初のミュージックビデオがYouTubeで公開されると初日に1,000万回再生(現在4,000万回再生を突破)を記録、ミニアルバム配信直後にはiTunes総合トップアルバム・ランキングをはじめ各音楽配信サイトで軒並み1位を獲得した大型新人と言えば、今話題の9人組グローバル・ガールズグループ「NiziU」である。
朝の情報番組『スッキリ』(日本テレビ)でも大々的に特集が組まれたが、なぜ、これほど注目されているのか。彼女たちを誕生させたオーディション番組『Nizi Project』(Part1~2、Huluで全話独占配信中)が、その理由の全てを物語っていた。
■「日本版TWICEの誕生を目指す」
いまだかつてないほど本格的なオーディション番組だった――1月31日から約5カ月にわたってオンライン動画配信サービス・Huluで『Nizi Project』の全話を視聴して思う感想の1つである。
そもそもこの番組は「乃木坂46」「日向坂46」などを生み出したソニーミュージックと、「TWICE」「2PM」などのK-POPアーティストを次々とプロデュースする JYP Entertainmentがタッグを組んだプロジェクト発。そんな背景を知るだけでも、力の入りようは当たり前なのかもしれない。でも、それだけではない“ガチさ”が確かにあった。
まずはその規模。「日本版TWICEの誕生を目指す」という触れ込みで、集まった応募者の数は1万人超え。ちょうど今から1年前の19年7月から8月にかけて、日本国内8都市、ハワイ、LAを含めた全10カ所で開催され、その模様から番組では追っていた。
もちろんそこには、NiziUメンバー9人の初々しい姿も。韓国でJYP練習生としてレッスンを積んでいたマコ、リマ、ミイヒの3人は、初っ端からレベルの違いを見せていたし、ダンスや歌がまだぎこちなくも出だしから印象に残るニナやアヤカもいた。
■世界ヒットを見据えた企業戦略
こうしたダイヤの原石探しから、JYPの代表で、ダンサーでもありシンガーソングライターでもあるJ.Y. Park氏の姿もあった。現場に足を運び、まずは可能性のある選抜メンバー26人をJ.Y. Park氏がどういった視点で選んでいくのか。そんなプロデューサー目線も丁寧に伝えられながら、何より「応募者の女の子たちの人生を大きく変える責任感を持っている」という気概すら感じられた。その場限りで番組を盛り上げるためだけの演出でないことも明らかだった。
それもそのはず、『Nizi Project』は、J.Y. Park氏が描く企業ビジョン「JYP 2.0」のテーマの1つである「GLOBALIZATION BY LOCALIZATION(グローバリゼーション バイ ローカリゼーション)」に基づいたもの。つまり、世界でヒットさせることを始めから見据えた企業戦略をも背負ったものだった。
今年2月、JYPはアリアナ・グランデやテイラー・スウィフト、ポスト・マローンなど人気アーティストが所属するアメリカ最大手のレーベルの1つである「リパブリック・レコーズ(Republic Records)」と戦略的協業を締結したことが報じられ、TWICEらJYP所属のアーティストのアメリカ本格進出が始まっている。こうした現実味のあるレールも敷かれた上で、次のスターを発掘・育成し、世に出すオーディションであったのだ。