写真家で映画監督の蜷川実花による、Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』が27日より配信中だ。SNS社会において直接的、間接的に影響し合っている人々を、現在の“TOKYOのリアル”を交えながら描いた同作では、主人公の人気写真家・奈良リミ役を中谷美紀が演じ、女優を夢見て上京し挫折を味わいながらも成長していく百田なつめを池田エライザが演じる。

今回は、リミの友人・田嶌エリコ役の夏木マリにインタビュー。1人息子を育てながら実業家として活躍するエリコは、20代のパーソナルトレーナー・野尻季生(笠松将)との恋も楽しむ。そんなかっこいい女性を演じた夏木に、撮影の裏側や、SNSへの考え方、年下男子との恋愛観などについて話を聞いた。

  • Netflixオリジナルシリーズ『FOLLOWERS』に出演する夏木マリ (写真:マイナビニュース)

    夏木マリ 撮影:宮田浩史

■SNSと向き合う時代に感じること

――作品のオファーが来たときには、どのような印象を持たれましたか?

主人公のリミが売れっ子カメラマンということで、「蜷川実花さんみたい」と思ったら、実花さんが監督の作品でした(笑)。そこが面白いですよね。彼女を描いているわけではないですが、どこかノンフィクションというのか、彼女の生活、日常を覗き見るみたいな感覚で、今、SNSから社会を覗いている感覚とも通ずるのかなと思います。

――芸能界のリアルな部分を覗き見ている感覚もありました。実際に「あるある」と思ったところはありましたか?

世の中のフォロワーに影響されていく、(中島)美嘉ちゃんが演じる歌手のsayoなんて、まさにそうですよね。表に立ってる人間には、少なからずそういうところもあるから、観てくださってる方も面白いのではないでしょうか。

――池田エライザさん演じるなつめたちも、SNSを利用しつつも気にして振り回されてしまうところがありましたよね。一方で、リミやエリコ達は自分を疑わずに進んでいく姿が対比的にも見えました。

なつめたちは、生まれた時からSNSがある人たちですからね。私たちは、SNSを気にしなくても生きていける世代。作中の大人たちは経験で人生の選択をしてきたので、自分らしさをもっている。若い人たちはまだ自分らしさを見つけているところなんだと思います。

――夏木さんご自身もTwitter、Instagramをされていますが、どういう感覚ですか?

もう、ゲームよね。私はインスタを始めてから、ゲームをやらなくなりました(笑)。今まで通りすぎていたものがシャッターチャンスになるし、視点が広がりました。ただ、私たちみたいな仕事をする人と一般の人と、ボーダーがなくなったというところでは、難しい時代だと思います。私たちの仕事って、皆さんに見ていただいて、元気になってもらったりするものだから、一緒の土壌にいる時は、ちょっと気をつけなければいけないと思う時もあるし。

例えば、前だったら道端で「一緒に写真を撮ってください」と言われたら、写真も撮るしサインもしてたけど、この頃はやってないです。申し訳ないけど、その方がどういう方かわからないですから、知らないで一緒に写真を撮って、仕事を失ってしまうなんてことがあるかもしれない。そういう意味では、自分の中で危機管理をするようになりました。でも、もう絶対に付き合っていくものなので、ポジティブに付き合っていきたいと思っています。

――『FOLLOWERS』の衣装もアップされてて、すごく素敵でした。

蜷川さんの世界だし、色の使い方も、ワクワクしますよね。普通のドラマでは着られないようなメゾンのものを着させていただいたので、とっかえひっかえ楽しかったです。

――また、Netflix製作になると普通のドラマと規模も違うのかなと…。

全然違いますね。でも、蜷川さんは豪華なところを見せたかっただけではなくて、今のTOKYOを描きたかったと思うんです。TOKYOに生きている人たちの姿がリアルに見られるし、きっと海外の方が見たいような風景もたくさん入っていると思います。

――夏木さんは、「東京」についてはどういう思いを持たれているんですか?

私は、とにかく東京が好きです。年を重ねて、「田舎もいいかな」と思う時もあるけど、東京で育っているので、ビルや夜景が好き。まさにこのドラマで出てくるような夜景を見ると、非常に落ち着くという女です。だから南の島とかいっても、そんなにゆっくりもしない。時間軸が早く回る日常なので、3週間も4週間も休みを取ったら、東京に帰りたくなっちゃうのよね(笑)。

■意識的に希望していた「おばあちゃん役」

――『FOLLOWERS』では、エリコと季生の恋愛も素敵でした。

この頃、様々な作品でおばあちゃん役ばかりを演じていたので、ちょうど、「女子力を上げなきゃ」と思っていたところでした。エリコではラブストーリーを演じることもでき、撮影はとても楽しかったです。

――おばあちゃん役を意識的に演じていた、というのはどういう理由からだったんですか?

キャリアが長くなると、地上波のドラマで演じる役は、女として生きていく時間が描かれない、”主人公の母”などが多いんです。彼女がどう生きてきたかが、置き去りにされている作品が多い。それはつまらないので、もっともっと長く生きている役の方が、面白いのではないかと思い、希望しておばあちゃん役をやらせてもらっていたんです。でも、気がついたら実年齢でおばあちゃんの役が来るようになったの。きゃ!

――今作では季生との様々な恋愛模様のシーンが描かれて。

私は実年齢よりは少し若い役なので、フレッシュに演じられればと思っていたんですけど、どうかしら?

――どきどきしました。

ありがとうございます(笑)。どうしたら恋してる女に見えるかとか、現場でもいろいろ話し合いました。私もセクシーに動くけど、笠松くんからのアプローチがいいんじゃないか……とか、綺麗に見えるカメラポジションについても、研究しました。ジムで、しかも腹筋のトレーニングをやるようなシチュエーションでしたし。その環境がいいわね。

――年下の男性だと頼りなく感じてしまうんじゃないか、とも思いますが、夏木さんご自身は年下男性との恋愛はどういう印象ですか?

私が過去に年下の男性と付き合った時は、自分がおいしいイタリアンに行きたくても、行かないの。彼に合わせて、餃子を食べに行ったりファストフードを食べに行ったり……男を立てる、いい女なのよ(笑)。私は贅沢を覚えちゃってるから、どうしてもご馳走を食べたい時もあるけど、彼が支払いをする時に「きっと彼女は年上だし、いいものを食べているんだろうな。御馳走できるようにがんばらなきゃ」と思ってくれて、男として成長する可能性もあるでしょ? だから本当はイタリアンを食べに行きたいけれど、彼といたいからラーメンに行く……そんなこともしたりしました。今回の役作りのときも、エリコは季生とそういうこともしたのかな、と思いながら演じました。GUCCIで買い物してあげたりもしていましたけど(笑)

――エリコとの共通点も感じながら演じられていたんでしょうか?

俳優って、準備段階がすごく楽しくて。私が演じる役を好きになったときに、役作りが終わるんです。実業家で、成功している女性で、ちょっと背伸びしているとか、自信を持ってやっているとか、彼女のいいところをたくさん探しました。エリコというキャラクターは早めに好きになれたので、楽しい役でした。自分の信念を持っていて、ちゃんと実績もついてきている。かっこいいなと思いました。

■夏木マリ
5月2日生まれ、東京都出身。出演作に連続テレビ小説『カーネーション』(11年)、ドラマ『ファーストクラス』(14年)、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(16年・19年)、『私、結婚できないんじゃなくて、しないんです』(16年)、『新宿セブン』(17年)、『不惑のスクラム』『中学聖日記』(18年)、『わたし旦那をシェアしてた』『Wの悲劇』(19年)、映画『生きる街』『Vision』『犬ヶ島』(18年)、『男はつらいよ お帰り 寅さん』(19年)などがある。現在、自身のライフワークでもある『印象派NEO』vol.4「The Last of Pinocchioピノキオの終わり」公演を6月に控えている。