現在、自身は2匹の愛犬を飼っているが、いずれも動物愛護センターから引き取った保護犬だ。
「2012年に千葉の愛護センターを初めて取材したんですが、殺処分されてしまう部屋などを見て悲しくてしょうがなくて、ずっと泣いてたんですよ。そしたら、保護団体の方に『あなたが泣いても助けられないんだよ。1匹でも洗ってみなさい』と言われて、実際に“最終部屋”にいた子を洗ってみたんです。そしたら、その子が私に懐くようなふりをしてきたので、洗い終わったときに『すいません! 私、この犬もらいます』とお願いしたんです」
その懇願に対し、「1匹洗っただけで、そういう衝動で犬をもらう人が一番悪い」と怒られながらも、検査や自宅環境などを精査された上で、無事飼えることになったのが1匹。もう1匹は、広島の愛護センターから引き取ったのだという。
今回の番組で、太田さんは花子の存在について「僕のすべて」と言っているが、山田氏に同じ質問をぶつけてみると、「私も、すべてかもしれませんね」と回答。
「前の犬が死んだときは、一緒に死のうとか思っちゃいましたからね。親が死んだときよりも悲しかったくらいで、ある女優さんのマネージャーさんに紹介された霊媒師に見てもらったら、『犬が死んだくらいでそこまで落ち込むというのは、あなたのこれまでの人生が間違ってからでしょう』なんて言われて、さらに落ち込んだりしましたから(笑)」
■「思いを込める」石田ゆり子のナレーション
今回、ナレーションを担当する女優の石田ゆり子も愛犬家として知られ、『犬と猫の向こう側』に続いての起用となるが、「読んでいるときに思いを込めてもらえるので、すごく良かったですね」と信頼を寄せる。
ロンドンの獣医師に会いに行った際は、番組ロケでもないのに「私の犬がなぜ死んだのかを究明する番組を作ってるつもりで付き合ってほしい」とコーディネーターを雇い、番組1本分の費用をかけたほど、犬に対して深い愛情を持つ山田氏。
そんな彼女が取材した今回の『ザ・ノンフィクション』は、2週にわたって放送されるが、10日放送の前編の見どころを聞くと、「太田さんという動物の命に対して本当に真摯(しんし)に向き合う人の地道な活動を、丁寧に撮ったつもりなので、そこを見てもらえたらと思います」と話している。
●山田あかね
東京生まれ。早稲田大学卒業後、テレビ制作会社勤務を経て、90年からフリーランスのテレビディレクターに。現在は(株)スモールホープベイプロダクション代表。『ザ・ノンフィクション』では、『1000匹の猫と寝る女』『お金がなくても楽しく暮らす方法』『会社と家族にサヨナラ ニートの先の幸せ』『犬と猫の向こう側』などを制作し、『むっちゃんの幸せ~福島の被災犬がたどった数奇な運命~』(NHK)、『家族になろうよ』(NHK BSプレミアム)など、犬猫をテーマにしたドキュメンタリー番組を手がける。『犬に名前をつける日』(キノブックス)、『犬と猫の向こう側』(扶桑社)などの著書もあり、映画『すべては海になる』(10年)、『犬に名前をつける日』(15年)では監督・脚本を務める。