新型コロナウイルスの感染拡大を受け、わたしたちの生活はほんの数カ月前とは大きく変化しました。在宅ワークが推奨されていることもあり、自身の働き方が変わったという人もたくさんいるでしょう。それだけ大きな変化のあとにはどんな時代が待っていて、そのなかで若いビジネスパーソンたちはどのようにキャリア構築をしていけばいいのでしょうか。

  • 「僕が」「わたしが」を主語にする思考が、これからのキャリアを変える/株式会社圓窓代表取締役・澤円

Yahoo!アカデミア学長・伊藤羊一さんとの共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)が話題の、株式会社圓窓代表取締役・澤円さんがアドバイスをしてくれました。

1995年以来、世界同時に起きた大きな変化

いま、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大きく時代が変わっていることをみなさんは感じているでしょう。世界同時にこれだけ大きな変化が起きたのは、1995年以来のことだとわたしは思っています。

1995年は、「Windows95」がリリースされ、「インターネット時代元年」ともいわれた年。誰もが簡単にインターネットに接続できるようになり、世界は一変しました。

ただ、今回のものは、残念ながら新型コロナウイルスというネガティブな事象による変化です。その反面、ネガティブであるがゆえに、そこから回復し、上に向かって進んでいけるという見方もできるのではないでしょうか。世界中が混乱を極めるなか、どのタイミングでいかに回復するかということが、全人類に問われています。

もちろん、「ピンチはチャンス」だとか、「この時代だからこそできることがあってすてきだよね」なんてことを軽々しくいうつもりはありません。そもそも命に関わる話ですし、本当に大変な思いをしている人もいますからね。

しかし、時間は進んでいくし人生は続くと考えると、とにかく回復を目指す必要があります。そのなかで自分はどう考えるのか、どう行動していくのかということを自分自身に問うしかないと思います。

コロナ終息後にどんな働き方、生き方を目指すのか

大きく変化している時代のなか、やはりビジネスパーソンたちの多くが感じているのは、「働き方」の変化でしょう。これまで常識やあたりまえとされていたことも、じつはそんなに必要ではなかったということがバレてしまったという見方もできます。「出勤」なんてその最たるものではありませんか? 

これまでは多くの人があたりまえのように満員電車に揺られて出勤していましたが、「会社に行く=仕事をする」ことではないということがわかりましたよね。

会社に行くだけで仕事をした気になっていた人も、「自分はただ会社に行っていただけだったんだ」と気づき、自分に嘘をつけなくなっているはずです。その一方で、自分が会社に対して提供している価値と通勤がまったくリンクしていなかった――要するに会社に行かずとも大きな価値を生めるということに気づいた人もいるでしょう。

そうして多くの人が働き方について考えているいま、新型コロナウイルスが終息したところで、働き方が元通りになることはないし、そうする必要もないとわたしは思っています。そのなかで以前と変わらず他人が決めたやり方に従うような働き方を選ぶのか、あるいは自分で新しい働き方、引いては生き方を模索していくのか。それはもう、自分次第ということになっていくでしょう。

いつでも自分から発信できる「Ready」の状態を保つ

では、そんな時代の狭間ともいえるいま、これからの時代を支える若いビジネスパーソンたちはどのようにキャリアを構築していけばいいのでしょう。わたしからお伝えしたいのは、まずは会社や上司など外部からの評価基準などは一度忘れて、それこそ自分の働き方、生き方をじっくり考えてほしいということ。

自分はどうあるのがいちばん満足できるのか、のちに人生を振り返ったときに後悔しないのかということを考えるのです。

さらに、そういう人生を歩むために、自分になにができるのか、なにをしたいのかということを考え、「わたしはこういうかたちで世の中に貢献できる」というふうに、いつなんどき誰に問われても答えられるように準備してほしい。

そして、それを実現に近づけるためには、なによりアウトプットしていくことが大切となります。いまなら、たとえば「ZOOM」などのウェブ会議ツールを使って、さまざまな業種の人が集まるオンライン飲み会に参加している人もいるでしょう。

そこで、「あなたはなにをしている人ですか?」「どういうことをしたいのですか?」と聞かれたら、即座に答えてください。あるいは、画面共有で見せられるようなコンテンツなどを持っていたら、相手に即座に見せるのです。

過去の価値観や常識がリセットされ、正解が固定化されていない状態にあるいまだからこそ、逆にのちの大きなビジネスにつながるようなチャンスも多いとも考えられます。自分からいつでも発信できる「Ready」の状態を保ち、そういったチャンスを逃さないようにすることが大切です。

もっといえば、若い人ほどチャンスが多い時代です。いまは、濃淡こそあれど、あらゆるビジネスが厳しい局面に置かれ、経営の舵取りがむずかしくなっている状況です。つまり、経営層の人間は、役に立たない従業員を切り捨てる免罪符を手にしている場面にあるのです。

では、どういう人が切り捨てられていくのかというと、会社に行くだけで仕事をしている気になっていたような人たちです。そういう人の多くは、立場だけ上になって実務でそれほど大きな貢献ができていない中高年に比較的多いと考えられます。そういう人たちが淘汰されていくと予想すると、まさに若い人たちにとってはチャンスですよね。

「会社が」ではなく「わたしが」と自分を主語にして考え行動する

もちろん、若いという理由だけで生き残ることはできません。これからの時代には、これまで以上にあらゆるビジネスの場でITが必須となるでしょう。ですから、少なくともIT音痴でいては駄目。デジタルデバイスでも新しいテクノロジーでも、とにかく片っ端から触れてみて、あたりまえのように使えるようにしておくのは生き残るうえで基本中の基本でしょう。

これはもう必須のことで、すべての話はそれからです。

あらゆるITツールに触れたうえで、自分からなにか発信する「勇気」を持ってください。これまでの日本の企業には、「もっとこうしたい」といった個人の想いを持ちながらも、勇気がないばかりにそうできなかったという人が多かったように見受けられます。

なにかしたいことがあっても、「会社が……」というふうに会社を主語にして考えてしまっていたのです。しかも、そういう企業では、そのように会社を主語にして考える人が評価される傾向にありました。

だけど、そんな考え方はもう価値を失います。なぜかというと、新型コロナウイルスというとんでもない外敵に対して、ほとんどの企業がすぐには手を打てなかったからです。ならば、今後はもっと「自立的に困難に向かって立ち向かえる人」こそが、あらゆる場面で求められるようになると考えられます。

そういう力を得るためにも、「僕が」「わたしが」というふうに自分を主語にしてものごとを考え、行動することが大切なのだと思います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/榎本壯三