バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座に君臨する井上尚弥が日本時間の11月1日にアメリカのネバダ州ラスベガスでWBA2位、WBC5位、IBF4位、WBO1位のジェイソン・マロニーを相手に防衛戦に臨む(WOWOW 22:30~ 生中継)。井上にとっては、多くのメディアから2019年の年間最高試合に推されたノニト・ドネアとの激闘から1年ぶりの試合。今回、井上にインタビューし、試合への意気込みを聞いた。

「無観客試合のイメージはできてきた」

井上尚弥

もともと井上は4月25日にラスベガスでWBO王者のジョンリエル・カシメロと3団体の王座統一戦を行う予定だったが、コロナ禍のため計画が変更された。相手は主要4団体すべてで上位にランクされるマロニーに変わり、試合は無観客で行われる。2万人の大観衆の前で戦ったドネア戦とは状況が激変する。

以前は「その点だけが心配」と話していた井上だが、「だんだんとイメージが湧いてきました。いろいろと(無観客試合の)動画もアップされていますし、そういうのを見て自分のなかでイメージはできています」と不安は払拭されている様子だ。

もちろんトレーニングも順調に進んでいる。ただ、いつもは海外からスパーリング・パートナーを招聘しているが、コロナ禍中の今回はそういうわけにはいかなかった。「調整はいつもどおりですが、海外やほかのジムからスパーリング・パートナーを呼べなかったりしたので基本的には大橋ジムの選手とやるようにしています」と井上は説明する。相手を想定して強化した点についても尋ねたが、「それはちょっと言えませんね」と笑ってはぐらかされた。

井上はアメリカでの試合はスーパー・フライ級王者時代の3年前に経験(カリフォルニア州カーソン)しているが、ボクシングの聖地ともいわれるラスベガスは初登場となる。無観客ではあるが、試合はテレビを通じてアメリカや日本をはじめ世界中に放送される。

ボクサーの総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド」で各メディアから上位5位以内にランクされる井上にとっては、さらなるアピールの場ともなる。「ラスベガスに行くのも楽しみだし、ラスベガスでの調整もすごく楽しみにしています。高いモチベーションで試合に臨めると思います。基本的には日本と同じような気持ちでやろうかなと思っています。気をつけなければいけないのは食事面でしょうか」と話す。

約1年ぶりの試合だが、前戦で負った眼窩底骨折や右目上の裂傷がその間に完治したため、肉体面でも不安のない状態で戦いに臨める。「ドネア戦同様、熱くなるような試合をお見せできるようにやるだけです」と気負った様子はない。それでも、「1ラウンドからエンジンをかける?」との問いには「もう絶対に倒しますよ! 絶対に、はい。それだけの意気込みでラスベガスに行くので。結果は自分も楽しみにしています」とKO宣言が飛び出した。

「どんな戦いにも対応できるので大丈夫」

3階級にわたる14度の世界戦を含め19戦全勝(16KO)の戦績を収めている井上に対し、マロニーも22戦21勝(18KO)1敗と高いKO率を残している。世界ランカー相手のノンタイトル戦だったがマロニーは6月には今回と同じ会場で無観客試合を経験しており、その点ではアドバンテージがあるともいえる。その自信もあってかマロニーは「井上にも弱点がある。そこを突く」とメディアに話している。これに対し井上は「ドネア戦を観て(井上に)隙があると言っているみたいですが、あの試合は(被弾と裂傷の影響で2回以降)右目が見えない状態でしたからね。(視界良好な)今回はその点で前回とは大きな差が出ると思います」とキッパリ。そして離れても接近しても戦えるマロニー攻略法に関しては「どっちの距離で戦っても問題ありません。どんな戦いにも対応できるようにはしているので大丈夫」と加えた。

日本はもちろんのこと世界中が注目する今回の試合。井上は「ここでしっかりと結果を出して次につなげたい気持ちはあるし、この先、ラスベガスでやっていくことを考えると大事な試合になる。結果も含め必ず良い勝ち方で終わらせたいと思います」と揺るぎない自信を口にした。

試合に向け、井上は18日に日本を発つ予定だ。井上尚弥対ジェイソン・マロニーのWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチは11月1日(日)午前10時30分からWOWOWプライムで生中継される。また試合前日の10月31日(土)には、『いよいよ明日! 「井上尚弥」ラスベガス防衛戦直前スペシャル!』と題した、記者会見や前日計量の模様など現地情報をおくる特別番組も放送される。