10月8日に放送された『ひぐらしのなく頃に』第2話の放送を観て、驚いた人も多かったのではないだろうか。なぜなら、『ひぐらしのなく頃に 業』というタイトルが正式に発表され、そしてオープニングテーマ「I believe what you said」をアニソンシンガー・亜咲花が歌唱すること。そのシングルが早くも10月14日にリリースされることが、一気に発表になったからだ。
彼女にとって初となる"自身が好むホラージャンル"のアニメの主題歌となった本作。そのリリースを『ひぐらし』らしい発表によって驚き冷めやらぬなかで迎える亜咲花。そんな彼女のこだわりや喜びといった想いをお届けする。
●STAY HOME期間から、亜咲花を支え続ける大事な存在とは?
――今年は春先にSTAY HOME期間がありましたが、亜咲花さんはその間どのように過ごされていましたか?
ちょうどその期間に喉のポリープの手術をしたんですけど、手術後しばらく自分が武器にしていた声がカスカスになっていたのもあって、心が折れてしまっていたんです。そんななかリハビリでの通院のときに、ワンちゃんの鳴き声に惹かれて人生で初めてペットショップに入りまして。そのワンちゃんに一目惚れして飼い始め……プーちゃんって名前をつけたんですけど、心の穴をプーちゃんがすっぽり埋めてくれました。
――お仕事を再開されてからも、大きな存在ですか?
相当大きいです! 家に帰ったらワンちゃんがお出迎えしてくれるって、最強に嬉しいじゃないですか!? 忠誠心もすごいし、どんどん愛情も湧いて「この子を最後まで育てなきゃな」という責任感も生まれて……プーちゃんとの幸せな生活を送るために、私は今、頑張っております(笑)。
――その手術後初のリリースとなるシングルは、発表からリリースまでに非常にスピード感がありますね。
そうですね。かなり特殊な公開のされ方だと思うんですけど、こういう新しいやり方もやってみていいのかな? って。ほぼゲリラに近い形で発売になるので、「いいわー、神曲! ポチッ」みたいに、悩まずに衝動買いしてほしいです(笑)。
――今回は表題曲が『ひぐらしのなく頃に 業』のオープニングテーマとなっています。決まったときのお気持ちはいかがでした?
半泣きだった気がする……(笑)。デビュー前から観ていた大好きな作品『ひぐらし』の楽曲を歌うことが出来るなんて! 自分が楽曲を歌うことの喜びと、ひぐらしの新作が出ることの喜びの、アーティストとオタクの心が、交互に引っ込んでは出て引っ込んでは出て、みたいなのが続いていました(笑)。それに、自分が好きなホラーというジャンルに関われたことも嬉しくて。亜咲花の曲でゾクッとするような曲って歌ったことがなかったので、今回歌にホラー要素を入れられたことも、快感でしかないですね。
●『ひぐらし』らしさと「”亜咲花×志倉”曲」らしさの両立
――その表題曲「I believe what you said」を受け取られたとき、どんな印象を持たれましたか?
まず、作詞・作曲された志倉千代丸さんの色を強く感じました。ただ、元々は完成版よりもキーが少し高めでしたが、亜咲花が歌うということで低い方が合うのではないかということで、キーを少し下げてもらいました。
――最初から、曲中のいろいろな部分に『ひぐらし』らしさを感じられていましたか?
はい。イントロも、画面がシャーッて……砂嵐とまではいかないけど、画質が悪いんだろうな、みたいなビジョンがパッと思い浮かんで。でも最初いただいたときの音は、まだHD対応なイメージだったんですよ。それで「もっと画質を悪くしたい!」と思っていたら、編曲された悠木真一さんも同じことを考えていたのか、しゃがれた感じの音が入っていて。ちょっとこもった感じがするイントロのビブラフォンのメロディも、すごく不気味でいいんですよね。
――そのうえで、デジタルの要素やギターも盛り込まれています。
そうなんです。『ひぐらし』はもちろん、今まで私が志倉さんと紡いできた「”亜咲花×志倉”曲」の感じも、要素として踏まえてくださっています。
――まさに、亜咲花さんが歌う意義のある『ひぐらし』曲になった。
はい! 完璧な感じに仕上がりました!
――ビジョンの明確さは、歌声から非常によく感じられました。例えば、サビ前の「あざ笑った」のひと言だけが急に鋭くなりますよね。
あはは(笑)。そこはすごくこだわりました。そこまでは無表情といいますか、感情を全くあらわにしてないような感じで歌っていっているんですけど、この部分では、がなり声を入れて”初めてここで感情が芽生えた”かのように歌いまして。サビ前ならではの引っ掛かりにもなる、音楽が歩み出す起点にしたんです。
――そのメリハリも、まさに『ひぐらし』の作品性にピッタリだと思います。
よかったです! 嬉しい……! あと、作品性というお話だと、志倉さんの歌詞のすごさを改めて感じたところがありまして。
――どの部分ですか?
2番に出てくる「まるで麻酔のように落ちる意識が」というフレーズの、”麻酔”という単語です。最初はあまりピンとこなくて深追いせずにサラッと歌ってしまったんですけど、ポリープの手術で全身麻酔をしたことで「気づかない間に全てが始まっているんだ」という比喩表現だったんだと、よりはっきりとわかったんですよ。
――なるほど。体感を通じて。
はい。本当にここは、天才的な言い回しだなぁって感じて……今だったらたぶん、これまで以上に『ひぐらし』のキャラクターたちに対する警告になるような歌い方をするような気がしています。
――MVもショートバージョンが解禁されていますが、廃墟を舞台にしたとてもダークなものになっていますね。
とにかく廃墟の雰囲気が、ガチなやつで! 映像だけでも伝わるかもしれないんですけど、生の空気を吸うと、本当に長年人がいないんだな……というのが伝わってくるんですよ。特に大浴場が、いちばん怖かったです。
――その廃墟での黒い衣装だけではなく、白い衣装の亜咲花さんも登場しますよね。
そうなんです。二面性を表現するために、廃墟だけで撮る黒亜咲花と、外で自然に囲まれてた白亜咲花のふたりが出てくるんですよ。白亜咲花は、表情が柔らかめでちょっと切ない感じもあったりするんですけど、黒亜咲花のほうはとにかく白亜咲花を鋭く睨みつけていて。
最終的には、あの状態から白亜咲花を追いに行くために外に出るんですけど、気づいたら白亜咲花がいなくなっていて「あれ? 私が見てたものはいったいなんだったんだ……?」という、ちょっと不思議な終わり方をするんです。そういうホラーチックなところも『ひぐらし』をどこか彷彿とさせる、作品に寄り添ったMVになっています