2019年3月から2020年3月まで、テレビ朝日系にて放送されたスーパー戦隊シリーズ第43作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』は、古来より人々を守る使命を帯びた「リュウソウ族」の末裔たちと凶悪な戦闘民族ドルイドンとの激闘を描いた物語である。リュウソウジャーは頼もしい仲間「騎士竜」たちと力を合わせ、まさに過酷としか言えない戦いを乗り越え、苦難の末に「勝利」をつかむことに成功した。

  • 兵頭功海(ひょうどう・かつみ)。1998年生まれ、福岡県出身。2018年 GYAOとAmuseが共同実施したオーディション『NEW CINEMA PROJECT』の「出演者」部門でグランプリを受賞し、映画『五億円のじんせい』(2019年)に出演する権利を獲得。AbamaTVの配信作品『恋愛ドラマな恋がしたい2』(2019年)を経て、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』第14話よりリュウソウゴールド/カナロ役でレギュラー出演した。撮影:大門徹

従来のスーパー戦隊シリーズでは、テレビが最終回を迎えた直後に「ファイナルライブツアー」と称して全国各地をめぐるアクションショーが開催されることになっていたが、今年(2020年)は新型コロナウイルス感染拡大防止のため全公演中止となってしまった。

しかし「ファイナルライブツアー」の開催を楽しみにしていた全国の『リュウソウジャー』ファンの思いに応えるべく、このたび、ドラマCD『「騎士竜戦隊リュウソウジャー ファイナルライブツアー」おはなしCDスペシャルセット』(5,000円/税込)として発売されることが決定した。

ここでは、リュウソウジャー「6人目」の仲間として大活躍した"海のリュウソウ族"リュウソウゴールド/カナロを演じた兵頭功海にインタビューを行った。完結したテレビシリーズへの思いや、撮影の日々でつかみとった仲間との"絆"など、熱き言葉の数々をお届けする。

――『リュウソウジャー』にカナロ役でレギュラー入りされたことで、兵頭さんの中で何か心境の変化などはおこりましたか?

僕はもともと、自分に自信が持てない人間だったんです。カナロ役が決まったよ、と聞いたときも「えっ、自分が受かっていいの?」みたいな感覚があって、とても驚きました。

撮影現場に入ってからも、監督がいて、スタッフさんたちがいて、自分よりもずっと経験を重ねているキャストに囲まれて、1人だけ何も知らないままの僕は初日に打ちのめされました。演技がうまくいかず悔しい思いをしながら、かといって「こういう演技がしたいです」とも言えなくて、指示されたことに対してどう応えるかということに一生懸命でした。

それが回数を重ねていくにつれて、僕のほうから監督に「この場面のカナロはこんな感情だと思うので、このような動きをさせてほしい」とか、「みんながあっちを向いているカットで、僕だけ別の方向を見ていいですか」とか、台本の流れに沿ったカナロの感情の表現をひとつひとつ提案できるようになりました。キャスト同士の関係もどんどん深まってきて、台本に書いていないことを「僕たちでここ、膨らませていこうか」って、アドリブ演技までできるようになりました。最初のころと比べたらぜんぜん違うと思えるくらい、自信が持てるようになったんです。これも『リュウソウジャー』という作品のおかげだと思います。

――『リュウソウジャー』全体を振り返って、兵頭さんが特にお気に入りのエピソードはどれですか?

中澤(祥次郎)監督の第17話「囚われの猛者」第18話「大ピンチ!変身不能!」ですね。それまでの数話を経て、ちょっと雰囲気を変えたコミカルなカナロを演じることができました。第17話の冒頭シーンで、少年の頼みを聞かずに通り過ぎたカナロが、ちょっと気が変わって"後ろ向きに"引き返してくるとか、カナロのお茶目な面を中澤監督に広げてもらったところがあって、気に入っています。

あとは坂本(浩一)監督の第15話「深海の王」第16話「海に沈んだ希望」、第29話「カナロの結婚」、そして第38話「天空の神殿」ですね。カナロがメインになったエピソードは坂本監督の回が多いので、いちばんお世話になっている印象です。

――坂本監督といえば、ダイナミックなライブアクション演出がファンの間で話題になりましたが、アクションをされてみていかがでしたか?

最初は芝居と同じく、アクションもなかなかうまくこなすことができなくて、体が硬直してカタい動きにしかなりませんでした。どうすればいいんだ!と焦ったりすると、余計できなくなるんですよ。でも第38話で颯(コウ)と剣を交えるアクションをやったとき、坂本監督からふいに「アクション、うまくなったね!」と声をかけてもらえたんです。その言葉が、すごくうれしくて……。最初のころから比べると、あの第38話ではとてもリラックスした状態で撮影に臨むことができて、自分の動ける範囲もグンと広がりました。坂本監督にはアクションを徹底的に鍛えていただいたと思っています。

――カナロのアクションには、どんな特徴をつけようとされましたか。

剣をふるうのは他の仲間たちと同じですが、あまり大振りになりすぎないように意識していました。流れるような動きで、テキパキと攻撃をこなすのがカナロの特徴だと思います。

最初のころにできなかった動きが、練習を重ねてできるようになっていくのが、とてもうれしいんですよ。先ほどの第38話で、コウとカナロが神殿の中でリュウソウカリバーをめぐって激しく戦いましたが、このアクションシーンを撮ったとき「これがいいアクションか!」と手ごたえを感じたんです。うまく動いてやろうという考えではなく、自然と体が相手の動きに反応してパッパッと剣を合わせていく。何も考えずに立ち回りができたという感覚は、初めてだったんです。それこそ「自然な滑らかさで、カナロらしい戦い方を表現することができた!」という気持ちになりました。