――これまで「男の子向け」と一般に言われてきた特撮ヒーロー作品ですが、昔から女の子のファンも積極的に取り込もうとする動きがありましたね。最近では、いわゆる大人の特撮ファンの中でも、男性ファンだけでなく女性ファンの行動がいっそう活発化している印象があります。作品研究・分析なんて、男性よりも女性のほうが鋭い視点を持っていたり、作品への情熱が強かったりすることがあります。荒川さんも"送り手"の立場から、そんなことを感じられたりしませんか?

ファンの構造そのものがだんだん変わってきたなという印象はあります。特撮ヒーロー作品でいうと、小林靖子さんや妹弟子の香村(純子)がメイン(ライター)を張るようになったりしたことも、女性ファンのみなさんの深化を促進している一因じゃないでしょうか。女性と男性ではヒロイズムも違うところがあると思うし、より女性ファンの方々にフィットするヒーロー像を描けてるのかもしれません。それが我々男性にとっても新鮮だったり。東映に脚本職で採用されて戦隊シリーズに参加されてる金子さんも下さんも女性ですし、色んな意味でヒーロー像が多様化していく気がします。これからも男女問わず、特撮ヒーローの世界を多くの方々が好きになってほしいですね。

――荒川さんが書かれる「スーパー戦隊シリーズ」のシナリオは、シリアスなテーマを追い求めるエピソードがある一方で、キャラクターコメディーの楽しさを打ち出したギャグ満載エピソードがあるなど、バラエティに富んだ作風が魅力だと思います。これは、荒川さんが敬愛されている脚本家・上原正三さんにも通じるものがありますね。上原さんは惜しくも今年の1月2日に帰らぬ人となりました。生前の上原さんが「若い作り手がそれぞれの時代にあったヒーローを作り続けていくのを応援している」とお話ししていたように、上原さんから荒川さんたちへと「スーパー戦隊シリーズ」の魂が受け継がれているような気がします。

上原さんは本当に凄い方です。スーパー戦隊の元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』や、メタルヒーローの第1作『宇宙刑事ギャバン』(1982年)など、いくつもの人気シリーズの"立ち上げ"から携わっているパイオニアですからね。僕たちは上原さんたちが作り上げられたものを"踏襲"しつつ、常に"新しい息吹"を加えようと、ひたすらがんばっていますが、僕個人は精神性の高さとかダイナミズムという点でなかなか及ばないような思いがありますね。これからは僕たちより若い年代からも、次の"時代"を作ることのできる人材が育っていけばいいなと願っています。僕もまだまだ頑張りますけどね(笑)。

――『キラメイジャー』としてこれから1年間活躍していく5人のヒーローたちに、荒川さんはどのような期待を込められているでしょうか?

5人そろったビジュアルを見たとき、バランスがとてもいいと感じました。4人がすでに各方面で実績をあげ"キラキラ"している中、未知数の可能性を持つレッドが真ん中にいて、これから彼らの"成長"していく過程が見られるかな、と楽しみにしています。充瑠を演じる小宮璃央くんは、オーディションで会ったときと、撮影が始まって数日経った今とでは、顔つきがかなり変わってきてすごく"いい顔"になっていました。やっぱり17歳という年齢は、いろいろなことをオンタイムで経験して、グイグイ成長していくものなんだなと実感しています。彼がこれから、どんな変化・成長を遂げていくのかを見ていくだけでも、1年間ものシリーズを手がける醍醐味を感じますね。

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