北条鉄道は30日、法華口駅にて「行き違い設備完成記念式典」を行った。法華口駅に行き違い設備を設置するにあたり、全国初の保安システム「票券指令閉そく式」を採用。9月1日から新ダイヤで運行される。当日は沿線住民らも見守る中、式典が開催された。

  • 法華口駅の行き違い設備が完成。新設のホームで上り・下りの列車が行き違う

北条鉄道は粟生駅(兵庫県小野市)と北条町駅(兵庫県加西市)を結ぶ全長13.6kmの第三セクター鉄道。1985(昭和60)年に旧国鉄北条線を引き継いで開業して以来、ボランティア駅長の誕生、「おでん列車」の運行など、地域に根ざした鉄道事業者として奮闘している。

その一方で、北条鉄道は開業以来、粟生~北条町間に行き違い設備がなく、利便性の向上が課題となっていた。そこで同社は、国の「幹線鉄道等活性化事業」などを活用。中間駅の法華口駅に行き違い設備を設置した。

行き違い設備の設置にともない、コスト面から全国初の「票券指令閉そく式」を採用した点が注目に値する。法華口駅構内の安全確認を列車の運行管理者が行い、「通行手形」の役割を果たす票券はタブレットからICカート型に。これにより、無人駅でもローコストで行き違い設備を設置できる。

法華口駅では、行き違い設備を設置するにあたって上りホーム・下りホームが駅構内に新設され、旧ホームは使用中止に。ただし、1915(大正4)年に建てられ、国の登録有形文化財に指定された趣ある駅舎は今後も使用される。

  • 上り列車(粟生行)の運転士が票券を扱う

  • 法華口駅では進行方向右側に列車が入線

  • 新設のホームに設置された新しい駅名標

  • 旧ホームから見た法華口駅の駅構内

  • 北条鉄道代表取締役社長の西村和平氏

  • 構内踏切通路でテープカットが行われた

8月30日に行われた「行き違い設備完成記念式典」では、加西市長ならびに北条鉄道代表取締役社長の西村和平氏が挨拶し、法華口駅の行き違い設備の設置計画が約30年にわたる長年の悲願であったことを強調。「行き違い設備が加西市民以外の方々にも認識され、利用していただけることが大変重要になります」と指摘した。

兵庫県副知事の金澤和夫氏は、「アフターコロナ時代」を見据え、北条鉄道が走る加西市のポテンシャルを評価。「北条鉄道が(朝・夜の時間帯に)30分に1本となることで、ポテンシャルを生かす足の確保につながってほしい」と述べた。式典の途中、粟生行の上り列車と、北条町行の習熟臨時列車の行き違いが行われ、運転士が票券を取り扱う様子も見ることができた。

  • 国の登録有形文化財に指定されている法華口駅の駅舎

  • 法華口駅の旧ホームに残る駅名標

  • 旧ホームに1945(昭和20)年頃の法華口駅の図面が展示されていた

行き違い設備の完成にともない、北条鉄道は9月1日から新ダイヤで運行される。新ダイヤでは平日のみ朝の時間帯に上下各3本、夜の時間帯に上下各2本の列車が新設され、JR加古川線や神戸電鉄粟生線との接続も考慮されるとのことだ。