東京商工リサーチは9月18日、上場企業「新型コロナウイルスによる業績上方修正」調査の結果を発表した。2020年1⽉以降、適時開⽰で「業績予想の修正」や「従来予想と実績との差異」などで9⽉16日までに業績の上方修正を開⽰した上場企業のうち、新型コロナの影響を理由にあげたものを抽出し集計したもの。

  • 業績上方修正 業種別

新型コロナウイルス感染拡大で急激に景気が落ち込むなかで、業績を上方修正した上場企業は9月16日までに延べ186社あった。上方修正額の合計は、売上高が2,732億1,300万円、最終利益が915億1,600万円。上方修正企業は、全上場企業3,789社の4.9%にとどまる。

業績を上方修正した企業の業種別は、製造業が最多の57社(構成比30.6%)で約3割、小売業が39社(同20.9%)で約2割を占めた。売上好調な企業では、主に家庭向けの食品関連や衛生用品関連が多くなっている。

次いで、オンラインやテレワークと関わりの強い情報・通信業の33社(同17.7%)、外出自粛によりインターネットへのアクセス増加の影響を大きく受けたインターネット広告業などを含むサービス業の31社(16.6%)。

理由別では、出張自粛や商談のオンライン化、人件費の削減などによる「経費減少」が77社(構成比41.3%)で最多だった。以下、「巣ごもり消費増加」51社、「内食需要増加」35社と続き、消費行動の変化にマッチした業態で業績を伸ばしたことを裏付けた。

  • 上方修正 理由別

売上高の上方修正額トップはスーパーのライフ

売上高の上方修正額で、最も大きかったのは食品スーパーのライフコーポレーション(東証1部、2021年2月期第2四半期)。「不要不急の外出自粛、テレワークの推進、在宅学習な どの動きが加速し、急激な巣ごもりや内食需要が喚起され、足元の売上規模が大きく拡大した」として、2度の開示で計265億円の上方修正を行った。

  • 売上上方修正額 上位

次いで、「業務スーパー」を手がける神戸物産(東証1部、2020年10月期第2四半期)の241億円。同社も「外出自粛や在宅勤務の広がりなどによる内食需要の高まり」を上方修正の理由にあげている。

以下、巣ごもり消費によりBtoCの取扱が増えた「佐川急便」のSGホールディングス(東証1部、2021年3月期第2四半期)と、日本郵船(東証1部、2021年3月期通期)が200億円で続き、コロナ禍による特需で配送収入が増えた運輸業の2社が並んだ。売上高が従来の業績予想より100億円を超えた上方修正は6社だった。

利益の上方修正額トップは味の素

当期利益では、内食需要で業績が向上した味の素(東証1部、2021年3月期通期)が、従来予想から95億円の上方修正を行い、上方修正額の最大となった。

  • 利益上方修正額 上位

次いで、前出のライフコーポレーションが2度の開示で計76億5,000万円、外出規制を受け営業活動を見直し、経営効率化に成功した大塚ホールディングス(東証1部、2020年12月期通期)の50億円の順。

また、売上高の上方修正額でも3位に入ったSGホールディングスは、顧客の在宅率が高まったことによる配達効率向上を理由にあげ、利益の予想も40億円上方修正した。10億円以上利益の上方修正を開示した企業は、23社にのぼった。