タイトル挑戦へ2度目のチャンスをつかめるか!? 決戦は6月4日

渡辺明棋聖への挑戦権を争う、第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント(主催:産経新聞社)の準決勝が6月2日に東京・将棋会館で行われました。この棋聖戦に最年少タイトル挑戦記録の懸かる藤井聡太七段は佐藤天彦九段と対局。111手で勝利し、挑戦者決定戦に進出しました。

53日ぶりの久々の公式戦登場となった藤井七段。再開初戦は、あと2勝でタイトル戦挑戦が叶う棋聖戦の準決勝という、超重要な対局となりました。今期の棋聖戦が、屋敷伸之九段が保持する最年少タイトル挑戦記録更新のラストチャンス。相手は名人3連覇を達成し、現在はA級棋士の強敵、佐藤九段です。

振り駒で先手番となった藤井七段は、得意の角換わり腰掛け銀を採用します。角換わり腰掛け銀では先手から先攻することが多いですが、藤井七段は9筋を突き越した形を生かして相手の攻めを呼び込みました。佐藤九段は相手の誘いに乗って堂々と開戦。藤井七段は自陣角を打って反撃し、激しい戦いになりました。

双方が駒台に金銀を乗せる派手な応酬でリードを奪ったのは、藤井七段でした。両者馬を作り合ったものの、働きが大差。藤井七段の馬は敵陣で相手の大駒を攻める要の駒となった一方、佐藤九段の馬は自陣深くに封じ込められ、攻めにも守りにも働かない、狙われるだけの駒になってしまいました。

優位に立ったあとの藤井七段の指し回しはさらに冴えわたりました。相手の飛車を追い回して取ることで、安全勝ちをするのかと思いきや、藤井七段の指し手は相手玉へ向かいます。敵玉に嫌味を付けてから、馬と飛車の交換を決行。この飛車は手数をかければもっと安い駒で取ることができたので、藤井七段はすでに最短の寄せの構図が描けていたのでしょう。

取った飛車を敵陣の馬取りに打ち下ろし、佐藤九段がそれを受けたのに対して、さらに馬取りに桂を打ったのが藤井七段の素朴な決め手でした。佐藤九段は受けてもキリがないとみて攻め合いに出たものの、藤井七段の鋭い攻めの方が早く、最後は即詰みに打ち取られてしまいました。

この勝利で藤井七段は挑戦者決定戦への進出となりました。相手は同日に行われたもう片方の準決勝で、山崎隆之八段を破った永瀬拓矢二冠です。両者は公式戦初対局となりますが、思い出されるのは今から3年前に放送された「藤井聡太四段 炎の七番勝負」。藤井四段はこの時6勝1敗の成績を残しましたが、唯一敗れた相手が永瀬六段でした。また、現在では両者は練習対局を行う間柄です。

最年少タイトル挑戦の懸かる天才VS20代ながら二冠を保持する若手実力者という、屈指の好カードとなった挑戦者決定戦は6月4日に行われます。

タイトル挑戦まであと1勝とした藤井聡太七段(代表撮影:日本将棋連盟)
タイトル挑戦まであと1勝とした藤井聡太七段(代表撮影:日本将棋連盟)