「悉く」という言葉、どう読むかご存知ですか? 読み方に加えて、意味も知らない、という方も少なくないかもしれません。

社会人たるもの、多くの言葉の読み方や意味、使い方を知っておいて損はありません。本記事では、「悉く」の読み方や意味、由来を解説します。また、使い方・例文や類語・英語表現などもご紹介します。ぜひご一読ください。

  • 「悉く」の意味を徹底解説! 類似表現や使い分け、例文まで

    「悉く」の意味を徹底解説! 類似表現や使い分け、例文まで

「悉く」とは

「悉く」は、日常会話でもビジネスシーンでも頻繁に使われる言葉です。まずはその意味や読み方を知っておきましょう。

「悉く」の意味

「悉く」は「問題にしているもの全部・残らず・みんな」という意味の言葉です。基本的には、あまり好ましくない意味合いで使われます。例えば、「すべてを否定された」という意味で「悉く否定された」と使ったり「残らず無くした」という意味で「悉く無くした」と使ったりします。

「悉く」の読み方

「悉く」は「ことごとく」と読みます。ひらがなで書かれることが多いので、漢字での表記を知らなかったという人も多いのではないでしょうか。文章で書く場合は、ひらがなの方が瞬時に理解してもらえるので、上手く使い分けるといいでしょう。

「悉く」の由来

「ことごとく」は、すべてという意味を持つ「事」を重ねてつくった「事事(ことごと)」に接尾語の「く」がついて「ことごとく」になったと言われています。

また、「悉」という漢字は「獣の爪」を表す釆と「心臓」を表す心の組み合わせから成る会意文字。“獣が爪で他の獣の心臓をえぐり取る様子”を表現しているといい、「全部残らずとる」という意味を持つことから、この悉という漢字を使うようになったようです。

「ことごとく」と読む他の漢字との違い

実は「ことごとく」という読みを持つ漢字は他にもあります。普段使うことは少ないかもしれませんが、豆知識として知っておくと面白いかもしれません。

「悉く」と「尽く」の違い

「悉く」と「尽く」はどちらも同じ意味となり、使い方にも特に違いはありません。どちらを使っても問題ないので、好きな方を使いましょう。

その他の「ことごとく」と読む漢字

・「盡く」

「盡」は「尽」の旧字体です。そのため「尽く」と同じく「尽くす」「出し切る」といった意味があります。

・「咸く」

「咸」は、“戉(まさかり)で人を脅して口を閉じさせる様子”を表す文字と言われています。「みんなに口を閉じさせる」ということから「悉く」と同じく「みんな」という意味を持つようになりました。

・「畢く」

「畢」は「畢わる(おわる)」とも読み、「終わる」と同じ意味を持っています。「全部・みんな・ついに」という意味を持ち、「卒業」のことを「畢業(ひつぎょう)」と表現することもあり、すべてが終わることを表すときに使われます。

  • 「悉く」「盡く」「咸く」「畢く」など、さまざまな「ことごとく」という言葉が存在します

    「悉く」「盡く」「咸く」「畢く」など、さまざまな「ことごとく」という言葉が存在します

「悉く」の類語

悉くを別の表現で言い換えるとどのようになるのでしょうか。悉くの類語についてご紹介しましょう。

余すところなく

「悉く」の類語としてあげられるのが「余すところなく」です。

例えば「悉く否定された」を言い換えると「余すところなく否定された」となります。「悉く」が隅から隅まで全部、という意味合いを持つように、「余すところなく否定された」という文章は、反論の余地もないほど隅々まで否定された――という印象を持たせます。

すっかり

「すっかり」は「残らずすっかり」というニュアンスで使うときに「悉く」の代わりとして使える類語です。

「すっかり」には「すっかり見違えるようになった」というような「驚くほど変わった」という意味もありますが、「悉く」にはそのような意味はありません。

「すっかり見違えるようになった」を「悉く見違えるようになった」と置き換えてみるとわかるでしょうか。プラスのイメージに感じる「すっかり」に対し、「悉く」は「なんだかこの人変わってしまったな」と残念がるような印象が滲み出ます。

つぶさに

「つぶさに」は「すべてをもれなく、詳細に」といった意味を持ちます。「事細かに」と言い換えることもできるでしょう。「つぶさに」は細かいところまで、それこそ「重箱の隅をつつくような」という印象があるので、「つぶさに」に言い換えられると思うと、「悉く」の言葉のイメージもねちねちと細かい印象に感じられます。

  • 以上、「悉く」の類義語について紹介しました

    以上、「悉く」の類義語について紹介しました

「悉く」の使い方と例文

実際に「悉く」を使う場面はどんな場面なのか、どのように使うのが適切なのか、例文をご紹介します。

ネガティブな結果に対して

「与えられた仕事を悉く失敗した」
何から何まですべて失敗してしまった、というニュアンスの文章になります。
「プレゼン内容を上司に悉く否定された」
言ったことすべてを全部否定されてしまった、というニュアンスが伝わります。

残らずすべて、という意味

「所持金を悉く使い果たした」
所持金がまったく残っていないことを意味します。すっかり使い切って空っぽになった、というニュアンスを表すのに効果的です。

物事がうまくいったときにも

「今週の運勢は最悪だったが、今のところ悉く外れてほっとしている」
すべて運勢が外れることが良い方向に働くこともあります。良い結果につながるときも「悉く」は活躍します。
「上司から受けた仕事を悉く成功させた」
上司があてがった仕事を、すべて余すところなく成功させたことに対する賞賛の意味が込められている一文です。自分で使うよりも第三者に対して使う方が自然かもしれません。
  • 「悉く」という言葉を使った文章を書く際には、上記の例文を参考にしてみてください

「悉く」の英語表現

ビジネスシーンなどで英語を使う機会がある人もいるでしょう。「悉く」の英語表現としては、「every」「all」「altogether」「entirely」「completely」「wholly」などが挙げられます。前後の文脈にあわせて最適な表現を選択してください。

まとめ

以上、「悉く」の意味から由来、類語や例文などをご紹介しました。

「悉く」は、「すっかり」「つぶさに」といった簡単な言葉に言い換えることもできますが、ビジネスの場や普段の会話で敢えて使ってみると表現の幅が広がることでしょう。適切な使い方を覚えて、「悉く」を会話や文章に活用してみてください。