外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 5月の推移】

5月のユーロ/円相場は114.417~119.895円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.0%の上昇(ユーロ高・円安)となった。新型コロナウイルス感染拡大による欧州経済の落ち込みが懸念される中、ユーロ売りが先行。独憲法裁が欧州中銀(ECB)の量的緩和に一部違憲の判断を示したことも重しとなり3年ぶりに115円台を割り込んだ。

7日には114.417円前後まで下落して2016年11月以来の安値を付けた。しかしその後は、断続的にユーロを買い戻す動きが強まり、29日には約2カ月ぶりに119.895円前後まで反発。ユーロ共同債の発行による復興基金創設への期待が高まったことや、独仏など主要国で景況感が改善し、新型コロナ不況の底入れ期待が浮上したことが反発の背景となった。

【ユーロ/円 6月の見通し】

5月のユーロの反発は、上記で示した通り「ユーロ共同債」によるコロナ復興基金への期待であった。6月18-19日の欧州連合(EU)首脳会議が全会一致で復興基金を承認すれば、ユーロ圏経済の回復期待を高めることになろうが、過剰な期待は禁物だろう。

EUの財政協議がすんなりとまとまったケースは少ない。財政移転につながる「ユーロ共同債」の発行を渋っていたドイツが賛成に回ったことは好材料だが、オーストリア、オランダ、デンマーク、スウェーデンのいわゆる「倹約4カ国」の反対は根強い模様だ。

仮に、18-19日の首脳会議で合意できないとなれば、ユーロは下落圧力に晒されるだろう。首脳会議は、欧州委員会が提案した5,000億ユーロの助成金と2,500億ユーロの融資のうち、返済不要の助成金の減額などの部分合意に留まる可能性もありそうだ。その場合でも、これまで期待で買われてきたユーロにやや下落圧力がかかる可能性がある。6月のユーロ相場にとって最大の注目ポイントは、EU首脳会議で「欧州の結束」を示せるかどうかであろう。