• 武内英樹監督

視聴者にとっては笑えて楽しいコメディ作品だが、制作現場はいたって真剣に撮影に臨んでいるという。「撮影している中でゲラゲラと笑いが起きるときもあるんですけど、基本的にはもう粛々と、与えられたことを、変なシチュエーションでもいかに真面目にやり遂げられるかという感じですね」

また、コメディ作品の名作を多く手がける武内監督だからこそわかる“感覚”も。「逆に現場で笑いが出てるような時ってヤバいんですよ。そういうときは内輪ウケ的な笑いになってるので、編集になったときに『マズい』ってなるんです。むしろみんながフフって笑うくらいのときの方が意外とちょうどいいんだなって思ってますね」

前作でインパクト絶大だった大貫勇輔演じる円城寺が、放水を避けながら華麗にダンスを繰り広げるシーンも、大人たちが大真面目に撮影していたと想像すると、笑いがこみ上げてくる。

「あれはもう美術スタッフとか照明とかも、みんな真剣に彼の動きや水の向きを決めたりしたんですよ。僕は『スレスレを狙え!』って言ったりするし(笑)。それで1回派手に水が当たっちゃって、ドライヤー5台くらい使って乾かしたり……そういうのがいっぱいあって楽しかったですね。なかなかシュールな撮影でしたけど、みんなが真面目にバカバカしいことを取り組んでるっていうのが面白いんですよね」

この円城寺が今回、どんな風に登場するのかも気になるところだが、「想像を超える出方をすると思います。よりアートな感じで出てきますし、かわいい感じでも出てくるし。あんまり明かせないんですけどパワーアップしてますよ」と予告してくれた。

  • 大貫勇輔(左)と深田恭子 (C)フジテレビ

そんな円城寺が披露し、『ルパンの娘』ならではと言えるのが、ゴージャスでおかしいミュージカルシーン。制作過程はどうなっているのだろうか。

「脚本家と一緒に『ここで歌わせよう』とか話し合いながら決めているんですが、最近は音楽家も打ち合わせに入って作っています。まず脚本と同時に歌詞も作って、それを音楽家のFace 2 fAKEさんに投げて曲を作る。それで曲をもらった後、歌詞の字余りとか微調整もします。撮影も仮歌を流して口パクで撮って、最終的にアフレコで音を入れて調整したり…とすごく労力がかかってるんです。大変なんですけど、文化祭みたいな感じで楽しいんですよ」

また、「今回は前回歌ってない人も出てきて、いろんな人が歌ったり踊ったりもするし、新曲も出てきますよ」といい、前作以上にパワーアップした円城寺と、ミュージカルシーンにも注目だ。

■ジェットコースター的要素が加速

今作では、「コロナ禍っていうのを意識して撮ったので、コロナという設定が出てくるわけではないんですけど、リモートワークだとか自粛生活みたいな、ちょっとした時事ネタや風刺もあります」と、世の中の現状に合わせた部分も盛り込まれているという。

見どころを聞くと、警察と泥棒というあり得ない夫婦の新婚生活に加え、様々な要素がパワーアップ。

「『てんとう虫3号』が今度はどんな機能を持って、どんなハプニングが起きていくのかっていうところもあるし、アクションも今回はかなり多くてスケールアップしているので、そこもかなり迫力があると思います。円城寺のミュージカルもあるし…見どころ満載だと思います。話の展開がすごく早くて、ジェットコースター的な要素がシーズン1よりも強いので、その展開に振り落とされないように、一生懸命、必死に見てもらえるとうれしいです」と呼びかけている。

●武内英樹
1966年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒業後、90年にフジテレビジョン入社。『神様、もう少しだけ』『カバチタレ!』『電車男』『のだめカンタービレ』『デート~恋とはどんなものかしら~』『ルパンの娘』などドラマのほか、『テルマエ・ロマエ』『今夜、ロマンス劇場で』『翔んで埼玉』などの映画も監督している。昨年、映画『翔んで埼玉』で第43回日本アカデミー賞・最優秀監督賞を受賞。