舞台『死神遣いの事件帖 -鎮魂侠曲-』の公開ゲネプロが23日に東京・サンシャイン劇場で行われ、崎山つばさ、安井謙太郎(7ORDER)、陳内将、脚本・演出の毛利亘宏(少年社中)が取材に応じた。

  • 左から陳内将、崎山つばさ、安井謙太郎、毛利亘宏

    左から陳内将、崎山つばさ、安井謙太郎、毛利亘宏

同作は東映と東映ビデオが立ち上げた、映画と舞台を完全連動させるプロジェクト「東映ムビ×ステ」の第2弾。映画版は鈴木、舞台版は崎山つばさが主演を務める。江戸市中で探偵業を営む久坂幻士郎(鈴木)は豊臣家に仕えた高名な傀儡子の息子。死神・十蘭(安井謙太郎)と契約関係にある『死神遣い』でもあり、吉原の大遊廓で“遊女連続殺人事件”に関わっていく。今回の舞台版は映画の1年後という設定で、吉原遊廓の惣名主を父にもつ侠客のリーダー庄司新之助(崎山つばさ)と、死神・十蘭が大暴れする。

東京公演はサンシャイン劇場にて23日〜8月2日、大阪公演は梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで8月5日〜9日、福岡公演は福岡サンパレスにて8月13日、広島公演は上野学園ホールにて8月15日を予定している。

出演者囲み取材(全文)

■本作への意気込みは?

崎山:庄司新之助をやります、崎山つばさです。「ムビ×ステ」の映画連動ということで、何がなんでも舞台の幕を開けたいという思いで、稽古に臨みました。色んなニュースが飛び交って不安な部分はもちろんありましたが、僕らは感染対策をしっかりして、稽古場での過ごし方や劇場に入ってからの過ごし方も徹底して、その中で初日を迎えるのがどれだけ嬉しいことか、すごく身に染みて感じてます。なんだか初舞台を踏むような……久しぶりの舞台なのでそのような感覚になっています。意気込み十分に、でも気をつけながら皆様に僕らの演劇を届けていきたいなと思っています。

安井:十蘭役を演じます、安井謙太郎です。崎山くんも言っていただいた通り、いろんなことがありますけども、座長を初め一つになってこの舞台にしっかりと挑んでいこうと思います。映画と舞台の連動ということで、2つ合わさって完成、という作品になるんじゃないかなと思っています。これを盛り上げ、さらに第3段に繋げられるようにしっかりと演じさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

陳内:本日はお集まりいただきありがとうございます。百目鬼役の陳内将です。本当に大変な世の中で、初日を無事迎えることができるのか、稽古期間から不安で過ごしていたんですけど、本当に制作さんが万全の体制を作ってくださって、消毒・換気はもちろんのこと、稽古時間も考えてくださって、無理のない範囲で、でもしっかりと密度の濃い稽古期間を設けてくださいました。負担が少なかった反比例で、もっとお客様に喜んでもらえるような作品に仕上がってると思います。お客様たちが舞台に行けなかったり悲しい日々が続いた分、この作品で「舞台っていいな」ということを届けられたらいいなと思っております。

毛利:脚本・演出の毛利亘宏です。やっと劇場に帰って来れました! 本当に、当たり前のようにお芝居をしていたのが、劇場で舞台ができないことが苦しくて、とても辛い日々でした。でもこのメンバーで戻って来れて、本当に幸せに思っています。大変な状況ということもあり稽古時間も大変短く、圧縮して稽古をしておりました。ここにいる3名ほか出演者たちの素晴らしい集中力と演技があって初めて成り立った公演だと思っております。本当に素晴らしい作品ができあがっていると思います。映画にも負けない、映画をちゃんと継いで完成するムビステというステージを、どうぞご期待くださいませ。

■コロナ禍のなか、演出面や内容で工夫は?

毛利:こういった状況もありますので、出来る限り稽古場の滞在時間を短くする。長時間の稽古で免疫力を落とさないことを非常に気を付けて稽古をして参りました。あとは大きく、脚本面ですね。元々1幕構成で作られてた脚本なんですが、お客様のことも考えまして、途中で換気できる時間を設けるために、2幕構成に書き直しました。この変更はお芝居的にもかなり面白く、パワーアップする構成になりました。無理やり半分に割ったというわけではなくて、芝居としても面白くなったんじゃないかなと思っております。十分換気した劇場でご覧いただくことができるので、ご安心くださいませ。

■舞台版の見どころ、自身の思うポイント

崎山:百目鬼のピアス……です。

陳内:ちょっと取ってきます(笑)。 ※ピアスをつけてくるのを忘れた陳内

崎山:冗談です(笑)。本当に、このご時世の中で演じることの意味がすごく凝縮された物語だと思っていて。侠客の生き様、生きるということがどれだけ大切かということを感じさせてもらえる作品になっていると思います。侠客に限らず、死神の生き様だったり兄弟姉妹の生き様だったり、舞台上から感じとってもらえればと思います。

安井:やはり、映画をご覧いただいた方はさらに楽しんでいただけるような内容になっているんじゃないかなと思います。映画は画面の中で切り取られていると思うんですけど、舞台だとお客様の視点によって、どこで物語が動いているか選べるという贅沢な形になっているので、映画と舞台の違いを楽しんでいただけたらと。個人的に、十蘭はだいぶ映画とはキャラクターも変わり、深掘りしていただいてますので、注目していただけたらと思っています。

陳内:僕が映画で好きなところは、死神が武器に変化するというところ。これが舞台であるのかないのか、あるとしたらどういう演出になっているのかというのを、楽しみにしているお客さんもいらっしゃると思うんですけど、やはり舞台ならでは、毛利さんの演出あってこその見どころが……変身はあるのかわからないですけど(笑)、たくさん詰まっております。個人的な部分に対しては、十蘭と被りますけど、映画では明かされなかった百目鬼という死神のキャラクター像を毛利さんに深く掘っていただいたので、それを楽しみにしていただけたらと思います。

安井:僕、殺陣やってるのも言い忘れてました。人生で初めて剣を持って舞台に立ちました。大先輩の2人にご迷惑かけてます! ありがとうございます!

崎山:いやいや(笑)

陳内:かなり激しいよね。

安井:そうなんです。言おうと思ってた、危ない。初めて剣を持つということで、しっかり頑張ります。

陳内:でも、初めて剣を持つ時は、ね……?(ネタバレに配慮)

安井:そうですね、ちょっと楽しみにしていただけたら!(笑)

毛利:我々は今、コロナとの戦いを絶賛繰り広げているのですが、舞台上でもかぶるわけじゃないんですけど、「生きていくことは何かと戦っていくことだ」ということをストレートにメッセージに込めさせていただきました。庄司新之助というキャラクターが戦い抜く様は、我々がコロナに打ち勝っていくという姿とかぶっているのかなと心から思っていますので、必ずこの芝居も勝利して、大変な世の中に少しでも活力を与えていければなと思っております。

■新型コロナウイルスの影響で演劇も難しいという状況で世の中や観客へメッセージを

崎山:こうして舞台に立てることが、どれだけ当たり前じゃないかが身に染みていて。「誰も陽性者が出なかったからラッキー。舞台ができる」という感覚では全くなくて、日々、次の公演ができるかどうかわからないという中で、僕らなりの演劇をどう届けられるかという思いがすごくあります。周りでも(作品が)中止になってしまった人もいて、胸が締め付けられる思いもありますし、演劇を作る人間として、なんとか作品を届けられるように、1日でも多くできるように努めていくのが、僕の今やる全てのことなのかなと思っています。きっとそれを一人一人が思ってたら、いつかみんなが演劇をできる日が必ず来ると思っています。

安井:演劇に限らず、こういうエンターテインメントはお客様があってのことだと思っています。個人的なことで、7ORDERというグループをやっているんですけど、今回の舞台をやるにあたって、グループのファンレターに「行けなくなっちゃった、ごめんね」というメールがあったんです。こういうご時世で、劇場に足を運ばないという選択をするお客さんもたくさんいらっしゃる。そう言わせてしまったことがとても心苦しいなと感じて、今日も配信があるし、いろいろな届け方がこれから無限に広がっていくものだと思っているので、そういう選択を自由にできて、ネガティブな感情が出ないような世の中になるといいいなと思います。僕たちはエンターテインメントの表現の仕方もですけど、届け方も自分たちなりに模索して、どんどん新しいチャレンジをしていくべきなんだなということをとても感じました。

陳内:人前で舞台に立つのは3月の頭以来になるんですけど、ここまでがっつり演劇から離れたのは、僕の芸能活動史上1番長い期間になると思います。端的に言って、僕はものすごく芝居に飢えましたし、板の上に立ちたかったんですけど、個人的欲求だけではどうしようもない日々でしたし、お客様も何か表現してる僕を見たいと言ってくださってもなかなか難しい。それが今日、やっと立てる。でもここがゴールではなくて、これまでの演劇のあり方に戻ることはあるのかないのかわかりませんけど、今やっと新しい演劇の形の第一歩を踏み出せることにものすごく感謝しています。お客様にも、「お待たせしました」という気持ちと「引き続き気を付けて頑張っていきましょう」という気持ちをメッセージとして伝えていきたいです。

毛利:演劇というのは、有史以前からずっと続いてきました。その中で今回とは引きにならないくらいの疫病や世界大戦、日本では震災など多くの困難に見舞われて、これ以上大変な時期というのはたくさんありました。それでも演劇はなくなりませんでした。だから、演劇がなくなることはありません。このコロナで今1番大変な状況ではありますが、必ず元どおりの劇場空間へ、お客様が求める限り、私たちは努力し続けますので、それを信じてお客様に応えていきたいなと思います。

■映画・舞台両方出演してみてどう思ったか?

崎山:個人的には「ドラマと舞台」とか、「アニメと舞台」という連動はしたことあるんですけど、「映画と舞台」というのは初めてでした。映画から舞台に物語が続くということで、映画では鈴木拡樹くんが主演で、拡樹くんのバトンを受け取り、舞台で主演として堂々と演じなければならないなという思いがすごくありました。また「ムビ×ステ」第2弾ということで、第1弾からのつながりもしっかりと僕らが持って第3弾につなげられるように、あるいは『死神使いの事件帖』の続編だったりと、色んな可能性を発信できるようにしなきゃなという思いです。

安井:僕も映画と舞台という新しい試みにチャレンジさせていただけることがとても嬉しいなと思って。出演している時は目の前のことしか見えないのでわからないんですけど、視聴者目線映画と舞台を見るとすごく面白い仕組みだなと。舞台はすごく深掘りができるので、『死神使いの事件帖』という作品のファンになってくださる方がこの舞台でもっともっと増えていただけるんじゃないかなという気持ちになりましたので、ぜひこういう企画を続けて行っていただきたいなと思います。

陳内:いろんな登場人物が自分なりの正義を持っていて、バトンをつないでいく中で、1幕、2幕とたくさん盛り上がる山があって。通し稽古を見たときに、自分はストーリーを知ってますし出演もしてますけど、自分の出番じゃないところで見てたときに「次どうなるんだっけ?」と心が躍る感覚を覚えましたので、映画のもちろん好きでいらっしゃる方もいらっしゃると思いますけど、そこからまた舞台がバージョンアップしているなという自信があります。

■主演からのメッセージ

崎山:僕らは稽古してきて、僕らのやり方で僕らの演劇をこの板の上から届けることが全てだと思っています。そのために1日でも多くのお客様に、公演ができるように努めて参りますので、是非とも応援のほどよろしくお願いいたします。

ゲネプロ 写真