新型コロナウイルスの感染拡大といういまだかつて経験のない状況下で、“43回目ではなく、新しい日常での1回目”を掲げて放送される日本テレビ系大型特番『24時間テレビ43』(22日18:30~23日20:54)。

毎年夏に行われてきた恒例のイベントが次々に中止・延期を判断する中、今こそチャリティー番組を放送することに意味があるのではないか、と考えで放送を決めたが、そこに至るまでには様々な葛藤があったという。

新しい日常の中で、大きく生まれ変わる今年の『24時間テレビ』は、どんな意義をもって放送されるのか。総合プロデューサーの日本テレビ・吉無田剛氏が決意を語った――。

  • (左から)総合司会の水卜麻美アナ、羽鳥慎一、24時間テレビサポーターの徳光和夫 (C)NTV

    (左から)総合司会の水卜麻美アナ、羽鳥慎一、24時間テレビサポーターの徳光和夫 (C)NTV

■軽々に「やりません」とは言えない

今年の『24時間テレビ』の日程は、東京オリンピックの閉会式から2週間後、そして、同番組が長年支援してきた障がい者たちのスポーツの祭典であるパラリンピックが開幕する直前というタイミングで8月22日~23日に設定し、「オリンピックの空気を受けて、パラリンピックにつなげていくという内容を思い描いて昨年から準備してきました」(吉無田総合P、以下同)。

しかし、新型コロナウイルスの影響で、3月にオリンピック・パラリンピックが来年に延期されることが決定。放送5カ月前にして、「そもそもの根本から見直さなければならなくなりました」と、大きく方針転換を迫られることになった。

4月に入ると緊急事態宣言が発出され、コロナをめぐる状況は日々変化する。自身が担当する『行列のできる法律相談所』は12~13人いたスタジオ出演者が4人まで削減され、『マツコ会議』は収録を取りやめて過去の放送を再編集するなど、制作形態が大きく変わる中で、「4月から5月は、『24時間テレビ』というタイムテーブルで巨大な面積を占める生放送をやる意義はなんだろうと自問自答し、『できるんだろうか』『やっていいんだろうか』と、日々心が揺れ動く時期もありました」と振り返る

その頃、フジテレビは同じ長時間特番『FNS27時間テレビ』の中止を決定。テレビ番組以外でも、夏の高校野球などのスポーツイベント、音楽の夏フェス、各地伝統の祭りが相次いで中止を発表する中、「正直、『24時間テレビ』をやるというのは、なかなかアウェーではありました」と本音を吐露する。

それでも、「『24時間テレビ』が普通のバラエティを24時間やっていく番組だったら、 すぐさま中止が発表されていたと思います。ただ、年に一度のチャリティーを生放送で考えるというのが原点にあって、募金を呼びかけ、福祉、環境保護活動支援、災害復興、そこからさらにいろんなジャンルに細かく還元していく番組なので、仮に『24時間テレビ』を放送しないということになると、そこを頼りにされている社会的に困窮されている方に応えられなくなってしまい、軽々に『やりません』とも言えないんです」と、番組の存在意義を改めて深く考えたと言う。

■テーマは「動く」…納得した上で発表

位置づけとしては、1つのテレビ番組というより、レディー・ガガが発起人となり、医療従事者などへの支援を目的に4月19日に実施された大型音楽イベント『One World: Together at Home』などの取り組みに近い。

そこで、コロナという未知の感染症と向き合いながら安全を担保し、例年とは違う放送形態での『24時間テレビ』を模索する中で、「今回の『動く』というテーマなら、見ている方の賛同を得られ、今年ならではの放送として受け入れてもらえるのではないか。医療従事者の皆さんなどにも募金の行き先を広げることによって43回目にして新しく変わっていくものができるのではないか」と、緊急事態宣言中のゴールデンウィークに方向性が決まった。

この「動く」というテーマに込めたのは「とにかく思考停止に陥らないで、何か人の助けになることがあるんじゃないかというのを日々考える」という思い。

「その意味をきちんと咀嚼し、我々現場の制作の人間が自分たちの中で納得して、一緒に作り上げていくメインパーソナリティーや出演者の皆さんも気持ちを同じくして、胸を張ってきちんと発表できるというタイミングが、制作発表をした7月6日でした」