あす11月2日にスタートするフジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』(毎週月曜21:00~)。その繊細で丁寧な描写を支えるのが、作曲家の得田真裕氏が手がけるサウンドトラックだ。
7月期に放送された『MIU404』や、その系譜となる『アンナチュラル』(いずれもTBS)、タンゴ調のサウンドが印象的だった『家売るオンナ』(日本テレビ)、フジテレビ作品では『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『グッド・ドクター』など、アップテンポなナンバーからバラードまで、どんな楽曲でも視聴者の耳に残るキャッチーな名サントラを多く手がけている。
そんな得田氏に、ドラマ音楽制作の知られざる裏側を聞いた――。
■作曲家になったきっかけは「間違えて…」
今や多くのドラマ作品を彩るサウンドトラック界のヒットメーカーの得田氏だが、作曲家を目指したきっかけは、意外な出来事だった。
「最初は大学に入って音楽の先生になろうと思ったんですけど、間違えて、教員免許がとれないコースに入ってしまって(笑)。それで違う道をと考えて、音楽を作るのはどうだろうかと本格的に目指すことになりました。中学くらいからバンドをやっていて、作曲もしていたので、楽しそうだしやりがいもあるしなという感じでチャレンジしたのがきっかけですね」
その大学生活から本格的にクラシックやオーケストラを学び、今ではそれが仕事の助けに。影響を受けた音楽を聞いてみると、「映像音楽がいいなと思ったきっかけは『ドラゴンクエスト』とか『マリオ』とかのゲーム音楽というのがまず1つあります。あとはトーマス・ニューマン(『ショーシャンクの空に』など)とか、アレクサンドル・デスプラ(『真夜中のピアニスト』など)、ハンス・ジマー(『ライオン・キング』など)とかの映画作品はやっぱりすごいなと思って、影響を受けてますね」とのことだ。
■メロディーが邪魔になることを恐れない
ドラマ音楽で一番に心がけていることを尋ねると、答えは実にシンプルで、“メロディー”だという。
「サウンドトラックは映像に合わせる音楽なので、メロディーが際立ちすぎると邪魔になると言われることもあるんですけど、それを恐れないで、なるべくメロディーを作品とともに覚えてもらうことを心がけています。『スター・ウォーズ』とか『ジュラシック・パーク』とか『E.T.』とかもそうですけど、映像とともに音楽も頭に浮かんでくると思うんです。そのことを流行(はや)り廃り関係なくやっていきたいなと思っています」
だからこそ、得田氏が作るサウンドトラックはキャッチーで耳に残る楽曲ばかり。その作品を象徴するメインのテーマ曲は、「『メインテーマ作るぞ!』という気持ちで作っていかないと、なかなかその格調にはならないんですよね。だからそんな意気込みで最初に作ります」と明かした。
では、ドラマ制作の過程でどの段階から準備を進めるのか。
「そのときにでき上がっている第1話や第2話の脚本のシーンを見て作ったりもしますし、キャストの写真だったり、イメージを膨らませて、そのキャラクターに合ったそれっぽい曲を作ろうということもあります。『この人が動いてるときにかける曲はどういうのだろうか…』とか、想像しながら作ります」
毎クール途切れなくスタッフロールの「音楽」に得田氏の名前を見かけるため、大変な作業ではないかと心配すると、「大変は……結構大変ですね」と笑顔で吐露した。