31年ぶりに最年少タイトル挑戦記録を更新! 永瀬拓矢二冠を熱戦の末破る

デビューから数々の記録を更新してきた藤井聡太七段がまた一つ大記録を樹立しました。6月4日に東京・将棋会館で行われた、第91期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦(主催:産経新聞社)で永瀬拓矢二冠を破り、挑戦者となったのです。17歳10カ月20日での挑戦は、31年前に屋敷伸之九段が達成した17歳10カ月24日の記録を更新する最年少記録となりました。

振り駒で先手番となった永瀬二冠は相掛かりを選択します。過去に藤井七段が指した前例をたどる進行となり、どこで永瀬二冠が新研究を披露するのか注目されました。

永瀬二冠が新手を指したのは25手目でした。従来は飛車を受けに利かせる手が指されていましたが、永瀬二冠は相手の攻めを誘う強気な手を採用。局面は風雲急を告げます。藤井七段はここで長考に沈みました。相手の誘いに乗って攻めるのか、それとも見送って駒組みを続けるのか。49分の考慮の末指されたのは、後者でした。

藤井七段が決戦を見送ったため、今度は永瀬二冠が攻めるターンです。飛車をぶつけて飛車交換をし、飛車・角・桂で藤井陣に襲い掛かりました。激しい攻防の末、リードを奪ったのは永瀬二冠でした。藤井玉を丸裸にした上、敵陣に馬を作ることに成功。さらに自玉は手つかずです。しかし、一瞬攻めの手が緩みました。

ここまで攻められ続けていた藤井七段。この隙を突いて反撃に出ます。銀取りに桂を打って永瀬陣の金銀の連結を崩すと、敵玉付近に銀を打ちました。気が付きにくいこの銀打ちが妙手で、結果的には勝着となりました。

ここまで持ち時間をあまり使わずに、快調に進めてきた永瀬二冠の手がこの銀打ちを見て止まります。10分、20分と経っても着手しません。やがて考慮時間は1時間を超え、ようやく永瀬二冠の手が動いたのは1時間8分後。しかし長考の末指された手があまり良い手ではなく、形勢がグッと詰まりました。局後に永瀬二冠は、この銀打ちは読んでいた手ではなく、思いつかない類の手だったと振り返っています。

しかしながら形勢は全くの互角。手に汗握る攻防に、ファンは中継をハラハラドキドキしながら見守りました。ABEMAで解説を担当する飯島栄治七段からは、名局賞候補との言葉も飛び出しました。

いつまでも見ていたくなる将棋でしたが、必ず終わりは訪れます。失着を最後の最後に指してしまったのは永瀬二冠でした。持ち時間が少なくなってしまったが故のミスでしょう。

勝勢の将棋を逃す藤井七段ではありません。確実に永瀬玉を追い詰めていきます。もはや手段もなく、投了だろうと思われた永瀬二冠でしたが、あきらめません。馬をタダで捨てる必死の延命策で頑張ります。絶体絶命と思われる局面でもあきらめないのが、永瀬二冠の持ち味であり、強さです。しかし、ここではその頑張りは実りませんでした。数手後に自玉が詰まされたのを見て、100手で永瀬二冠が投了。藤井七段が挑戦権を獲得しました。

藤井七段が挑むのは、渡辺明棋聖です。渡辺棋聖は棋王・王将も保持するトップ棋士。藤井七段が初挑戦にして初タイトル獲得を成し遂げるのか、それとも渡辺棋聖が高い壁となり立ちふさがるのか。日本中が大注目の五番勝負は6月8日(月)に開幕します。

記録をまた一つ塗り替えた藤井聡太七段(代表撮影:日本将棋連盟)
記録をまた一つ塗り替えた藤井聡太七段(代表撮影:日本将棋連盟)