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――主演の松下奈緒さんとは、『鴨、京都へ行く。―老舗旅館の女将日記―』(13年)以来ですね。

あのドラマでは高飛車なキャラクターだったんですけど、今回は松下さんが持つ柔らかさがそのまま出るようなものが見たいなと考えました。それで、最初に考えた企画の女性にぴったりだなと思ったし、今までとは違うシャープすぎないソフトな女性像みたいなものが出せればいいなと思いました。

――木村佳乃さんは太田さんの作品で、『泣かないと決めた日』(10年)や『名前をなくした女神』(11年)、『ファーストクラス』(第2期、14年)など、何かを抱えている役が多いですが、意識してキャスティングされたのですか?

佳乃さんは複雑な難しい役だったりしても、絶対に“陰”にはならないんです。何かを抱えて複雑になればなるほど、内にこもってしまうのではなく、それをも超えて華が持たせられる女優さんだと思っているので、まだキャスティングが決まる前の段階から佳乃さんを想定して考えていました。

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■サウンドトラックへのこだわり

――今回はサウンドトラックも素敵で、太田さんがプロデュースした『モンテ・クリスト伯』と同様に、英語詞のボーカル付きの曲が印象的です。

サウンドトラックはとても重要なファクターですよね。『モンテ・クリスト伯』の西谷(弘)監督が以前手がけた『昼顔』を見たときに、青木カレンさんが歌う「Never Again」という曲が印象に残っていたので、西谷監督と一緒にやるときはボーカル付きのサントラをやりたいなと思っていました。今回の音楽を担当している眞鍋(昭大)さんとは『モンテ・クリスト伯』のときに初めてお会いしたんですが、すごいメロディーメーカーの方だなと思ったので、今回もボーカル付きの曲をお願いしました。

――監督の高野さんは『昼顔』も手がけていらっしゃいますよね。

その作品で高野も西谷から教えを受けたりしているので、最初からそれはやろうねって話はしていて、それで『昼顔』も『モンテ・クリスト伯』も『シャーロック』も、ボーカルが青木カレンさんという方なんです。だけど今回はちょっと違う感じにしようと思って、高野がジャニス・クランチさんというボーカリストを探してきたんです。それで眞鍋さんとセッティングして「The Light」という曲ができ上がりました。ボーカルが入るとドラマの体温が上がるし、今回は特に主題歌が須田景凪さんという男性なので、女性のボーカルが入ると映えますよね。

――今回のセットを担当しているのは太田さんがプロデュースした前作『シャーロック』と同じ柳川和央さんですが、セットの見どころはありますか?

医療ドラマで全て取材に基づいた設計になっているので、『シャーロック』のように柳川さんの色がなかなか出せない部分もあるかなと思ったんですが、腫瘍内科の医局は2階建てにしているんです。そういう施設のセットで立体の空間を出すことを僕自身は見たことがなかったので、そのあたりが面白いなと思いました。

  • 松下奈緒(左)と木下ほうか (C)フジテレビ

■最終回は「ちゃんとした結実になる」

――最後に最終回の見どころを教えていただきたいところで、主人公2人のお話はもちろんなのですが、個人的に気になっているのが、高畑淳子さんが演じる民代さん、北大路欣也さんの京太郎さん、そして佐倉さん(小川紗良)と結城先生(清原翔)の物語が今後どうなるのか、すごく気になっています。

最終回は、今おっしゃっていただいたところもじっくり見ていただけると思います。特に北大路さんは、普段京太郎さんのようなおじいちゃんの役をやっていらっしゃるイメージがないと思うんですが、今回は企画にも賛同してくれて、面白い役だとおっしゃってくださっています。

僕らとしては京太郎さんというキャラクターは本当に精神的支柱みたいな存在なんです。脚本家という設定で、柔軟な考えを持っているし、ちゃんと傷つくときは傷つくし…という、とても人間らしい今の時代にちゃんとアップデートされた初老の男性です。そんな彼の姿を描くこと自体が、いろんな希望を見せられるという信念があるんです。だから北大路さんの優しい一面を存分に引き出せるようにできたらいいなと思って作ってきたんですけど、最終回はその真骨頂という感じになっていると思います。

もちろん、他のキャラクターに関しても、全部重要ファクターなので、ちゃんとした結実になる最終回になっていると思います。

  • 清原翔(左)と岡崎紗絵 (C)フジテレビ

●太田 大
1979年生まれ、東京都出身。03年フジテレビジョンに入社し、報道局に配属。その後編成部で『名前をなくした女神』『テラスハウス』『ファースト・クラス』などを手がけ、第一制作室に異動して『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』『シャーロック』『アライブ がん専門医のカルテ』といったドラマのほか、現在はNetflixで配信中の『テラスハウス』シリーズのプロデュースも引き続き担当している。