社会に出ると、周りに保険の加入を勧められることがあります。「社会人なのだから、保険くらい入っておかないと」と考える人も多いでしょう。しかし、保険に入っていれば何でも良いというわけではありません。中には、新社会人は不要な保険もあるのです。「保険に入るのは当たり前」「加入しておけば安心」という理由でなんとなく保険に入ってしまうと、自分には必要のない保障に余計なお金を払うことにもなりかねません。そこで本稿では、新社会人に必要な保険、不要な保険について解説します。

  • 新社会人に必要な保険、不要な保険とは

    新社会人に必要な保険、不要な保険とは

新社会人に必要な保険と不要な保険

新社会人には、どのような保険が必要なのでしょうか。それにはまず、「保険に加入するのはどんな時なのか」を考えてみると分かります。保険とは、保険料というコストを支払って保険会社から必要な保障を買う、という商品です。生命保険の場合、「死亡保障」や「医療保障」を買います。死亡保障は、被保険者(保険の対象となっている人)が亡くなった時に保険金がもらえるもので、医療保障は、入院した場合などに給付金がもらえるものです。

たとえば、あなたの収入で養うべき家族がいる場合、仮にあなたが亡くなったとすれば、残された家族は生活に困ってしまいます。そうした事態に備え、保険料を支払って万が一の時に保険金を受け取れる保障を買うのです。このように、保険は「入っていれば安心」という漠然とした目的で加入するものではなく、死亡保障であれば「あなたが亡くなった時、経済的に困る人がいる」という場合に加入し、備えておくものなのです。

となると、一般的に、社会に出たばかりのみなさんに死亡保障は必要ないでしょう。自分の収入で親や子どもを養っているなら別ですが、そうでない場合、死亡保障は不要と言えます。反対に、将来結婚してあなたが働いて家計を支え、子どもが生まれたとすると、死亡保障が必要になります。あなたが亡くなると、その先の生活費や将来の教育費などで、経済的に困る人ができるからです。それまでは、「必要最低限の医療保障」だけ備えておけば充分です。

新社会人に必要な医療保障とは

医療保険は、原則として、入院または手術を受けた時に給付金がもらえるものです。入院給付金は「入院したら日額5,000円」、手術給付金は「手術を受けたら1回につき10万円」というように、お金が受け取れます。このような保障が受けられる医療保険は、民間の保険会社で販売されていますが、実は、みなさんはすでにとても優れた公的医療保険に加入しています。それは、「健康保険」です。この健康保険によって、病院などの医療機関で診察や治療を受けた時には、自己負担が3割で済んでいるのです。さらに、健康保険では、自己負担が大きくなり過ぎないように、「高額療養費」という制度が設けられています。これは、医療費の自己負担に上限を定めるもので、1カ月の医療費は多くても約9万円以下に抑えられるのです。

こうした制度が利用できるみなさんは、民間の医療保障をむやみに手厚くする必要はありません。基本的に、病気やケガの時に頼れるのは健康保険、そして、どのような用途にも使える「貯蓄」です。民間の医療保障は、「入院と手術に備える最低限の保障」だけ持っていればいいのです。そもそも、病気やケガになった時には、通院の治療で済んでしまうことがほとんどでしょう。一般的な民間の医療保険は、通院は保障の対象外であることを考えても、過度な保障は要らないのです。入院給付金、手術給付金ともに最低限の保障にとどめ、特約を付けずシンプルなものを選びましょう。入院日額なら、5,000円あれば充分です。必要な分に保障を絞り、さらに、保険料が格安になるネット生保で申し込むのがおすすめです。

会社の制度も合わせてチェック

また、新社会人のみなさんのように会社員であれば、会社の健康保険に「傷病手当金」という制度があります。これは、病気やケガの療養のため仕事を休んでいる間、健康保険から所定の手当金が支給される制度です。傷病手当金は、以下の4つの条件に当てはまる場合に、支給開始から最長で1年6カ月支払われます。

・業務外の事由で療養を要する病気やケガをした
・病気やケガのために業務に就けない
・連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった
・病気やケガで休んでいる間に給与の支払いがない

なお、受け取れる傷病手当金は、下記の計算式で求めることができます。

(支給開始前の過去12カ月の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3=傷病手当金の支給日額

また、大手企業などでは、健康保険組合で独自の給付を行っていることがあります。その場合、さらに手厚い保障が受けられますので、自分が加入している健康保険組合のホームページなどで内容を調べてみましょう。

必要のない保険でお金を無駄使いしないように

社会に出たからと言って、必ずしも、周囲から勧められた保険が必要とは限らないことがお分かりいただけたでしょうか。保険は漠然とした目的やただ安心を得るために加入するものではなく、まずは今自分が持っている保障を確認し、それを補完する保障を備えれば充分なのです。必要のない保険に入ると、その分お金が無駄になります。保険料を支払う期間が長くなればなるほど、その金額は大きくなります。だからこそ、新社会人のうちに、自分に本当に必要な保険は何なのか、見極めることが大切なのです。

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント
会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中