ここまでの4局はすべて先手番が勝利。最終局も流れそのままに久保九段が制すか、それとも永瀬王座が覆すか

永瀬拓矢王座に久保利明九段が挑戦中の将棋のタイトル戦、第68期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)の第5局が10月14日に山梨県「常磐ホテル」で行われています。ここまで両者2勝2敗で迎えた決着局。タイトル初防衛がかかる永瀬王座か、初の王座獲得を目指す久保九段か、勝つのはどちらになるでしょうか。

今期五番勝負のこれまでの4局はすべて先手番が勝利しています。第4局は後手の永瀬王座が優勢な時間の長い将棋からの逆転負けだったため、先手なら有利になれるというような単純な話ではないものの、やはり先手番を取りたいところでしょう。注目を集めた振り駒は、と金が3枚。久保九段が先手となりました。

久保九段は初手に▲5六歩と突いて中飛車を明示。自身の得意戦法に命運を託しました。先手中飛車相手には持久戦の作戦を選ぶことが多い永瀬王座ですが、本局は△4二銀と上がる急戦策を採用します。

それに対し、久保九段は▲7五歩と突いて5筋に続いて2つ目の位を確保。玉の囲いを後回しにして攻めの形を作る積極的な一手です。この手は新手で、13手目にして早くも前例のない戦いになりました。

永瀬王座も積極性を見せます。17分の考慮で中飛車の5五歩相手に△5四歩とつっかけていきました。久保九段も強く▲5四同歩と応じます。両者一歩も引かない強気の応酬です。

歩をあえて伸ばさせることで角の利きを通した永瀬王座は、角交換から角を打って馬を作ることに成功します。そして、先手の5四歩を消すために△5三歩と打っていきました。

久保九段としては、5四の位は馬を作らせる代償に得た重要なポイントです。やすやすと失うわけにはいきません。ここで久保九段は長考に沈みました。そして52分の考慮の末、▲7四歩と突き捨てて戦線拡大。早くも駒が複数箇所でぶつかる、のっぴきならない展開となっています。

永瀬王座は馬で飛車を取り、5筋の歩を払いました。久保九段は手持ちの角2枚のうち1枚を盤上に据え、7四の歩と6五の桂との協力で、永瀬王座の飛車のコビンに狙いを定めます。これまでの展開を見る限りでは、久保九段の早めに▲7五歩と突く新手が生きていると言えそうです。

持ち時間5時間の本局の決着は、本日の夜となる見込みです。タイトルを手中に収めるのは果たしてどちらになるでしょうか。午後からの戦いに注目です。

初手を着手する久保九段(右)と、2手目を指す永瀬王座(提供:日本将棋連盟)
初手を着手する久保九段(右)と、2手目を指す永瀬王座(提供:日本将棋連盟)