■テレ東でも女性向けのコンテンツを
――それにしても、テレビドラマとしては攻めた内容の作品ですよね。
前提として、このドラマは「Paravi」の配信コンテンツとしてつくってるんです。地上波の「ドラマパラビ」枠で放送もするけれど、25時35分からという深い時間なので視聴率も正直気にしないですし、家族がいるお茶の間で流れるものじゃないというハードルの低さはひとつありました。
2018年にParaviが始まって、これまではどちらかというと男性視聴者に向けたコンテンツをつくって配信していたんですが、1年経ったところで女性視聴者が多いとわかってきたんですね。ParaviはWOWOWさんとTBSさんと一緒にやっているので、TBSドラマを観に来る方が多くて、そういう結果になっている。それで「テレビ東京でも女性向けのコンテンツをつくってみよう」となって募集がかかり、満を持してこの企画を出しました。テレビ東京らしい女性向けとは何だろうと考えたときに「女性が楽しめるエロ」がいいと思ったんです。結果として、第1話配信後にParaviの再生回数ランキングで1位を獲れました。ユーザー調査によると、圧倒的に20代・30代女子にスマホで観ていただいてます。これは狙い通りでしたね。
――局内では特に問題なく進んだんでしょうか?
ドラマの台本ができあがると審査部というところに持っていって問題がないか確認してもらうんですけど、今回は不安だったので準備稿の2段階前くらいから提出してました。審査部も丁寧に見てくれて、「この言葉は本当は使ったらダメだけど、性を描くこの作品で杓子定規にNGを出すと作品自体を否定してしまうから、今作に限ってはOK」というようなことがいっぱいありました。ありがたかったですね。
――祖父江さんは2013年に『ビッチ』というドキュメンタリー映画を撮っていますよね。現代女性の性に関するインタビュー中心の作品でしたが、一貫してこのテーマにこだわりがあるんでしょうか?
ずっとエロいことしかやってないですね! 好きなんでしょうね。大学時代にやっていた演劇の卒業公演も3人の女の子の性と日常を描く内容だったし、『ビッチ』もそうだし、ADをやっていた『極嬢ヂカラ』や、ディレクターだった『おしゃべりオジサン』でも女性と性をたくさん扱ってきましたから。
――"女性と性”というと、テレビだとどうしても男性目線で「こんなエロい女がいる」みたいに描かれがちだと思いますが、そうではないものをつくりたい?
そんなのはもう古いし、ダサいでしょう。『来世ちゃん』も第1話放送後に「全然エロくないじゃん」と言っている人はいましたが、最初からそんなもの作ろうとしてないから! という感じです。多分、これまでテレビで男性に消費されるエロさってビジュアル的なものや品のないものだったと思うんですが、多くの女性が求めるものはそうじゃないですよね。もちろん、女性がビジュアル的にエロいものを消費するのが悪いなんて全然思ってないですし、私もそういう漫画やAVを見ますけど(笑)。『来世ちゃん』は、思想と言葉でとてつもなくエロいものを描いてると思ってます。それが、テレビでできる女性のエロのあり方のひとつかな、と考えています。
(C)テレビ東京
■祖父江里奈 プロデューサー
1984年生まれ、岐阜県出身。2008年テレビ東京入社。『おしゃべりオジサンと怒れる女』『モヤモヤさまぁ~ず2』『YOUは何しに日本へ?』などを担当したのち、ドラマ部へ。『よつば銀行 原島浩美がモノ申す! ~この女に賭けろ~』『きのう何食べた?』などに携わる。