企業や組織の健全な運営・経営のために内部監査が実施されるケースも少なくありません。とはいえ、具体的に誰がどういった形で進めるのかわからず、不安を抱いてしまいがちです。今回は実施する理由や実際の流れなどをくわしくご紹介します。

  • 内部監査とは?

    内部監査についての正しい知識を持ちましょう

内部監査とは

内部監査という言葉は耳にしたことがあっても、実際にどういったものなのかわからないという方もいらっしゃるようです。会社員として組織の中で働いていても、自分には関係のないことと考えている方も多いでしょう。しかし、現在のありとあらゆる組織においてその重要性はますます高まっています。

まずは内部監査とは何なのかについてご紹介します。

内部監査の目的

いくつかの目的がありますが、もっとも大きいのが組織が健全に機能しているのかをチェックするというものです。

法令や社内規定などのルールが適切に守られているのかを改めて確認するといった目的がメインとなります。大枠の業務内容はもちろんのこと、規定通りに休憩を取れているのかや、書類の記載方法や保管・破棄の方法といった細かい点までしっかりとチェックすることになります。

また、組織が大きくなるとどうしても仕組みが複雑になってしまいます。その結果として全体の目標を周知することができなかったり、非効率な業務を行ったりしてしまうというケースも少なくありません。それにすぐに気付くことができればいいのですが、日々の業務に集中しているとどうしても組織全体のことが見えなくなってしまいます。結果として、自分のやっている仕事が企業としての目標達成に貢献できていなかったり、非効率であったとしてもそれに気付くことができなかったりするのです。

調査やヒヤリングを行うことによって業務全体の経営や財務などについて適切に把握することができます。そして、組織としての問題点をあぶり出し、解決に導けます。その他にも組織内での不正の防止といった効果も期待できます。

内部監査と外部監査の違い

監査は2つに分けることができます。ひとつは今回ご紹介している内部監査で、もうひとつが外部監査です。内部監査と外部監査の最大の違いは、誰が監査を担当するのかという点です。内部監査はその名の通り、組織内の担当者が監査を行います。それに対して外部監査は社外の利害関係のない第三者である専門家によって行われます。

外部監査は取引先などの利害関係者からの信用を得るために行われるもので、一定以上の規模(上場企業、資本金額が5億円以上または負債金額が200億円以上の企業など)では外部組織による会計監査が義務となっています。

それぞれの監査にいくつかの側面がありますが、内部監査は組織内の問題などを解決するためのもので、外部監査は社外からの信頼を得ることを目的としていると考えるとわかりやすいでしょう。

上場には内部監査が必須?

一般的に監査はあくまで企業が任意で行うものなので、法律などで強制されるものではありません。しかし、上場を目指すのであれば監査は必須となります。

まず、上場審査に必要な書類を整備する時点で社内の状況を正確に把握する必要があります。そこで、内部監査が重要となるのです。また2008年には内部統制報告制度が施行されたことによって、上場企業は内部統制を構築して評価しなければならなくなりました。これにより上場を目指すのであれば内部監査を行う部門が欠かせなくなっているのです。

  • 内部監査とは?

    内部監査にはいくつかの目的があります

内部監査担当者の選び方

先ほどもご紹介した通り、内部監査は組織内で行われる監査です。そのため、担当者も社内の人間となります。そこで気になるのが、どのように担当者を選ぶのかという点です。

内部監査の担当者は専任?

組織の規模によっては一時的にしか監査を行わないというケースもあります。しかし、一般的に監査は継続して行う必要があるので、専任の部門が設置されます。つまり、担当者は専任だと考えられるでしょう。 規模の大きな組織になると最初から内部監査部門として採用活動が行われるケースもあります。

担当者はどのように選ぶ?

内部監査を行うために必須の資格があるわけではありません。そのため、単なる人事のひとつとして担当者が選任されるというケースもあります。しかし、内部監査を行うためには自社の業務に関する十分な知識や経験が必要となります。また、責任も大きいことから、新たに内部監査部門を立ち上げる場合はある程度の経験を持った社員が選ばれることが多いようです。

また、先ほど内部監査を行う上で必須の資格はないと説明しましたが、評価に繋がる資格はいくつかあります。「公認内部監査人(CIA)」や「内部監査士」などが該当します。 また同じ内部監査でも「会計監査人」は少々特殊で、株主総会によって選任、解任されることになっています。

内部監査部門の組織構成は?

内部監査部門の組織構成は企業によって異なりますが、一般的には責任者と実際に監査を行う社員によって構成されています。規模の大きな組織の場合、それぞれの部門別に分けられ、全体を統括して監査を行う担当者が置かれるというケースがあります。 組織の規模や目的に合わせて組織構成を行うことが重要です。

  • 内部監査の担当者はどう選ばれる?

    担当者選びも内部監査の重要なポイントのひとつです

内部監査の流れ

内部監査といきなり言われてもどのように行われるのかわからないという方も多いでしょう。内部監査にはいくつかのステップがあり、それぞれをしっかりとこなしていく必要があります。ここからは具体的な内部監査の流れをご紹介します。

事前準備・予備調査

まずは事前準備と予備調査を行います。本調査を行う前に通知し、必要なデータなどの準備を指示するというプロセスになります。

いきなり本調査になると必要な書類が揃っておらず、余計な時間がかかってしまいます。場合によっては監査に必要なものが揃わずに十分な効果を得ることができない可能性もあるので、必ず事前準備はしっかりと行う必要があります。

不正の調査などを目的としている場合は抜き打ちで監査に入るケースもありますが、一般的には事前に通知した上で調査に入ることによってスムーズに内部監査を進めることができます。

監査計画の策定

続いて、計画の策定を行います。これがなければスムーズに進めることができなくなってしまいます。どの部門にどのような目的を持って監査を行うのかを決めて計画を策定します。場合によっては前述の予備調査の前の段階で監査計画を策定することもあります。

ここではさまざまな場面を想定したマニュアルの策定や具体的な手順の検討なども行うことが大切です。 監査の実施に向けた最終調整にあたります。内部監査を意味あるものにするためにはとても重要なポイントといえるでしょう。

監査の実施

準備が整ったら計画に従って実施します。書類やデータなどを集めて監査を行います。監査において確認する内容は部門や業務によっても異なりますが、マニュアルに従って順番に行っていきましょう。

この段階で問題などが発覚した場合はそのまま担当者と話し合いを行って改善策を練るというケースもあります。

評価・報告

決められた項目のチェックなどが終了したらデータなどを確認した上で監査報告書を作成します。計画時点でのチェックポイントを確認しながら総合的な評価を行います。そして、最終的に経営陣や部門に監査報告をするという形が一般的です。

監査によって問題点などが発見されれば、各担当者や経営陣と話し合い、改善策を練ることも大切になります。 同時に、この時点で次の監査の計画や準備などを進めていきます。

  • 内部監査の流れ

    流れがわかれば内部監査をより理解できます

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内部監査というと、難しいものというイメージを抱いている方も多いかもしれません。しかし、今日では内部監査の重要性は増しており、法律で強制されているものではないとはいえ、上場企業をはじめとして一定以上の規模の企業では必須となりつつあります。

自分には関係ないと考えるのではなく、組織に属しているのであればしっかりと知識を身につけておくようにしましょう。