高収入のボーダーラインといわれる年収600万円の人は、どのような暮らしをしているのでしょうか?

国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年分)」(※1)によると、年収600万円以上ある人は全体の20.7%。5人に1人の割合と考えると、多数派とはいえないものの、業種によっては手が届く可能性のある金額といえるでしょう。

本記事では、年収600万円の人の手取り額や税金の負担額を説明します。また、生活レベルのイメージや平均年収が600万円ある業種、ふるさと納税の控除上限額もご紹介します。

  • 年収600万円は裕福なのでしょうか? 手取り額と暮らしぶりを紹介します

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年収600万円は平均よりも高い方? それとも低い?

国税庁「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、給与所得者1人当たりの平均給与は433万円(男性532万円・女性293万円)となっています。年収600万円は平均年収より167万円多く、独身で一人暮らしであれば、比較的ゆとりのある生活ができるでしょう。

しかし、子供がいる家庭の場合は、住宅ローンや子供の養育費などの支払いで、年収600万円ではギリギリという声もあります。そう考えると、年収600万円は平均年収よりも高いですが、生活にゆとりが持てるかでいうと、家族構成などによって大きく差がありそうです。

年収600万円台の割合は?

国税庁「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、年収600万円超700万円以下の人は、全体の6.5%となっています。年収300万超400万円以下の年収の人がもっとも多く、全体の17.4%です。

年収が600万円以下の人は79.9%で、全体の約8割の人は600万円台に及びません。この統計から、いかに年収600万円を稼ぐのが難しいことかがわかります。

年収600万円台から上にいくほど難しい

年収600万円超の人の合計は全体の20.1%ですが、700万円超800万円以下は4.4%、800万円超900万円以下は2.8%、900万円超1,000万円以下は1.8%と、年収が上がるほど給与所得者の割合はどんどん減っていきます。

年収1,000万円超1,500万円以下は幅が大きい分、3.4%と少し増加しますが、年収1,500万超は全体の1.2%しかいません。年収が上がるほど給与所得者の割合が小さくなることから、年収を上げるハードルの高さがうかがえます。

30代、40代など、世代別の平均年収は?

国税庁「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、世代別の平均年収は、20代前半は260万円、20代後半で362万円、30代前半で400万円、30代後半で437万円、40代前半で470万円、40代後半で498万円です。年齢が上がるごとに金額が上がりますが、50代後半の518万円をピークに、それ以降はだんだんと下がっていきます。

世代別の平均年収で見ると、年収600万円以上稼ぐには、働き始めの20代よりも、経験値を積んだ年齢の高い人の方が可能性は高いといえるでしょう。

男性、女性別の年収600万円台の割合

男女別でも見てみましょう。国税庁「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、男性で年収600万円超700万円以下の人は9.2%、女性では2.6%です。また男性で年収600万円超の人の合計は全体の29.7%、一方女性は6.4%です。

さらに前述の世代別の平均年収とも組み合わせて考えると、男性は40代後半で621万円に達し、50代までは600万円台をキープしてその後下降しますが、女性はどの年代でも年収600万円を超えることはないという結果になっています。年収600万円を稼ぐ人は男女ともに少数派ですが、女性の方では特にマイノリティであるということが統計からわかります。

  • 年収600万円超700万円以下の人は全体の6.5%

    年収600万円超700万円以下の人は全体の6.5%

年収600万円の手取り額と税金事情

一般的な会社員の場合は、税金や社会保険料など、さまざまな金額が控除されます。

例えば、住民税の税率は年収にかかわらず一律10%ですが、所得税は累進課税のため、所得が多くなると税率も高くなっていきます。年収600万円の人の手取り額や税金はいくらなのか、見ていきましょう。

年収600万円の手取り額は?

一般的な会社員で年収600万円の場合、控除額を引いた手取り額は約457万円になります。控除される内訳の想定は、所得税が約20万3,000円、住民税が約30万3,800円、社会保険の健康保険が約34万8,900円、厚生年金保険が約54万9,000円、雇用保険が約1万8,000円です。

賞与の額は会社にもよりますが、ここでは年間賞与を手取り約70万円で計算すると、月に約32万2,000円。扶養家族がいる場合は、配偶者控除や扶養控除が適用されますので、月の手取り額はやや上がります。

年収600万円だと所得税の課税額が抑えられる?

日本の所得税は累進課税制度をとっているため、所得額が上がるほど段階的に税率は高くなります。所得税の税率は、5~45%の7段階に区分されています。 例えば、課税所得のうち1,000円超194万9,000円以下の部分の税率は5%、195万円超329万9,000円以下の部分の税率は10%、330万円超694万9,000円以下の部分の税率は20%です。

なお、課税所得は年収の額面ではなく、所得控除などを計算した上で求められる金額です。

所得税額は、下記の「所得税の速算表」を使っても計算することが可能です。控除額とは、所得税を簡単に算出するために使用するもので、「課税所得×税率-控除額」で所得税額を算出できます。

■所得税の速算表

課税される所得額(円) 税率(% ) 控除額(円)
1,000円超194万9,000円以下 5% 0円
195万円超329万9,000円以下 10% 9万7,500円
330万円超694万9,000円以下 20% 42万7,500円
695万円超899万9,000円以下 23% 63万6,000円
900万円超1,799万9,000円以下 33% 153万6,000円
1,800万円超3,999万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

参考:国税庁「給与所得者と税」(※2)

収入が上がるほど、段階的に税率は上がっていきますので、年収600万円は高収入の中でも税金の負担をまだ抑えられている方だといえるでしょう。

あわせて読みたい : 所得税率が上がる「年収」の目安は?

  • 年収600万円は高収入の中でも税負担を抑えられているといえます

    年収600万円は高収入の中でも税負担を抑えられているといえます

年収600万円の貯金、貯蓄事情と生活レベルは?

年収600万円の人は、どのような暮らしぶりをしているのでしょうか。毎月の貯蓄額や生活費などのほか、独身で一人暮らしの場合と家庭がある場合での違いなどをご紹介します。

貯蓄は毎月どのくらいしている?

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)(2019年)」(※3)をもとに、年収600万円台の方における毎月の貯蓄額を割り出してみると、もっとも多いのは毎月約5万~7万円を貯蓄する人で22.6%、次いで約2万~4万円で18.4%でした。一方で、貯蓄しなかった人は23.4%で、全額使いきっている人もいるようです。

一人暮らしと子供がいる家庭との、生活レベルの違いは? 余裕はある?

独身の場合、一人暮らしか実家で暮らしているかによって、家賃の違いはあるものの、一人暮らしでも年収600万円あれば、比較的余裕のある生活が可能です。

年収600万円の場合での手取り額を約32万2,000円と想定して、1カ月の生活費のモデルケースを見てみましょう。

■独身で一人暮らしの生活費の内訳例

  • 家賃 : 8万円
  • 食費 : 4万円
  • 水道光熱費 : 1万5,000円
  • 通信費 : 3万7,000円
  • 交際費 : 3万円
  • 日用品代 : 1万5,000円
  • 保険料 : 1万円
  • 貯金 : 7万円
  • その他 : 2万5,000円

参考:e-Stat「1世帯当たり1カ月間の収入と支出」(※4)

1カ月の家賃の目安は、収入の3分の1から4分の1といわれているため、手取り額が約32万2,000円と考えると、家賃はおよそ8万~10万円がベストでしょう。8万~10万円を家賃に使えるとなると、地域や間取りなどにもよりますが、利便性の高いエリアや築浅物件も選べそうです。

または、家賃を少し抑えた分を貯金しながら、趣味や交際費にも使えるでしょう。貯蓄をしていない場合は、家計を見直すことで、使いすぎを防ぐことをおすすめします。

続いては、子供がいる世帯の場合の、1カ月のモデルケースを見ていきましょう。扶養する家族がいる場合、扶養控除や配偶者控除があり、手取り額はやや多くなります。ここでは、生活レベルの比較をするため、独身で一人暮らしの場合と同じく手取り額を約32万2,000円として内訳を考えます。

■3人家族の生活費の内訳例(子供1歳で想定)

  • 住宅ローン : 10万円
  • 食費 : 5万4,000円
  • 水道光熱費 : 2万1,000円
  • 通信費 : 3万4,000円
  • 交際費 : 3万円
  • 日用品代 : 1万円
  • 教育費 : 1万円
  • 保険料 : 1万2,000円
  • 貯金 : 4万円
  • その他 : 1万1,000円

平均年収が433万円ですから、年収600万円あれば、家族がいても平均以上の生活ができると感じられるかもしれませんが、子供がいる場合には追加で養育費が発生します。

夫婦二人だけで年収600万円あれば生活に困らないかもしれませんが、子供の人数によっては生活費に余裕がなくなる可能性は十分にあります。いざというときのためにも、子供が幼い頃から貯蓄や節約に励みたいところです。

年収600万円を稼ぐには?

年収600万円稼ぐ人は、ある程度経験を積んだ40~50代が多い傾向があります。どのような業種で、どれくらいの企業規模の会社に多いのか見ていきましょう。

平均年収が600万円ある業種は?

国税庁「民間給与実態統計調査」(令和2年分)によると、平均年収が一番高い業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」の715万円です。2位は「金融業・保険業」の630万円、3位は「情報通信業」の611万円でした。

平均年収が上記の金額だとしても、入社してすぐにこの平均額が受け取れる人は、極めてまれでしょう。あくまで年収上限の幅が広い業種の参考として見ておくことをおすすめします。

資本金10億円以上の企業でも年収600万円は少ない?

国税庁「民間給与実態統計調査」(令和2年分)のうち、企業規模別の年収分布を見ると、資本金2,000万円未満の株式会社で年収600万円超700万円以下の人は、全体の4.1%です。もっとも多い年収は、年収300万円超400万円以下、次いで年収200万円超300万円以下となります。

また、資本金10億円以上の大手企業では、年収600万超700万円以下は11.8%と、資本金が低い会社よりも割合は大きく増えます。もっとも多い年収は500万円超600万円以下、次いで400万円超500万円以下の12.1%となります。

株式会社全体の統計からも、いかに600万円の年収を稼ぐことが難しいかがわかります。

  • 年収600万円を稼ぎやすい業種などについて解説しました

    年収600万円を稼ぎやすい業種などについて解説しました

ふるさと納税で税制メリットを!

ふるさと納税とは、故郷など応援したい自治体に寄付ができる制度のことをいいます。

ふるさと納税を申請すると、地域の名産品など返礼品をもらえると同時に、寄付金のうち2,000円を超える部分に所得税の還付や住民税の控除が受けられる仕組みになっています。手続きをする際は、自身の年収における控除の上限額を確認した上で、寄付する自治体を選ぶことが重要です。

総務省が発表している年収及び家族構成別の控除上限額早見表によると、年収600万円の場合、独身または共働きであれば控除上限額は77,000円です。2人以上世帯であれば扶養家族の人数によって上限額が異なりますので、必ず確認するようにしましょう。

  • ふるさと納税で税制メリットを享受しましょう

    ふるさと納税で税制メリットを享受しましょう

まとめ : 年収600万円稼いでいる人は、ごく少数

年収600万円を稼ぐ人の手取り額は月に約32万2,000円です。平均年収よりも高いので、独身で一人暮らしであれば余裕のある生活ができそうですが、家庭を持って子育てをするには、計画的に家計を管理しないと、余裕がなくなる可能性があります。

年収600万円を目指すなら、年を重ねるとともに経験値を上げることや、平均年収が高い業界を狙ってみるのも一つの手ではないでしょうか。