ヒエラルキーは、組織の階層構造を指す言葉です。しかし、使われている場面によっては、少し意味がわかりづらい場合もあります。また、カーストとも似た概念のようで、使い分けが難しいと感じる方もいるでしょう。
そこで、ヒエラルキーについて基本の意味を再確認するとともに、語源や類語・対義語を紹介します。さらにカーストとの違いやヒエラルキーの使い方、日本語と英語の例文などもまとめました。ヒエラルキーについて意味をしっかり確認して使いこなしたい、という方はぜひ最後までご覧ください。
ヒエラルキーとは
最初に、ヒエラルキーの基本的な意味と語源、類語・対義語について解説します。
ヒエラルキーの意味
ヒエラルキーの基本的な意味は「階層構造」のことです。ピラミッドのように、頂点にはその組織の長がいて、下に行くにつれて地位は下がり人数は増えるという会社のような組織は、まさにヒエラルキー組織と言えます。
ヒエラルキーの語源
語源は古代ギリシャ語の「ヒエラルキア」であり、もともとの意味は「司祭長による支配」でした。宗教的な権力者によるピラミッド型の支配構造だった言葉ですが、現在ではその意味から宗教的な意味はなくなり、階層構造のみ残っています。
ヒエラルキーとカーストとの違い
ヒエラルキーとよく似た言葉として「カースト」が引き合いに出される場合があります。しかし、ヒエラルキーとカーストは、意味に少し違いがあるので、使い分けたい言葉です。ヒエラルキーとカーストの違いについて、くわしく解説します。
カーストは身分制度で差別的な意味合いが強い
カーストは、インドの身分制度の名称であり、ヒエラルキーに比べて差別的な意味合いを持つ言葉です。ヒエラルキーは、上に行くほど権力が強い点ではカーストと似ていますが、あくまでも権力の大小だけであり、差別的な意味合いはありません。
ヒエラルキーは流動的だがカーストは固定
ヒエラルキーは、会社組織の階層構造であり、昇進昇格や退職・転職といったイベントがあるのでその地位は常に流動的です。一方、カースト制度は、生まれながらにして身分が固定される制度であり、一生その身分が変わることはありません。
ヒエラルキーは流動的な階層構造であり、カースト制度は固定的であるという点も両者の大きな違いです。
学校内のヒエラルキーはスクールカーストと呼ばれる
スクールカーストとは、学校の生徒内で構成される権力の階層構造のことです。スクールカーストは、ヒエラルキーとカーストとはまた違った要素によって形成されます。
階層構造をなす基準は、容姿や運動能力といった生徒本人の資質が一般的です。ただ、地方では腕力、都会では親の経済力やコミュ力といった点が大きく影響する場合もあります。スクールカーストの下層に位置する生徒は頂点にいる生徒に虐げられ、いじめの温床にもなると指摘されています。
ヒエラルキーの使い方
ヒエラルキーの一般的な使い方についてもう少しくわしく解説します。
ヒエラルキーの位置は「高い」「低い」と表現
ヒエラルキーの位置関係は「高い」「低い」と表現します。ヒエラルキー型の会社組織では、従来の終身雇用制度を色濃く反映している場合が多いため、一般社員や新入社員は最下層の構成員です。会話の中では「ヒエラルキーの最下層から抜け出したい」「ヒエラルキーの高い地位について権力を持ちたい」という形で使います。
ヒエラルキー構造
ヒエラルキー構造とは、ヒエラルキーとほぼ同じ意味であり、階層構造そのものを指している言葉です。
ヒエラルキー型組織
ヒエラルキー型組織とは、ヒエラルキー構造を持つ組織のことです。通常、ほとんどの団体・組織は階層構造を有しています。
「わが社はヒエラルキー型組織だ」とわざわざ表明する企業はほとんど見かけません。その理由は、会社組織はヒエラルキー型組織となっていることが一般的で、わざわざ言及する必要がないためです。
小さな組織だと、平社員→部長→役員→社長のように、階層構造は少なめになります。大組織の場合は、平社員→係長→課長→部長→本部長→事業部長→役員→社長のように、階層構造は深く、複雑です。
ヒエラルキーコントロール(看護業界)
看護業界では、リスクマネジメントを表現する言葉として、ヒエラルキーコントロールという用語が存在します。医療従事者(医師・看護師)は院内感染や扱う薬剤による被害を受けるリスクがあり、このリスクを軽減する対策が必要です。
リスクを軽減するための対策のうち、効果の高い順からヒエラルキーの上位とみなします。リスク対策の効果が高い施策は「ヒエラルキーの高い施策」、効果が低い施策は「ヒエラルキーの低い施策」です。
ビジュアルヒエラルキー(デザイン業界)
ビジュアルヒエラルキーとはデザイン業界の専門用語で、デザインによる情報の重み付けのことです。
広告やWebページのようにデザイン性の高い制作物は、重要で閲覧者に伝えたい情報を目立たせるためのノウハウを駆使して作られます。ビジュアルヒエラルキーは、情報の配置や見栄えを駆使した工夫により、閲覧者への訴求効果を高めるノウハウのひとつです。
ビジュアルヒエラルキーを明確にするノウハウとしては、重要な部分が目立つよう、フォントの大きさや配色を工夫する、アイコンやイメージ画像といったビジュアルイメージを効果的に使うといったものがあります。ビジュアルヒエラルキーを意識した制作物は、閲覧者にとってわかりやすく、メッセージも理解しやすくなります。
ヒエラルキーの例文
ヒエラルキーを使った例文をいくつか挙げます。どのように使えばいいのか迷ったら、ぜひ参考にしてください。
- 一段高いヒエラルキーを目指したい。
- 企業の規模に関わらず、ヒエラルキー構造はほとんどの企業が有しています。
- ヒエラルキー構造からの脱却を図る組織も存在します。
- ヒエラルキーのない会社組織にする改革を断行します。
- ヒエラルキーの高い感染対策はもちろんのこと、可能な限りヒエラルキーの低い対策も行いましょう。
- ビジュアルヒエラルキーを意識したWebデザインに修正してください。
続いて、ヒエラルキーを使った英語の例文もいくつか紹介します。
In my company's hierarchy, the senior executives are superior to the executives.
(私の会社のヒエラルキーでは、専務の方が常務よりも上です。)Most Japanese companies form a hierarchical structure.
(ほとんどの日本企業は、階層構造を形成している。)Japanese bureaucrats have a very rigid hierarchy.
(日本の官僚は、非常に厳格な階層構造を有しています。)He made a two-tier promotion within the company hierarchy.
(彼は、会社のヒエラルキー内で2階級の昇進を果たした。)
ヒエラルキーの類語・対義語
ヒエラルキーの類語としては「上下関係」「序列」「階層」「権力構造」などが挙げられます。ヒエラルキーの言い換え表現として使えるケースもあるので、覚えておきましょう。
一方、ヒエラルキーの対義語は「ホラクラシー」という言葉です。ホラクラシーとは、階層構造をなさない組織構造で上下関係がないという特徴を持っています。会社組織においては、社長や役員はいるが、その他の社員は役職や肩書を持たない、というケースもホラクラシー型組織です。
ヒエラルキーの読み方
実は、ヒエラルキーという言葉は各言語によって読み方が変わります。それぞれの違いを見てみましょう。
ヒエラルヒーとどっちが正しい?
日本ではヒエラルキーという読み方をするのが一般的ですが、これはドイツ語読みに近い発音。ドイツ語では「hierarchie」と書いて「ヒエラルヒー」と読み、日本ではこれが変形してヒエラルキーと呼ばれるようになったと考えられます。
日本でも「ヒエラルヒー」と使われるケースがあるため混乱してしまう方もいるようですが、単なる発音の違いなだけで意味は同じなので、好きな方を使いましょう。
英語での発音
英語の場合は「hierarchy」と書き、発音は「ハイアラーキー」となります。英語圏でヒエラルキーと言っても通じない場合があるので、注意してください。
ヒエラルキーの意味を正しく理解して使おう
ヒエラルキーの意味や使い方・例文、類語・対義語などを紹介しました。ヒエラルキーはピラミッド型の階層構造であり、上位に行くほど権力も強まるという点が特徴です。この点を押さえておけば、どのような場面で使われていても、だいたいの意味を理解できます。
ヒエラルキーとカーストは、似ている言葉です。しかし、カーストは生涯変えることのできない固定的な身分制度であり、差別的な意味合いが含まれる点が異なりますので、使い分けには注意が必要です。
ヒエラルキーの意味を正しく理解して、使いこなせるようにしましょう。