• 『監察医 朝顔』主演の上野樹里 (C)フジテレビ

作曲するという作業はなかなか想像し難いが、どんなところからインスパイアされるのだろうか。

「ドラマのプロデューサーさんからもらうアイデアやキーワードからインスパイアされることが多いですね。例えば、『家売るオンナ』では“タンゴ”という音楽的なキーワードがあったんですけど、『こんな感じでいきたい』みたいなのを必ず持っていらっしゃるので、その目指したい方向にさらに上乗せしていくっていうパターンが1つです。もう1つあって、いっぱい曲を作らなきゃいけないので、台本を見て想像して、こんな演出があるだろうからこういう音楽にしようとか、ハッタリを狙って面白い曲を作るかみたいな、そういうところからモチベーションを上げて作っているような感じですね」

だが、プロデューサーからの依頼は、“雰囲気”や“~っぽい”など、漠然としたものが多いため、そのすり合わせにも苦労するという。

「そこがやっぱり難しいポイントですね。例えば“前向きで明るい曲”って言われても、どういう前向きなのかは漠然としてるし、人によっても作品によっても捉え方は違ってくるので、そこはいつもかなり悩むポイントの1つです。依頼が具体的であればあるほどイメージは共有しやすいですからね」

一方で、「私が関わらせていただいているプロデューサーさんたちは、イメージがしっかりしている方が多いんです。『こういう楽器がいい』とか『こういうジャンルがいい』という考えがハッキリあって、それがあるとさらに膨らませる方に力が入れられるので、作品を高めやすくなります」と、充実した環境で仕事に臨めているようだ。

■警察ドラマ…弦楽器の響きでサイレンに

得田氏が手がけたサウンドトラックの中で印象的だった楽曲の1つが、香里奈主演『嫌われる勇気』(17年、フジ)のメインテーマだ。弦楽器の響きが徐々にエスカレートしていき、やがてそれが“サイレン”のように聴こえてくるメロディーが衝撃的だった。

「あれはその通り、サイレンをモチーフにしたんですよ。警察ものだから、弦楽器をどんどん擦り上げていくことでサイレンみたいなことができるんじゃないかと思ってやってみました。そんなふうに裏で刷り込みをするみたいな感じで、本物のサイレンを入れてみたり、楽器をサイレンのように演奏したりと、いろいろ試しながらやりましたね」

プロデューサーからの依頼には楽器の指定もあるそうで、「『嫌われる勇気』は、インドの民族楽器を使いたいという話があって、あの曲にはシタール(※インド発祥の弦楽器)がたくさん入ってるんです。依頼のあった楽器をメインに使うことを前提にして、その楽器の特徴が出るようなフレーズを考えていくという感じでした。やっぱり楽器にはそれぞれやりやすい弾き方とか、フレーズっていうのがあるので、そこからドラマのイメージに合うようなメロディーを探していく感じですね」。

楽器の音色を基点にして、ドラマのイメージへ近づけていくという、丁寧に音を探していく作曲作業だからこそ、耳に残るインパクトがあり、メロディーも映える楽曲ができ上がるのだろう。