外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 6月の推移】

6月のユーロ/円相場は119.311~124.428円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.3%の上昇(ユーロ高・円安)となった。世界景気底入れからのV字回復期待でユーロ高・円安に振れた前月の流れを引き継いで、5日には約13カ月ぶりの高値となる124.428円前後まで上昇。

しかしその後は米国や中国の一部で経済活動の再開に伴い新型コロナウイルスの感染も再拡大したため、リスク回避ムードが強まる中で反落。欧州連合(EU)首脳会議がコロナ復興基金の合意を先送りにした19日には119.30円台に押し戻された。その後は、月末にかけてポジション調整と見られる動きで持ち直して121円台で6月の取引を終えた。

込みが懸念される中、ユーロ売りが先行。独憲法裁が欧州中銀(ECB)の量的緩和に一部違憲の判断を示したことも重しとなり3年ぶりに115円台を割り込んだ。7日には114.417円前後まで下落して2016年11月以来の安値を付けた。

しかしその後は、断続的にユーロを買い戻す動きが強まり、29日には約2カ月ぶりに119.895円前後まで反発。ユーロ共同債の発行による復興基金創設への期待が高まったことや、独仏など主要国で景況感が改善し、新型コロナ不況の底入れ期待が浮上したことが反発の背景となった。

【ユーロ/円 7月の見通し】

6月以降、ユーロ圏の景況感が改善しており、購買担当者景気指数(PMI)は製造業、非製造業ともに40台後半へと持ち直した。7月に好不況の分かれ目である50を上回ってくればユーロ相場の支援材料となりそうだ。

もっとも、ドイツなどでも新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、欧州で感染の「第2波」が現実味を帯びればユーロの下落は避けられないだろう。コロナ・リスクはドル買いと円買いを強めるため、相対的にユーロへの下落圧力が増しやすくなる。「景気回復期待」と「コロナ第2波懸念」のどちらが優勢となるか引き続き注目されよう。

もうひとつの注目点は欧州連合(EU)復興基金(コロナ復興基金)にEU首脳が合意できるかどうかだ。6月の首脳会議では大方の予想通り合意が先送りされた。基金の発足には全加盟国(27カ国)の合意が必要となるが、オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンの「倹約4カ国」が反対しており、議論は進展しなかった模様だ。返済不要の「補助金」として加盟国に供与することがネックになっており、「倹約4カ国」は返済が必要な「融資」をメインに据えるべきと主張している。基金創設に前向きなドイツがリーダーシップを発揮して7月17-18日に対面形式で行われる首脳会議で合意に至れば、景気支援の観点からユーロの押し上げ材料になると見られる。

ただ、復興基金からの加盟国への資金配分はいずれにしても2021年になるため、現時点で反対国が容易に妥協する公算は小さそうだ。仮に、今回合意できなくても時間的余裕があることからユーロに強い下落圧力がかかることはないと見るが、上値を抑える要因にはなるだろう。