日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、国民年金法により、誰もが国民年金に加入し、国民年金保険料を納付する義務があります(※1)。このうち、会社勤めで厚生年金に加入している方、公務員で共済年金に加入している方以外は自ら国民年金に加入し、国民年金保険料を納める必要があります。

とはいえ、お金がないといった理由で国民年金保険料を納められない場合に、国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を受ける人もいるでしょう。これらの制度を利用する場合にも、一定の条件を満たした場合は、将来資金に余裕がでたときに、国民年金保険料を後から納付する「追納」が可能です(※2)

本記事では、国民年金保険料の追納によって得られるメリットや追納できる条件と手続き方法のほか、年金制度の仕組みについて解説します。

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国民年金保険料を追納するとどうなる?

追納とは、何らかの理由によって国民年金保険料を納付していなかった人が、後から未納分を納めることです。

国民年金保険料は未納の期間があると、将来、受け取れる年金受給額が減ってしまいます。年金の受給額を減らさないためには、国民年金保険料の未納を防ぐこと、未納になっても追納することが大事なポイントです。

ここではまず、追納をするメリットについて見ていきましょう。

追納をすると未納の場合よりも将来の受給額が増える

国民年金保険料には、免除制度や納付猶予制度といった制度があります。これらの制度を利用した後にその分を納付していないと、将来の年金受給額は、満額の国民年金保険料を納めた方よりも少なくなってしまいます。

しかし、資金に余裕が出たタイミングで追納をすれば、将来受け取る受給額を未納状態があるときよりもアップさせることができます。公的年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した資格期間が10年以上ある場合は、終身にわたって受け取れるため、老後の大きな助けになってくれるでしょう(※3)

社会保険料控除により節税ができる

国民年金保険料は、全額が社会保険料控除の対象となり、所得税や住民税を計算するときの所得から控除することができます。つまり、国民年金保険料を納めた分だけ節税できるのです(※4)

なお、納付した国民年金保険料の申告は、会社勤めの方は給与所得控除(※5)があるため、勤務先にて年末調整を行います。年末調整がない方は、自身で確定申告が必要です。

確定申告を忘れると所得控除を受けられなくなってしまいますので、確定申告を忘れないようにしましょう。

親が代わりに追納しても贈与税はかからない

追納する国民年金保険料は、本人が負担するほか、親や配偶者が負担することもできます。

通常は、家族間でも110万円を超える贈与があった場合、贈与税の対象になりますが、生計を1つにしている家族が社会保険料を負担した場合は、贈与とみなされません(※6)(※7)

  • 年金の受給額を減らさないためには、国民年金保険料の未納を防ぐこと、未納になっても追納することが大事なポイントです

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国民年金保険料の追納ができるのはどのような場合?

続いては、どのようなときに国民年金保険料が追納できるのか、具体的なケースをご紹介します。

国民年金保険料の免除制度を利用していた場合

国民年金保険料の免除制度は、被保険者である本人だけでなく、世帯主、配偶者それぞれの前年の所得(1~6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合や、失業によって急激に収入が減少した場合に利用できる制度です(※8)

経済的に、国民年金保険料を納めることが困難な場合、本人が申請して承認されると、国民年金保険料の免除が適用されます。

免除額は、被保険者の所得の額に応じて全額、4分の3、半額、4分の1のいずれかとなり、免除額に応じた年金を将来受け取ることができます。

また、免除額を期限内に追納すると、将来受け取る年金受給額を満額にすることが可能です。ただし、免除制度を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、免除の承認を得た当時の国民年金保険料額に経過期間に応じた金額が加算されます(※2)

国民年金保険料の納付猶予制度を利用していた場合

国民年金保険料の納付猶予制度は、20~50歳未満の方のうち、被保険者である本人、配偶者それぞれの前年の所得(1~6月までに申請する場合は前々年の所得)が一定額以下の場合に利用できる制度です。

国民年金保険料の納付が猶予されるとともに、猶予期間については、年金を受給できるかどうかの判定基準になる受給資格期間に算入されます。なお、免除制度の場合は、免除期間中の分も一部年金が受け取れますが、納付猶予制度の場合は年金額には反映されません。

また、納付猶予制度を利用していたあいだの国民年金保険料を期限内に追納することで、年金受給額を満額にすることが可能です。制度を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の国民年金保険料額に経過期間に応じた金額が加算されます。

学生納付特例制度を利用していた場合

学生納付特例制度は、学生である本人の年間所得が一定額以下(118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)の学生が利用でき、在学中は国民年金保険料の納付が猶予されます。猶予期間については、年金を受給できるかどうかの判定基準になる、受給資格期間に算入されます(※9)。ただし、一般の納付猶予制度と同様、猶予期間中は年金額に反映されません。

また、学生納付特例制度を利用していた国民年金保険料を期限内に追納することで、年金受給額を満額にすることが可能です。制度を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の国民年金保険料額に経過期間に応じた金額が加算されます。

過去2年以内に未納の国民年金保険料がある場合

特に届出はせずに、国民年金保険料を納付していなかったという方もいるでしょう。このような未納の場合でも、納付期限から2年以内であれば、国民年金保険料を納めることができます(※10)

例えば、会社を退職し、次の仕事が見つかるまでの半年間は国民年金を納付していなかったという方が、就職してから過去の国民年金を納める場合などが該当します。未納の期間があると、将来の受給額が減ってしまいますので、未納期間がないように納めていくことをおすすめします。

  • 国民年金保険料を追納できるケースを理解しておきましょう

    国民年金保険料を追納できるケースを理解しておきましょう

国民年金保険料の追納の手続き方法

ここでは、国民年金保険料の追納を行う場合の手続き方法をご紹介します。将来受け取れる受給額に関わりますので、未納分がある場合は、しっかりとチェックしておきましょう。

追納の申請先はどこ?

追納を行いたいと思ったら、各都道府県の年金事務所に申請を行います。申請が承認されたら、追納用の納付書で納付を行います。

申請書類と提出する書類は?

国民年金保険料の追納の申請に必要な書類は、下記のとおりです。

  • 国民年金保険料追納申込書
  • マイナンバーカード

提出に必要な「国民年金保険料追納申込書」は、日本年金機構のウェブサイトよりダウンロードすることができます。

参照 :
日本年金機構「国民年金保険料追納申込書

直接窓口へ行く場合は、マイナンバーカード(個人番号カード)が必要です。もしマイナンバーカードがない場合は、マイナンバーが確認できる通知カードや住民票の写しと、運転免許証やパスポート、在留カードといった写真つき身分証明書を持っていきましょう。郵送の場合は、マイナンバーカードの表裏のコピーか、通知カードと身分証明書のコピーを添付します。

国民年金保険料はいつ追納する?

国民年金保険料を追納するタイミングは、納付するお金ができたら、なるべく早く行うことをおすすめします。国民年金保険料の追納ができるのは、免除制度や納付猶予制度、学生納付特例を受けていた過去10年分と、過去2年間で未納になっている分だけです。うっかりして、期間が過ぎてしまわないようにしましょう。

なお、追納した国民年金保険料は、全額が社会保険料控除の対象となります。そのため、収入が多い年に追納すると、より多くの節税のメリットを得やすいという点は意識しておくことをおすすめします。

例えば、年の途中で就職した場合、就職した年よりも、12カ月分の給与が丸々得られる翌年のほうが年収は高くなることが多いでしょう。収入が前年より高くなってしまう場合、追納する期限に余裕があれば、あえて翌年まで待って追納するという方法もあります。

  • 国民年金保険料の追納期間を意識しましょう

    国民年金保険料の追納期間を意識しましょう

国民年金保険料の追納に関する注意点

国民年金保険料の納付に関する最も注意すべきポイントは、経済状態に余裕ができたら、早めに年金事務所に相談にいくことです。ほかにも、国民年金保険料の納付に関する注意点には、下記のようなものがあります。

国民年金保険料の追納は、一括納付が難しければ分割する

国民年金保険料の追納は、古い期間分から順番に納付していくことになります。

免除制度や納付猶予制度を受けた期間、すべてを一度に追納するのが難しい場合は、一括ではなく分割にして納付していきましょう。

老齢基礎年金を受け取れる方は追納できない

国民年金保険料の免除制度や納付猶予制度を受けたのが10年以内でも、すでに年金をもらっている方や、年金の請求権がある65歳以上の方については、追納をすることはできません。

年金を請求できる一定の年齢に到達する前に、追納を済ませておきましょう。

  • 経済状態に余裕ができたら、早めに年金事務所に相談

    経済状態に余裕ができたら、早めに年金事務所に相談しましょう

国民年金保険料が追納できる期間や納付状況はどう確認する?

国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度を受けていた期間や、未納期間があるかどうかのほか、追納可能な月数がどのくらいなのかは、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で確認できます。

ねんきんネットとは、自分の年金の納付状況や、将来受け取れる受給額などをチェックできるウェブサイトです。

ねんきんネットの登録方法

ねんきんネットを利用するには、まず、登録を行う必要があります。毎年誕生月に日本年金機構から郵送される「ねんきん定期便」に記載されているアクセスキー(有効期限3カ月)がある方は、インターネット上で登録が可能です。

「ねんきん定期便」が手元にない、アクセスキーの有効期限が切れているといった場合は、インターネット上から登録作業を行った後、ユーザーIDが郵送されてくるのを待ちます。

参照 :
日本年金機構「「ねんきんネット」を利用するには?

追納可能な月数等の調べ方

追納が可能な月数を調べるには、ねんきんネットにログイン後、「年金記録を確認する」ボタンをクリックし、「国民年金保険料の納付・後払い(追納)が可能な月数と金額を確認する」をクリックすると、納付状況や追納可能な月数等を確認できます(※11)

追納可能な国民年金保険料は、納付して受給額を減らさないことが重要

免除制度や納付猶予制度、学生納付特例制度を利用した場合、10年間に限り、国民年金保険料を追納することが可能です。国民年金保険料の未納期間があると受給額が減ってしまいます。追納すれば、未納期間がある場合よりも将来の年金受取額を増やすことができますし、社会保険料控除で節税にもなりますから、資金に余裕ができたら早めに追納するようにしましょう。

また、未納になっていた場合も、納付期限から2年以内なら国民年金保険料を納めることができます。国民年金保険料は、将来の大切なお金になりますので、納付できなくても、放置せずに対応することをおすすめします。

こちらも注目 : 「国民年金の未納には注意! 納付できない場合の対処法も紹介

参照 :
(※1)日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度
(※2)日本年金機構「国民年金保険料の追納制度
(※3)日本年金機構「老齢年金ガイド
(※4)政府広報オンライン「暮らしに役立つ情報
(※5)国税庁「給与所得控除
(※6)木元税務会計事務所「Q&A : 国民年金の負担は贈与ですか
(※7)厚生労働省「国民年金の保険料の納付義務
(※8)日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※9)日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度
(※10)日本年金機構「Q&A : 保険料を納めなかった期間がありますが、今から納めることができますか。
(※11)日本年金機構「追納等可能月数と金額の確認