テレワークの推進など、働き方もコロナ禍で大きく変化しています。しかし、「若手が伸びるために必要な基本のスキルは変わっていません。それは、“仕事の型”をしっかり身につけること」と話すのは、マッキンゼーで新人時代を過ごした人材戦略コンサルタントの大嶋祥誉さん。身につけた仕事の型の中でも実践の機会が多いという「問題解決法」について、紹介してもらいました。

■上からの頼まれごとは、その「意図」を汲みとる!

問題解決に取り組むとき、もっとも基本になる型として身についているのが、「So What?(だから、なに?)」と「Why So?(それは、なぜ?)」です。

マッキンゼーに入社して1年目のとき、上司から「A社が属する業界について調べてくれ」と頼まれ、「わかりました!」と即答。市場規模や売上高、企業シェアなどを調べ、項目ごとにわかりやすく資料にまとめて上司に提出しました。そのとき、上司から言われたのが、「So What?(だから、なに?)」のひと言。

「わかりました!」と勝手に判断して取り組んでしまったため、上司の意図がまったく反映されていない、業界白書のような資料をつくってしまったのです。そこで徹底的に叩き込まれたのが、「So What?」と「Why So?」を、繰り返し自問自答することでした。

■「Why So?」を繰り返し、自分なりの答えを見つけ出す!

仕事を頼まれたとき、勝手な思い込みは禁物です。大切なのは、「なぜその資料が必要なのか?」「どのように使うのか?」などを質問し、目的や意図、用途、期待、さらには1枚のシートにまとめるのかPowerPointで充実した資料に仕上げるのかといった、アウトプットのイメージなども明確にすることです。

例えば、「A社から、将来像の実現に向けたコンサルティングの仕事をゲットするための資料がほしい」ということがわかれば、市場規模だけでなく、A社の経営状態や課題の事実を徹底的に調査してみよう、といったアイデアが浮かんできます。こうして集めた多くの事実から、「何が言えるか?」を導き出そうというのが、「So What?」の視点です。

分析を進めていくと、たとえば「A社が見据えている将来像は業界トップだ」といった、自分なりの仮説を立てることができます。すると、その仮説に基づいて業界動向を検討し、「Why So?」を繰り返すことによって、将来像を実現する精度の高い施策案を導き出し、提案できるのです。

意図が反映され、有益な提案が盛り込まれた資料が作成されて「A社にアプローチしやすくなった」と上司が判断すれば、評価は確実に高まります。

「So What?」と「Why So?」を繰り返し、さまざまな事実と情報から自分なりの仮説を磨きあげ、アクションすべき具体案を主張すること。これが、マッキンゼーで1年目から叩き込まれた問題解決法です。ただ情報を集めるだけでは、ぜんぜんダメなのです。

■クライアントの依頼も、その背景を掘り下げる!

「So What?」と「Why So?」は、組織開発・人材戦略コンサルタントとして、一部上場企業からベンチャーまで、多くの企業をサポートする現在の仕事にも活きています。

たとえば最近では、「若手のモチベーションが低く、すぐに会社を辞めるので、モチベーションを高める研修をしてほしい」という依頼が増えています。でも、その言葉を鵜呑みにして、素直に「はい、かしこまりました」とは、決して言いません。

「この会社がそもそも抱えている課題はなんだろう」という観点に立ち、さまざまなことを質問。何事も決めつけず、相手のことを知りたい、学びたいという気持ちで質問していくと、相手も気づいていなかったことや見落としていたこと、新しいキーワードが浮かび上がってくるのです。その結果、実は若手のモチベーションではなく、ミドル層のマネジメント力に課題があることがわかり、ミドル層のコミュニケーション能力向上に取り組んだこともあります。

人間は、相手の質問で「そうそう、それが言いたかったんだ」とか、「それ、大事だよね」ということが再認識できると、質問してくれた人への信頼感が高まります。すると、仕事や問題解決のパートナーとしての評価も上がり、「この人には、もっと情報を伝えよう」という気持ちになります。

その結果、仕事を依頼された側は、真の問題がつかみやすくなり、価値の高い提案ができるのです。