メタファーとは、隠喩の英語表現です。比喩は漫画や映画のように言葉の表現から表示のデザインまで、幅広く使われています。メタファーの使い方を知っておくことで生活やビジネスシーンに役立てましょう。本稿ではメタファーの意味や例文、使い方について解説していきます。

メタファーは隠喩のこと

  • メタファーは隠喩のこと

    メタファーの意味を理解しましょう

まずメタファーが持つ意味について紹介します。

メタファーの意味

メタファー(metaphor)の辞書的な意味は隠喩(暗喩)です。隠喩とは比喩のひとつであり、直接的な例えに使われる助動詞「~のようだ」やその活用形「~のような」を用いません。

例文:時間が流れる

例文:私にとってあなたは太陽だ

「時間が流れる」の場合、時計が動くのはわかっても時間が本当に流れている様子は確認できません。また、誰かに対して太陽という表現をしても、本当の太陽ではありません。

このようにメタファー(隠喩)は、比喩だとはっきり表現しない比喩技法です。

メタファーの用途は映画や小説・デザインと幅広い

メタファーは洗練された印象を与える場合もあり、文学で多く使われる表現です。例えば小説の一文で「登場人物が苦悩している」という伏線があり「土砂降りの雨が降っている」と表現が加わる場合、雨は登場人物の心模様を例えるメタファーになります。

メタファーは小説だけでなく、漫画や映画のストーリー展開の中でもよく用いられています。また、メタファーはもののデザインに用いる場合もあります。

メタファーの対義語はシミリー

メタファーの対義語はシミリー(simile)で、直喩(明喩)と訳します。シミリーはあるものについて「(まるで)○○のような」と何に例えているかを直接表現します。

例:彼女の心は氷のように冷たい

例:お盆のような月

なお、比喩にはいくつかの種類があります。

  • メトニミー( metonymy、換喩)
    特徴的な要素を取りあげて全体を表す方法

    例:鳥居がある(鳥居だけで「神社」があることがわかる)

  • シネクドキ(synecdoche、提喩)
    全体を一部に例えたり、一部を全体に例えたりする方法

    例:手が足りない(「手」は「人」を例えている)

  • 擬人法(personification)
    人間以外のものやできごとを人に見立てて表す方法

    例:風がささやいている

メタファーの効果

  • メタファーの効果

    メタファーは「比喩」以外の要素も持っています

メタファーには「比喩」のほかに「引用」「選択制限違反」「物語」と4つの要素があります。

引用: 上司や偉人のように他人の発言や調べた内容を使い例える方法です。

選択制限違反: 「~を食べる」という表現は「食べ物」と結びつくといったように、言葉は結びつきが強いものが決まっています(選択制限)。選択制限違反とは、通常結びつかない言葉同士を組み合わせる方法です。

物語: 逸話や童話、テーマ性のあるストーリーを例えに使う方法です。

それぞれのメタファーには、以下のような効果があります。

直観的にわかりやすくする

メタファーを使うと長々と話をしなくても内容に説得感や納得感が与えられます。

例:このプロジェクトは非常に有効性が高いと考えています。

→〇〇上司が、このプロジェクトは進めるべきだと言っていました。

メタファーのうち「引用」を用いる場合、仕事を熟知している上司の言葉が添えられるため、自分だけの言葉で主張するよりも説得力があります。

表現を豊かにする

「選択制限違反」として「震える肩」を用いると、間接的に怒りや恐怖を表現できます。また、「私は今とても燃えています」は実際に燃えているのではなく「やる気になっている」ことを示します。

詩的な表現で例え方によってはなぞかけのようになる場合もありますが、表現に独自性が出せるほか、相手にとっては意味が理解できると心地よい納得感が得られる表現になります。

受け手の感情に呼びかける

メタファーには「親しみやすさ」「相手の関心を集める」「斬新さを与える」といった効果もあります。相手に注意をうながす場合、「物語」のメタファーとして「そんなことばかり言っているとオオカミ少年になるよ」と伝える使い方ができます。

「最初のうちは周囲も仕方ないとフォローしてくれるかもしれないけれど、だんだん見むきもされなくなるよ」と長々と説明するよりも、簡潔で伝わりやすい表現です。

メタファーの使い方

  • メタファーの使い方

    実生活におけるメタファーの使い方を学びましょう

ビジネスにおいてメタファーを実際に使うシーンには、どんな場面が考えられるのかについてご紹介します。

(1)商品やサービスの効果を説明する

新しい製品やサービスはまだ誰も知らない状態のため、特徴や効果を説明することが難しいものです。消費者の心を引き寄せるためには、共感を得やすくするメタファーが多く活用されています。

具体的な商品の解説に「美容家〇〇さん推薦の美容成分」と引用を加えるとより説得力が増します。

(2)コンセプトの理解を深める

化粧品類の場合「ヘパリン類似物質が含まれ……」と効果が期待される成分を説明することも大切ですが、「つやつやたまご肌に導く」のように比喩を使うと商品のおおよそのイメージが手軽に表現可能になります。

コンセプトをわかりやすくより簡潔な言葉で表現するには、メタファーが大いに役立ちます。

(3)難しい内容の解説を補足する

「法人における決算書とは、つまり個人でいうところの履歴書です」 のようなメタファーがあると、決算書そのものを知らなくても履歴書が頭に浮かべば、おおよその内容が理解できます。

この技法はデザインにも多く使われています。例えば、スマートフォンで通販サイトを見ている場合、ショッピングカートのアイコンをクリックすれば、買い物かごに入っている商品を確認できることがわかります。また、歯車やスパナのアイコンがあれば「設定」機能と結びついていることが推測可能です。

表示範囲や解像度といった制約があるなか、メタファーを使うと一つひとつ言葉で説明しなくてもデザインだけで意図が伝えられます。

メタファーの注意点

  • メタファーの注意点

    メタファーの注意点とはなんでしょうか

メタファーは多用と誤用に注意が必要です。

情報を盛り込みすぎない

物事の説明をする際は、基本となる説明や情報を提示したうえで、理解や共感、親近感を得るための補足としてメタファーを用いることが効果的です。

一方で、メタファーが多すぎても逆に伝えたいことがぼやけてしまいます。また、多くの要素を一つのメタファーだけで表現することはできません。メタファーを使う場合は的をしぼることが大切です。

受け手が共感しにくい表現は使わない

スマートフォンやタブレットにあるホームボタンは「家は帰るところ」という共通認識があるから成り立つデザインです。逆に、野球を知らない人に野球を使ったメタファーを使うと、よりわかりにくくなってしまいます。

メタファーは相手の知識や興味関心、ふだんの生活にあわせ、共感が得られやすい表現を使うことが大切です。

メタファーは説得力や共感力を高める比喩の技法

メタファーはもともと隠喩の英語表現ですが、比喩全般を指す場合もあります。メタファーを効果的に使うと相手の理解や共感を高めることが可能です。相手に理解しやすい表現で的をしぼって活用しましょう。