キリンビールは4月3日、自然派ビールテイストの炭酸飲料「キリン グリーンズフリー」を全国で発売する。

従来の製法を一新、ノンアルコールビールの枠を超えた炭酸飲料として幅広い層に提案したい考えだ。関係者は「"ビールの代替"という消極的飲料ではなく、積極的に飲料してもらえる製品になった」と話し、市場の反応に期待を寄せた。

  • 自然派ビールテイストの炭酸飲料「キリン グリーンズフリー」が3月31日発売

    自然派ビールテイストの炭酸飲料「キリン グリーンズフリー」が3月31日発売

開発の背景

アルコールを控える動きが世界的な潮流になり、国内でも健康志向が高まる中、キリンビールはノンアルコール飲料カテゴリーにおいて、新たな市場の開拓に乗り出した。新商品を開発した背景についてキリンビールの山形光晴氏が、またグリーンズフリーの特徴について久保育子氏が説明している。

  • キリンビールマーケティング部部長の山形光晴氏(左)とビール類カテゴリー戦略担当の久保育子氏

    キリンビールマーケティング部部長の山形光晴氏(左)とビール類カテゴリー戦略担当の久保育子氏

このカテゴリーで先駆的な役割を果たした「キリン フリー」が発売されたのは2009年のこと。それから10年が経ち、ノンアルコール飲料市場は実に320%(19年/09年比)の成長市場となっている。商品数は13から32にまで拡大。この間、消費者のニーズも多様化したという。

  • ビール類が縮小する中、ノンアルコール飲料市場はこの10年で320%に拡大

    ビール類が縮小する中、ノンアルコール飲料市場はこの10年で320%に拡大

山形氏は「当初は運転があるときなど、ビールが飲めないときにキリン フリー、零ICHIを選んでいただいていた。近年では、健康に気遣う消費者にカラダFREEが選ばれている」と紹介し、健康志向がノンアルコール飲料市場の拡大に貢献したとの見方を示す。これはキリングループが長期経営構想で掲げる「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」という理念とも合致する。

  • 消費者のニーズも多様化。健康志向が市場拡大に寄与した

    消費者のニーズも多様化。健康志向が市場拡大に寄与した

一方で、越えるべき課題も明らかになっている。「ノンアルは、まだビール代替の消極的なイメージが強いんです」と山形氏。ノンアルを飲まない理由として「味が好きでないから」「物足りなく感じるから」といった声が多い。そして「ノンアルコールビールは(アルコールを)飲めないときに飲むものだから」というイメージがつきまとってきた。

  • 「ノンアルはビール代替」という消極的なイメージからの脱却が求められている

    「ノンアルはビール代替」という消極的なイメージからの脱却が求められている

山形氏は「ノンアルをポジティブに選んでもらえる商品に変えていくのも酒類メーカーの責務。現状では緑茶、コーヒー、水の代替品にもなりきれていない」と話す。いかにノンアルの消極的なイメージを払拭して、積極的飲料に変えていけるか。そこで、キリンからの新しい提案としてグリーンズフリーの開発に至った。

  • 「麦とホップと水がくれた自然派ビールテイスト」と銘打たれたグリーンズフリー。3つの原材料を表現する3本のラインが爽やかな印象を与える

    「麦とホップと水がくれた自然派ビールテイスト」と銘打たれたグリーンズフリー。3つの原材料を表現する3本のラインが爽やかな印象を与える

ここでプレゼンを引き継いだ久保氏は、新製品が"日本初"の製法になったと強調する。

「グリーンズフリーでは、香料・人工甘味料を一切、使っていません。香料、人工甘味料を使わないと美味しくなくなる、というのが業界の通説でした。キリン社内でも、繰り返し『不可能だ』と言われ続けてきた」(久保氏)

  • "日本初"の製法を採用した

    "日本初"の製法を採用した

そんな業界の常識をくつがえす判断に踏み切れたのも、キリンの技術があってこそだった。麦の旨味を引き出す温度、条件については「一番搾り」で採用している技術を応用。ホップの爽やかな香りを抽出するために「グリーンラベル」などで使われている技術を応用した。

「まさにキリンビールの技術を結集した商品になった」と久保氏。「"新しいノンアルコール飲料"という見せ方では、普段からビールを飲まない方には手に取ってもらえない。新しいカテゴリーをつくることで、その壁を乗り越えます」と言葉に力をこめる。

  • アルコール0.00%の自然派ビールテイスト炭酸飲料「グリーンズフリー」。350ml缶と500ml缶の2タイプを用意する。価格帯は零ICHIと同等になる見込み

    アルコール0.00%の自然派ビールテイスト炭酸飲料「グリーンズフリー」。350ml缶と500ml缶の2タイプを用意する。価格帯は零ICHIと同等になる見込み

ノンアルコールビールテイスト飲料を飲む人は、ビール類のそれに比べて1/3にとどまっているのが現状。そこに市場拡大の可能性があるとし、2020年のノンアルコール飲料目標を390万ケース(前年121.9%)に定めた。

ビールテイストにした意味は?

質疑応答には山形氏、久保氏が対応した。

ノンアルコールの従来製品との棲み分けについて、山形氏は「零ICHIはビールの味に近づけた製品。カラダフリーは健康、体重を気にされている方に選んでいただける。新製品のグリーンズフリーは、リフレッシュしたいときに気軽に飲んでもらえれば」と説明。

新しい飲み物として提案するならビールテイストにする必要がなかったのでは、という質問に久保氏は「市場調査の結果、ビールの味が好きな人の数は減っていないことがわかりました。ビールの美味しさには報酬感、ご褒美感を含んでいる。人を、そうした気持ちにさせるんですね。とはいえ、ビールの味に近づけたものはビール代替の粋を出ない。そこで新製品には、ビールの美味しさと炭酸の爽快感を取り入れました」と回答した。

※3月19日追記
キリン社の3月18日の発表を受け、内容を一部修正しました。