体を動かすと気分がスッキリするという経験は、誰しもが実感したことがあるのではないでしょうか。仕事や人間関係のストレス発散を兼ねてスポーツをしている方は多いと思います。もしこれからストレス解消のために運動を始めようと考えているならば、自重で行う筋トレはいかがでしょうか?
ここでは、ストレス解消に筋トレがいい理由や効果的な筋トレの方法について紹介します。
筋トレでストレス解消は可能なのか
自重で行う筋トレは道具や特別なウエアがなくても気軽に始められ、好きな時間に自宅でできる運動です。そして、筋トレなどの運動をすることによって分泌される物質「セロトニン」にストレス解消効果があると言われています。
神経伝達物質であるセロトニンは、精神を安定させたり気分を上げたりすることから「幸せホルモン」とも呼ばれます。ストレスを感じるとセロトニンの分泌量が低下してしまいますが、筋トレなどの運動をすればセロトニンが分泌されるため、メンタル面の向上が期待できます。
また、セロトニンは睡眠の導入を促す効果が期待できます。日中に筋トレをしてセロトニンを十分に分泌させれば、夜はスムーズに睡眠に入れる可能性が高まります。睡眠は一日のストレスをリセットさせるための大切な習慣。夜ぐっすり寝ることで、ストレスの軽減が期待できます。
筋トレはどうやって進めればいいのか
それでは、初めて筋トレをする方向けに、目安となる筋トレの頻度と負荷について紹介していきます。
【筋トレの頻度】数回に分けて行い適度な休憩を
全身の筋トレを一気に行うのではなく、体の大きな筋肉を2分割や3分割に分けて行います。具体的には「足の日」「背中の日」「胸の日」と分けてローテーションでトレーニングを行うとよいでしょう。
同じ部位は中2日から3日休息をとってあげることで「超回復」という現象が起こります。超回復とは筋トレ後48時間から72時間の休息を入れることを指します。筋肉は激しい運動にも耐えれるように自力で修復し、運動以前の体より強くなろうとします。その結果、効率的に筋肉を成長させることができます。同じ部位の筋トレを2日連続して行うなどすると、疲労が蓄積して逆効果になってしまうケースもあるので注意しましょう。
また、「セット間休憩(インターバル)」をとることも大切です。セット間の休憩時間についてはさまざまな論文がありますが、ストレス解消のために行うような初歩的なレベルの筋トレでは、1~2分ほどのセット間休憩で十分だと言われています。適度に筋肉を休ませることが大切なのです。
【筋トレの負荷】自分のレベルに合わせて少しずつ負荷をかける
筋トレをしていると、初めから高負荷にチャレンジしたくなったり、一気にレベルアップしたくなったりしてしまう気持ちもわかります。しかし急に無理な回数をこなそうとしても、長続きしないものです。また、トレーニングに慣れていない体に急に負荷をかけてしまうと、腰痛や肉離れを引き起こしてしまうことも。
正しい方法で、自分のレベルに合わせて徐々に負荷をかけていくことが大切です。目安は10回ぎりぎりできる負荷で3セットです。1セット15回以上できてしまったら負荷を増やす目安になります。
ストレス発散におすすめの筋トレ
ストレス解消のために筋トレをするにあたり、「この部位の筋肉がストレスに効く!」といったようなエビデンスを有する報告は今のところないようです。ストレス解消のための運動としてならば、どの部位の筋トレでも同様の効果は得られるでしょう。
そこで、どの部位の筋トレをしようか迷っている方向けに厚生労働省の情報提供サイト、e-ヘルスネットに掲載されている「QOL(クオリティオブライフ)の維持・向上に大切な筋肉」について紹介します。
筋力は加齢によって衰えてしまうため、立ったり歩いたり姿勢を維持したりなど、日常動作の基盤となる筋肉がQOLの維持や向上に大きな影響を与えます。具体的には、大腿前にある大腿四頭筋・お尻の大臀筋・腹筋群・背筋群・大胸筋です。ストレス解消のために筋トレを始めるならば、日常の身体活動を支えるこれらの筋肉を鍛えてみてはいかがでしょうか。
自宅でできるおすすめの筋トレメニュー
大腿四頭筋・大臀筋・腹筋群・背筋群・大胸筋を効率的に鍛える筋トレメニューは以下の通りです。順番はあまり気にせず、気になるものから挑戦してみてください。
■スクワット(大腿四頭筋、大臀筋)
スクワットは特別な道具は不要ですが、フォームがとても大切です。正しいフォームで行うことで大腿四頭筋や大臀筋のほか、ハムストリングスと呼ばれる大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋肉を効果的に鍛えることができます。最初は膝の高さくらいのイスを使って「ボックススクワット」を行うとよいでしょう。
やり方
(1)イスに座り背筋を伸ばした状態で股関節から上の上半身を前に傾けます
(2)その姿勢を作ったら上半身を動かさずに足の力だけで立ち上がりましょう
(3)体を前に傾けた姿勢のままゆっくりと座ります
フォームが安定してきたらイスを使わずにスクワットしてみましょう。モモの裏と床が平行になる(膝の角度が90度程度)ところまでしっかりしゃがみこむことが大切です。10回3セットを目安に行います。毎日ではなく2~3日に1度ほどの頻度がよいでしょう。
■クランチ(腹筋群)
自宅で腹筋を行う場合は、腰痛に負担がかかりにくい「カールアップクランチ」という膝を立てて行う方法がおすすめです。
やり方
(1)おへそを覗き込むようにして体を小さく丸めながら起き上がります
(2)戻るときは背骨の1本1本を下から床に順番につけていくように体を丸めたまま戻る
ずっと小さく体を丸めた状態で起こしたり寝たりを繰り返すことでお腹の収縮をしっかり感じられます。また、通常の腹筋運動にひねりを加えた「クランチツイスト」を行えば、腹斜筋も同時に鍛えることができます。腹筋群は大きな筋肉ではないため毎日行っても大丈夫です。
■ラットプルダウン(背筋群)
背筋群を鍛えるには肩甲骨の動きがとても大切です。まずは広背筋を鍛える代表的なトレーニングの「ラットプルダウン」を行ってみましょう。マシンやダンベルを使わずに自宅で鍛える場合はスポーツタオルを使うと肩甲骨を意識しやすくなります。
やり方
(1)イスに浅めに座り背筋を伸ばして姿勢を整えます
(2)タオルの両端を持って左右に引っ張り、肘を背中方向に引いて肩甲骨を寄せながら鎖骨の前までピンと張ったタオルをおろしましょう
肩甲骨が寄っていることと、脇の下あたりの筋肉の収縮をしっかり感じながら行います。筋力に自信がある人は何かにぶら下がり懸垂にチャレンジ。はるかに負荷が上がり効果的です。こちらは10回3セット目安で行います。毎日ではなく2~3日に1度ほどの頻度がよいでしょう。
■プッシュアップ(大胸筋)
いわゆる腕立て伏せです。昔から一般的に行われているトレーニングですが、ポイントを意識しながら行えば、効果がより実感しやすくなりますよ。
やり方
(1)うつぶせに寝て、手のひらを肩幅より拳2つ分外側に置き、脇をしっかり閉じます
(2)腕を伸ばしてつま先だけをつけて足から首まで一直線になるように姿勢を整えましょう
(3)脇を閉めて肘を曲げながら床すれすれまで体を倒していきます
(4)その後地面を腕で押し上げて元に戻します
これを10回3セット行います。負荷がきつく感じる方は膝をついて行いましょう。肘が開かないように気をつけてください。毎日ではなく、2~3日に1度ほどの頻度がよいでしょう。
まとめ
筋トレとストレスの関係や、ストレス解消におすすめの筋トレメニューについて紹介しました。ストレス解消に運動を考えている方は、ストレスがたまる前に自宅で手軽にできる筋トレを始めてみてはいかがでしょうか。
それと同時にストレスを回避することや、ストレスの元凶から離れることも大切です。日頃からトレーニングを行って適切なホルモンの分泌を促し、心身共に健康的な身体を保ちましょう。
参考 :
(※1) 厚生労働省「QOLの維持・向上に大切な筋肉は?」」