11月20日、アニソン歌手・亜咲花による自身初のオンラインライブ“亜咲花ワンマンライブ2020~ERA~”が開催。今年春の、声帯ポリープの除去手術明け初となるワンマンライブは、”完全復活”どころかさらにスケールアップした姿をみせる、無観客であることが実に惜しく感じられるものだった。

●細部まで磨き上げ抜かれた歌声で、序盤から圧倒

まずはOP映像流れるなか、今回演奏を務めるガールズバンドの面々が登場。続いて背景のLEDスクリーンに映し出されたカーテンが開いたら、「Last Friday Night」から約1年ぶりのワンマンライブがスタートする。

リリックビデオを背負いつつ、笑顔満開で歌声の花を咲かせていく亜咲花。ブランクを感じさせないパワフルな歌声をサウンドに乗って響かせていけば、そのまま「Never ending true stories」と2曲連続のダンサブルなナンバーで“金曜の夜”を演出。グルーヴ感を感じさせる歌唱は、再びこの曲でフロアを埋め尽くしたオーディエンスが踊る姿を見られる日を待望させるものだし、Dメロの歌い上げも伸びやか。抜群のパワー感も見せつけてくれた。

歌唱後のMCでは、改めて手術後手術後初となるライブであることに触れると、「ポリープを取ったからこそ歌えるようになった曲も歌います!」と宣言し、カメラの向こうのファンの期待を高める。

また、オンラインライブという形式については「SOLD OUTがないし、世界中の人が観てくれる。オンラインの可能性は無限大!」と高らかに声を上げると、「ここからは攻め攻めで、アニソン歌手だからこそみせられるパフォーマンスを!」と宣言。現在放送中のTVアニメ『ひぐらしのなく頃に 業 』のOPテーマ「I believe what you said」からライブを再開する。

イントロが流れるのと同時に、彼女の視線は一瞬にしてシャープなものへと変わり、歌い始めの頃には不敵な笑みさえ浮かぶものに。歌声の圧自体は変わらないものの、Bメロ中の単語のひとつ「said」での声の広がり具合でゾクリとさせたり、2サビ「麻酔のように」でロングトーンを高らかに歌い上げたかと思えば直後の「落ちて」のフレーズをスーッと抜き気味で歌いミステリアスさと凛とした雰囲気を歌声で表現したりと、直前の自身の言葉を早くも有言実行してみせた。

かと思えば続く「SCREEEAM!!!」では、歌唱中にボルテージが急上昇したのかスピーカーに脚をかけ、サビでは巻き舌を用いて歌声にワイルドさを付加。有観客であれば間違いなくフロアを巻き込み熱く燃え上がらせるであろうこの曲での、前述のようなパフォーマンスに、心を滾らせたファンも多かったのではないだろうか。

後奏ではコールを呼びかけて最後に“一緒に”スクリームを決めると、そのままタオル曲「Round of new thing」へ。ここでもいつものように、ファンへのタオル回しや手振りの呼びかけも織り交ぜながら歌唱。落ちサビから大サビ前の歌い上げの力強さを筆頭に、楽しみながら聴く者を圧倒する歌声を、ここでもみせてくれた。

●オンラインで実現させた、“ファンと一緒”にライブする場

歌唱後の「これが1年ぶりのワンマンってやつかー!」の言葉も含めて、久しぶりのライブを堪能している様子の亜咲花。最近では歌以外の活動も多岐にわたる彼女だが、「軸はあくまでアニソン歌手!」と語り、「しっとりめの、思い入れのある曲を……」とスローなバラード「Marine SNOW」へ。

柔和な表情で包み込むような歌声を披露し、2サビ入りの優しさや情感の詰め込み方も実に見事。序盤から終始背負った背景映像や、ドローンから見下ろしたステージはまさに静かな海の底のようで、神秘的な雰囲気をステージ演出でも感じさせると、今度はグルーヴ感あるサウンドやベースに乗せて、大空へと想いを放つように歌声を響かせゆく「Singbird」を披露。

特に3-Bメロの歌詞をこのタイミングで自身の歌声で世界中へと発信していたことに、非常に大きな意味があったのではないだろうか。彼女が笑顔で送ったメッセージは、きっとたくさんの人の胸へと届いたことだろう。

そしてMCで「バラードは言葉一つひとつが私にも染み込んでくるし、みんなにも気持ちが届いていたらいいな!」との言葉でまとめると、背景のスクリーンにはビデオ通話でつながったファンの顔がずらりと登場。ここからは、ファンクラブ会員限定で参加者を募集した、参加型コーナーのはじまりである。

思い思いの場所からこの大切なライブを楽しんでいる姿がスクリーンに映し出されただけではなく、このライブ会場からの映像もその画面のひとつに。ファンと亜咲花が、スクリーン上に”集った”形となった。

その光景をバックにしつつ、「ずっとずっと信じて待ってくれていたみんなに感謝を込めて……」との言葉に続けて亜咲花が歌い始めたのは、「The Sunshower」。ファンとの“集い”のなかで彼女は、ひだまりのようであり、それでいて包み込むような大きさも感じさせる歌声が穏やかなサウンドと溶け合わせていく。

目の当たりにしたその光景が、不意に胸をジーンとさせてくれた。さらに間奏部分ではコメントも目にしつつ、Dメロでは“オンラインシンガロング”も行ない、大事なファンとの”一緒”のひとときを味わう。歌唱後、「みんなの顔を見ながら歌えたのが、本当に嬉しい!」と改めて口にした亜咲花の表情は、この日いちばんに輝いたものだった。

そしてライブはもうひとつのお楽しみ、亜咲花のワンマンライブ恒例・アニソンカバーコーナーへ。この日も語られた「“歌手”ではなく“アニソン歌手”になりたかった」という彼女ならではの、こだわりのコーナーだ。まず1曲目は原作シリーズの新刊発売を直前に控えた、TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』OPテーマ「冒険でしょでしょ?」。

ただパワー全開で圧倒するわけではなく、ポップなサウンドにマッチさせながらもエネルギッシュな歌声は、ただの“カラオケ”では終わらない素晴らしいバランスのもの。正直音源化してほしい。続く、TVアニメ『天元突破グレンラガン』OPテーマ「空色デイズ」も、楽しさは前面に出しつつ爽やかなロックサウンドに沿い、先ほどよりは多少パワーの出力をプラスするという微調整も。

加えて間奏ではバンドメンバーのほうを向いてくしゃっと笑い合い、仲間とともに歌える喜びも強く表すと、最後に「アニソン、サイコー!」のシャウトとジャンプエンドでアニソンカバーコーナーを締めくくった。