日本人特有のあいさつである「お辞儀」。お辞儀のなかでも軽く上体を傾ける「会釈」は、幅広い相手を対象に気軽にできるコミュニケーション方法のひとつです。
会釈をするときには「何となく腰を軽く曲げる」ということは理解していても、「お辞儀との違いがよく分からない」という人もいるのではないでしょうか。 この記事では、会釈についてその意味や適切なシーン、相手、お辞儀との違いをくわしくご紹介していきます。
会釈とは?
軽めに上体を傾けるお辞儀である会釈。会釈の基本についてみていきましょう。
会釈は3種類あるお辞儀のなかで最もカジュアルなもの
会釈はもともと仏教の考え「和会通釈(わえつうしゃく)」が由来で、軽くあいさつのお辞儀をすることです。「和会通釈」とは、「仏教の経典にある相反した異説を相互に照会し、その根本にある真義を明らかにすること」で、そこから派生して「人間相互の融和であるあいさつ」を意味するようになりました。
お辞儀には座ってする「座礼」と立ってする「立礼」があり、立礼には礼の深さによって「最敬礼」「敬礼」「会釈」の3種類に分けられます。この3種類のお辞儀のうち会釈は最もカジュアルなもので、軽く上体を傾けるものです。会釈の対象者はご近所の方や勤務先、取引先などの目上の人から同僚・部下まで幅広く、一日の始まりや終わり、すれ違うときなどの一般的なあいさつなど日常的に使います。
なお座礼は和室に座っているときのお辞儀です。和室に座っている場合、わざわざ立って立礼するのは失礼にあたりますので、注意しましょう。
会釈の角度はどれくらい?
会釈の角度は15度くらいが目安です。
お辞儀のなかでは敬意が最も低いとはいえ、頭を少し下げるだけでは会釈とはいえません。きちんと腰から上体を傾けるようにしましょう。
会釈とお辞儀の違い
前述のとおり立った状態でするお辞儀には、「最敬礼」「敬礼」「会釈」の3種類があり、会釈はそのお辞儀のなかの1種類です。また、会釈は幅広い相手を対象に軽く礼をするのに対し、お辞儀の対象は基本的にお客さまや目上の人で、礼の角度もお辞儀の種類によって変わります。
お辞儀は「ちょうどいい時期」「時にかなったあいさつ」を意味する「時宣(じぎ)」という言葉が語源で、相手に対して単純なあいさつから感謝・謝罪、敬意などを表するために礼をすることを指します。あいさつ的な意味合いが強い気軽な会釈よりも、あいさつから謝罪・感謝まで幅広い目的でおこなわれ、上体を傾ける礼の角度によっても相手や意味が変わります。
【シーン別】会釈とお辞儀の使い分け・角度の違い
それでは「最敬礼」「敬礼」「会釈」の3種類のお辞儀について、それぞれの違いやシーン別の使い分けについてみていきましょう。
お辞儀の種類 | 相手 | 利用シーン | 角度 | 目線 |
会釈 (軽い・浅いお辞儀) |
目上の人・親しい人など (友人、同僚、上司、近所の人など) |
日常的なあいさつを交わすときなど | 約15度 | 相手の胸元から腰のあたり |
敬礼 (普通のお辞儀) |
目上の人やお客さま (上司、お客さまなど) |
あいさつを交わす時など | 約30度 | 自分のつま先から2メートルくらい目のあたり |
最敬礼 (フォーマルシーンやていねいなお辞儀) |
重要人物 (得意先の上司、自分の会社の役員や社長、神社のお参りなど) |
初対面のあいさつ、通常のあいさつ、心を込めた感謝や謝罪をするときなど | 約45~60度 | 自分のつま先から1メートルくらい目のあたり ※女性は前で指を重ねる美しく見える |
シーンや相手によって適切なお辞儀が異なります。状況をきちんと把握し、しっかり使い分けましょう。もしシーンや相手によって「最敬礼」「敬礼」「会釈」のどれにすればいいか迷った場合は、敬礼をしておけば問題ありません。
会釈とお辞儀のポイント
会釈やお辞儀を「とりあえず」しても、逆に印象が悪くなってしまう場合もあります。角度やシーンのほか、会釈やお辞儀をする際に気をつけたいポイントについてチェックしていきましょう。
形ばかりの会釈はNG!
会釈は気軽にできるあいさつといっても、形だけとりあえずするのではなく、気持ちを込めるようにしましょう。いくら気のおけない友人やご近所の人でも、スマホを見ながらなどの「ながら会釈」や、仏頂面での「形式会釈」では、せっかく会釈をしても逆に悪い印象を相手に与えてしまうかもしれません。
会釈はできれば立ち止まってするのがベストですが、急いでいるときなどは多少 歩きながらでも会釈をしないよりはいいでしょう。表情も会釈などあいさつの大切な要素です。会釈をするときには「こんにちは」と心のなかで意識すると、自然と表情がやわらかかくなり、相手が受ける印象も良くなるでしょう。
お辞儀(敬礼)の際には3つカウントダウン!
お辞儀(敬礼)をする場合は上体を傾けている間少し静止しますが、頭を上げるタイミングに悩んでしまう場合があります。そのようなときは、頭のなかで3つ数えるといいでしょう。
テレビや映画などの話のなかでは、謝罪でペコペコ謝っているシーンも見かけますが、実際には何度もお辞儀をしたり、上体を傾けたあとにすぐ頭を上げたりするようなことはありません。
上体を傾けている間に3つカウントダウンすれば、ていねいなお辞儀に見える上に顔を上げるタイミングに悩まずに済みます。また腰から頭まで、背筋をまっすぐ伸ばすことを意識すると、お辞儀がきれいに見えます。
敬礼・最敬礼は静止して
会釈の場合は歩きながらでも多少許容されますが、お辞儀のなかでも敬礼や最敬礼をする場合は、必ず立ち止まって深々と上体を傾けましょう。
お辞儀や最敬礼をする相手によっては、相手が急いでいたり電話中だったりということもあるでしょう。そのような場合に相手が立ち止まらなかったり何かをしている手をとめなかったりしても、お辞儀をする側も歩きながらなど「ながらお辞儀」をしていいということではありません。
お辞儀の相手がどのような行動をしていても、お辞儀をする側はしっかりと静止して上体を傾けましょう。
男女で手の位置が異なる
お辞儀をする場合、男女で置くべき手の位置が異なります。
男性の場合は、手を伸ばして体の両脇に腕をぴったりとくっつけましょう。女性の場合は両手を体の前で軽くそろえ、左手は上、右手を下にします。腕は肩から自然に体の前にくるように、太ももあたりに両手を置くときれいに見えます。
お辞儀の前にあいさつ!
「語先後礼(ごせんごれい)」という言葉があるとおり、あいさつはお辞儀の前にします。頭を下げながらあいさつをすると声が下に向かって聞こえにくくなってしまいますので、まずはアイコンタクトをして顔をあげたままあいさつし、その後ゆっくりお辞儀をするようにしましょう。
会釈とお辞儀の違いを理解して、円滑なコミュニケーションを!
あいさつのなかでも、会釈はもっともカジュアルなお辞儀です。お辞儀と会釈の違いをしっかり理解し、シーンや相手によって使い分けることで、相手や周囲の人が受ける印象も変わってくるでしょう。
コミュニケーションの基本ともいえるあいさつが、その後の関係構築にも影響します。円滑な人間関係を構築するためにも、この記事を参考に会釈とお辞儀をしっかり使い分けてくださいね。