必要)を記入し、提出します。

失業手当(雇用保険の基本手当)

雇用保険に加入していた人が貰える手当です。離職した日以前の2年間で、加入期間が通算して12カ月以上あれば、基本手当の支給を受けることができます。離職の原因が解雇や倒産などによる会社都合の場合は、離職日以前の1年間で、6カ月以上の加入期間があれば支給されます。

支給額は、退職前6カ月間に支払われた賃金の総額を180で割った賃金日額の50%~80%となっており、賃金が低い人ほど割合が高くなります。

例えば、年齢35歳、勤務年数5年、月収30万円のAさんが会社都合で離職した場合、基本手当の日額は約6,000円となります。

給付日数は離職理由や年齢、雇用保険の加入年数によって異なり、加入年数が10年未満かつ自己都合で退職した場合は、90日間支給されます。

上記のAさん場合は、会社都合の離職であるため、180日間支給され、全額支給を受けた場合には108万円になります。

居住地のハローワークで求職の申し込みをし、失業の認定を受けることで手当が支給されます。

再就職手当

雇用保険の基本手当を受給していた人が、支給される日数の3分の1以上を残して、安定した職(雇用期間が1年を超えるもの)に就いた場合に再就職手当が支給されます。

支給額は残っている日数の割合によって変わります。3分の1以上残して就職した場合は、基本手当日額に残った日数の60%をかけた金額、3分の2以上を残して就職した場合は、基本手当日額に残った日数の70%をかけた金額が一時金で支給されます。

手当として貰える総額を考えると、就職活動期間を延ばして満額受け取りたいものですが、自己都合で離職した場合は、支給開始までに3カ月の給付制限もあり、長引くことで生活費の不安は大きくなります。早めに就職先を決めて、新しい職場での給料と再就職手当を貰う方がメリットは大きいのではないでしょうか。

手続きの方法は、就職が決まった時にハローワークに申告すると「再就職手当支給申請書」を渡されるので、これに新しい事業主の証明を貰って提出します。

技能習得手当

再就職を目指しても今のままでは就職先が決まらないという人は、公共職業訓練を受けるという方法があります。公共職業訓練を受けるメリットは、お金を貰えながらスキルを身に付けられることです。

身に付けられるスキルは事務系をはじめとしてIT、建設・製造、サービス、介護、デザイン、理美容など、多種多様な分野のスキルが習得でき、また、第一種電気工事士、宅地建物取引主任者、介護職員初任者研修などの資格取得を目指すコースもあります。

受講料は基本無料で、一部テキスト代などは自己負担となります。

公共職業訓練を受けるには、ハローワークで求職の申し込みをした後、希望のコースを選んで受講申し込みをします。その後、訓練を実施する施設が行う面接や筆記試験などに合格し、ハローワークからの受講のあっせんを受けてようやく受講開始となります。そのため、申し込みから受講まで時間がかかります。 また、受講するコースによっては、申し込み期間外ということもあり、タイミングによっては数カ月待つ場合もあります。しかし、こうしたことをクリアできれば、基本手当を貰えながら、無料で学ぶことができ、さらに技能習得手当も貰うことができます。

技能習得手当は受講手当と通所手当の2種類があります。受講手当は1日につき500円、最大で40日間貰うことができます。テキスト代や昼食代になりますね。通所手当は交通費にあたるもので、片道2km以上あれば、上限4万2,500円までの全額が支給されます。

メリットはまだあります。公共職業訓練を受けている間は基本手当が貰えるため、受給期間が終了していても訓練が終わっていなければ、延長してもらうことができます。また、自己都合で離職した場合には、3カ月の給付制限がありますが、公共職業訓練を受けると給付制限が解除されるため、すぐに基本手当が受給できます。

新型コロナウイルスの影響で、倒産や解雇など、突然仕事を失うリスクが誰にでも起こりうる状況となっています。あまり考えたくはないですが、こうした事態を乗りきるための制度を知っておくことは有用です。いずれも申請をすることで貰えるお金なので忘れずに申請をしましょう。