「私は会社に縛られるような、奴隷にはなりたくありません」「働くことは、生きることです」「それが何か」…正社員に対して物怖じせず、ズバズバ正論を繰り出していくスーパーハケン・大前春子が、いよいよ13年ぶりに帰ってくる。

当初の予定から2カ月遅れ、きょう17日にスタートする日本テレビ系ドラマ『ハケンの品格』(毎週水曜22:00~)。篠原涼子が演じる独特のキャラクター・春子はどのように生まれたのか。前作に引き続き脚本を担当する中園ミホ氏に、誕生秘話や名セリフに込めた思いなどを聞いた――。

  • 『ハケンの品格』に主演する篠原涼子 (C)NTV

    『ハケンの品格』に主演する篠原涼子 (C)NTV

■最初はロボットだったキャラクター

仏頂面で愛想がない大前春子だが、このキャラクターが誕生したきっかけを聞くと、「最初にヒロイン像を作るときに、(プロデューサーの)山口雅俊さんが『ヒューマンスキルを100か0にしましょう』と言ってくれたんです。それに対して、私はヒューマンスキル100の人を書くのはものすごく難しいから、0だったらいけると思って選びました。感じが悪くて思ったことをズバズバ言う。ムカつくけど、あまりにもスキルが高いので辞めさせたくても辞めさせられない。そこから“スーパーハケン”の設定が生まれました」と説明。

しかし、そのキャラは、物語を書いていくうちに、徐々に変化していったという。

「最初は、『この人には血が流れているのだろうか…』って思うほどロボットみたいな感じで書いていて、セリフでも東海林さん(大泉洋)に『息吸ってんのか!?』とか言われたほどなんです。でも、いくら鎧をかぶせても、篠原さんが演じると、愛情とか優しさがにじみ出てきちゃうんですよ。だから、後半に行くにつれて、だんだんそういう部分も出していったんです。これは最初の計算ではなかったんですが、やっぱりただのロボットのままだったら、あんなに皆さんに見てもらえなかったと思うので、篠原さんの力がすごく大きいですね」

執筆していくうちに、大前春子がひとり歩きして、セリフが思い浮かぶのだという。「書いているときにいつも、小さいスクリーンみたいのが脳内から浮かんできて、その中で大前春子と里中(小泉孝太郎)と東海林が勝手にしゃべりだして、動いてくれるんですよ(笑)。それを書き写している感じなんです。特に大前春子はどんどん動いてくれる人だったので、今作でもそうなんですけど、書いててすごく楽しいんです」と、筆が乗っていくようだ。

  • (左から)篠原涼子、大泉洋、小泉孝太郎 (C)NTV

■セリフに込めた実在する派遣社員の本音

大前春子のモデルになった人物は「いないです。あんな人はどこにもいないですから(笑)」というが、執筆にあたって実際に派遣社員の人たちを取材し、その本音を春子のセリフに盛り込んでいる。

「『残業は、仕事のとろい正社員さんがお給料を水増しするためにするものです!』というセリフは、実際に彼女たちが言っていたことなんです。派遣社員がそんなことを職場で言ったら、一発で契約を打ち切られるので、あまりにもスキルが高くて辞めさせられない春子にどんどん言わせたかった。本音をズバズバ代弁してくれることで、きっと見てる人たちもスカッとしていただけるんじゃないかと思いました」