様々な個性を持つ将棋駒の中で棋士が一番好きな駒はなんなのか、アンケートからご紹介します。

将棋は成駒を除けば全部で8種類の駒があります。将棋の面白さ、奥深さの源は駒がそれぞれ違う動きをすることに起因すると言っても過言ではありません。それぞれ動けるマスで個性を持つ将棋駒を棋士は巧みに使いこなします。棋士の中には特定の駒に思い入れがあるという人も多いのではないでしょうか。ということで本記事では『将棋年鑑2014 棋士名鑑アンケート』の「好きな将棋の駒は?またその理由は?」から回答を一部ご紹介します。(以下カッコ内敬称・肩書略)

一番多かった回答は「銀」でした。

銀 攻守の要なので(羽生善治)
銀 攻守に活躍するから (深浦康市)
銀 道を開くから(田中寅彦)
銀 軽快、柔軟(郷田真隆)

ほか
受けに使うにもよし、攻めに使うにもよしと万能な駒です。成ると利きがなくなることもあり、扱いが難しい面もありますが、そういった点が棋士に好まれる要因なのかもしれません。銀といえば羽生九段の伝説の▲5二銀が有名ですね。

第2位はみんな大好きこの駒です。

飛車 強い受け駒だから(森内俊之)
飛車 子供の頃の対戦では相手の飛車をとればほとんど勝ちだったから(渡辺明)
飛車 大きく動けるから(塚田泰明)
飛車 みんなそうでしょ? (日浦市郎)

ほか
将棋の戦型を大別するカテゴリーで居飛車、振り飛車があるくらい重要な駒です。初心者のうちは特に飛車を可愛がりすぎて、気づいたら玉が詰んでいたということも少なくありませんね。攻め駒として非常に優秀ですが、受けの名手、森内九段は守り駒として飛車を評価しているようです。

第3位は盤上にもっともたくさんある駒、歩です。

歩 地道に進むところ(屋敷伸之)
歩 地味ながら、ないと困る場面が多い(中田宏樹)
歩 攻守、手筋等これ以上多い駒はない(佐藤秀司)
歩 けなげでしょ(神谷広志)

ほか
将棋では一番弱い、価値の低い駒ですが、だからこそ使い道がたくさんあります。相手に渡してもそれほど脅威にならないので、利きを遮断したり、相手の駒を動かして陣形を乱したり、様々な手筋があります。歩のない将棋は負け将棋とはよく言ったものです。1マス前進することしかできないのも棋士には好感触なポイントのようです。

第4位はトリッキーな駒、桂馬でした。

桂 一番意思が必要な気がする(佐藤康光)
桂馬 動きが面白い(三浦弘行)
桂 よくその駒ばかり持ち駒になるから…(鈴木大介)
桂馬 意外性(中座真)

ほか
桂馬は自分の隣接のマスには進めない不思議な駒ですよね。受けには適さないことが多いですが、持ち駒から打つ桂馬は急に拠点ができたり、他の駒にはない使い方ができます。

以下、少数意見をご紹介します。

角 駒落ちで対局するときも角を残しておきたいくらいなので(久保利明)
角 引くことができるから(飯島栄治)

ほか
角が好きという棋士は飛車と比べてかなり少なかったです。飯島七段は飯島流引き角戦法で升田幸三賞を受賞しているので、思い入れのある駒ということですね。

金 守備力が強いから(杉本昌隆)
金 使いやすい(佐藤和俊)

ほか
金は守り駒としての特性が強い駒で、囲いには必ずと言っていいほど使われます。利きが多いため攻めにも強い駒で、オールラウンドに活躍します。

香 いらないようでいなきゃ困る深い駒(安用寺孝功)
香 詰将棋で中合が出やすいから(船江恒平)
成香 一途な青春から身近な事にしか手が届かなくなる人生のようだから。(東和男)

一直線で進んでいく男らしい駒です。詰将棋の作成も解答も得意とする船江六段、面白い観点の回答でした。

馬 強いですので(広瀬章人)
馬 手厚いから(北島忠雄)

角の成駒で文句なしに強いのですが、角は好きじゃないんでしょうか……
 

以上、棋士の好きな駒をご紹介しました。棋士によって好きな駒が違うのも面白いですね。

桂馬の動きが面白いから好きと回答した三浦弘行九段
桂馬の動きが面白いから好きと回答した三浦弘行九段