現在、テレビ東京ドラマパラビ枠にて放送中の『来世ではちゃんとします』(毎週水曜25:35~)。CG制作会社「スタジオデルタ」を舞台に、主人公で5人のセフレがいる性依存系女子・大森桃江(内田理央)、彼氏いない歴=年齢のBL大好き処女・高杉梅(太田莉菜)、無責任に女性を弄ぶ魔性のイケメン・松田健(小関裕太)、過去のトラウマから処女しか愛せなくなった面食い・林勝(後藤剛範)、風俗嬢にガチ恋し収入のほとんどを貢ぐ男・檜山トヲル(飛永翼)と、5人の若者たちを描く。
過激な用語が飛び交うこともある同作だが、あくまでもコメディとしてクスッと笑える仕上がりに。個性的なキャラクターのどこかに「あるある」と共感できるような絶妙なラインで視聴者からの支持を得ている。今回は、同局の祖父江里奈プロデューサーに、企画の裏側やキャスティングなどについて話を聞いた。
■あくまで、切ない女性の恋心を描く
――ドラマを拝見して、「キャスティングが大変だったのでは……」とまず思いました。
大変でした(笑)。
――主人公の桃ちゃんからして、セフレが5人いてそのうちのひとりに片思いしているという、これまでの内田理央さんのイメージにはない役ですよね。なぜ内田さんをキャスティングされたんでしょうか?
桃ちゃんの役は、とにかく女性に愛されないとダメだと思っていました。だから、どこか友達にいそうで親近感が持てる女優さんがいいな、と。女性好感度の高い女優さんというのを第一に考えたときに、真っ先に浮かんだのが『おっさんずラブ』のちずちゃんを演じていた内田さんだったんですね。最初に企画書を送ったときは「なかなか過激な企画ですね……」とマネージャーさんに言われました(笑)。そこから、「過激な言葉は並んでいるけど、あくまで切ない女性の恋心や現代の多様な性のあり方、ひいては生き方を描くドラマなんです」とご説明させていただいて、ご理解いただきました。
――小関裕太さんが桃ちゃんの同僚でヤリチンの松田を演じていたり、塩野瑛久さんがセフレのAくんを演じたりと、旬な俳優さんがだいぶ過激な役をやっているのもおもしろいです。
一緒に制作している大映テレビの女性プロデューサー・熊谷理恵さんと、「みんなで好きなイケメン全員出そうぜ!」と盛り上がりました(笑)。特に今回こだわったのが、「ネットで話題になりそうな人」という点なんです。もともと原作コミックはTwitterから火が付いた作品ですし、このドラマは特に配信で観てくれるファンを獲得したかった。ネットの拡散力、そのパワーがほしいな、と。小関さんはストレートな恋愛映画のイメージが強いので、こんなヤリチン野郎を演じてくれたらすごく世間に驚かれるだろうなと思ったんですよ。ビジュアルも原作の松田と近いですし。ご本人も「新しいタイプの役をやりたい」とおっしゃってくれて、すごく楽しそうに演じてくださいましたね。
塩野さんは……これを言うのはちょっと恥ずかしいんですけど、映画『HiGH&LOW THE WORST』で私自身が完全に“小田島の女”になってしまい……。そんな描写は一切ないのに、小田島(有剣)は危険な匂いというか官能的な魅力があふれていて、一部の女子に深く刺さって広がっていくエネルギーがありましたよね。その塩野さんがAくんを演じてくださったら絶対にハマると思ったんです。というか、「この人が演じるAくんをまず私が観たい」と思いました。
――小田島の衝撃はここにも及んでいたんですね。ほかにも、演劇畑の後藤剛範さん(林役)や、ラバーガール・飛永翼さん(檜山役)、令和喜多みな実・野村尚平さん(セフレCくん役)、おばたのお兄さんといった芸人さん(Eくん役)、ベッド・インの中尊寺まいさん(セックスカウンセラー・ベロニカ役)など、テレビドラマでおなじみというわけではない方々が多数出演されています。
キャスティングを考えるとき、役に合っているかどうかというのは大前提として、「縁」と「趣味」を大事にしてるんです。後藤さんに関しては趣味ですね! 実は一番最初に出演が決まったのは後藤さんなんです。今回脚本をお願いしているペヤンヌマキさんの『エーデルワイス』という舞台で、筋肉とセックスのことしか考えていない体育会系の男の役を演じていてすごく良かったのが頭の中にありました。私も同世代で大学生の頃に演劇をやっていて、 後藤さんが所属していた劇団(国分寺大人倶楽部)をずっと観ていたんです。あの見た目なので映像の世界では半グレとかヤクザみたいな役をよく演じられているんですけど、舞台だと「怖そうだけど心が優しい弱いやつ」みたいな役が多いので、それを映像作品で出したいな、と前から思っていました。
「縁」でいうと、今回は飛永さんですね。檜山のキャスティングをどうしようかと考えていたとき、たまたま人力舎のマネージャーさんがラバーガールのチラシを持ってきてくれたんですよ。その宣材写真が檜山そっくりで、「いたじゃん!」と。ラバーガールのお二人は『SICKS ~みんながみんな、何かの病気~』にも出ていたし、コントの方だから演技はできるとわかっていたので、それで決めました。
私がバラエティ出身なので、俳優さんじゃない人の起用に抵抗がないというのはありますね。役者さん以外の方が演じることによって起きる面白さ、化学反応を楽しむ気質があるというか。その影響もあると思います。
――それにしてもかなり幅広いですが、普段からいろんなジャンルの方をチェックしてるんですか?
いろんな人にキャスティングの相談をするんですよ。私は正直いろんな俳優さんを詳しく知っているわけではないし、バラエティにいたくせにお笑いも詳しいわけではないので、「こんな役にハマる人を探してるんだけど、誰かいない?」と聞きまくります。今回も、野村さんはお笑い好きな友人に推されましたし、女装男子の凪ちゃん役は佐久間(宣行)さんに相談したら「今アツいのはゆうたろうだろ!」と言われたのが決め手の一つになりました。
――ゆうたろうさんの凪ちゃん、めちゃくちゃかわいいです。
凪ちゃんのキャスティングは肝になると思っていたので、かなりいろんな候補を考えました。現役でニューハーフAVに出られてる男の娘に会いに行ったり、ネットで人気の女装男子を調べたり。ゆうたろうさんが「おもしろいですね」と言ってくださって、良かったです。三木(康一郎)監督はゆうたろうさんに、「無理に声を高くしたり、女の子っぽく振る舞ったりしなくていい」とアドバイスされてました。
――キャスティング以外のところで、4コマの群像劇という原作マンガを映像化するにあたって、気をつけたポイントはどんなところですか?
まず、キャラクターのイメージを崩してはいけないというのが第一にありました。特に桃ちゃんですね。ともすれば、原作を知らずに「エロいドラマなんだろう」「主人公もエロい女なんだろう」という目線で見始める人もいると思うんですが、それは違うんですよ。桃ちゃんは「私、ヤリマンです!」と人生謳歌しているんじゃなくて、とっても優しくて傷つきやすくて、周りの目をすごく気にして悩みながら不器用に生きている。そこを殺さずに丁寧に描こうと思いながらつくっていました。
同時に、それでいてコメディにするバランス感覚の難しさはありました。内田さんもそこですごく悩んでいて、何回も相談されたし話し合いました。特に、太田莉菜さんが演じる梅ちゃんとの1話のラストシーンは苦労しました。桃ちゃんはヤリマンで梅ちゃんは処女だけど、それとは一切関係なく二人の間には信頼関係がある。だから絶対にバカにするようなニュアンスは出したくないけど、コメディとしての面白さもなければいけないとなったときに、梅ちゃんの「処女だから」という発言に対するリアクションをどう演じたらいいのか、内田さんはだいぶ悩んでいました。結果、桃ちゃんがヘラヘラしているあの空気がつくれたことは、本当に良かったなと思ってます。太田さんは三木監督がその演技力を信頼していたのがキャスティング理由のひとつだったので、さすがでしたね。
――塩野さんも、インタビューであのシーンが好きだと言っていました。
あれはドラマオリジナルのシーンなんですよ。実は原作では梅ちゃんが「私、処女だから」と桃ちゃんに直接言う場面はないんです。ドラマ的な面白さを出すために、ペヤンヌさんと三木監督と相談しながらつくりました。