• 永野ディレクター(左)と高須ディレクター

――今回の取材で、悪性リンパ腫について調べたり、笠井さんに密着したりすることで、この病気への印象が変わった部分はありますか?

永野:最初はやっぱりものすごくショックだったんですけど、私の中で、なぜか彼は大丈夫っていう気持ちがどこかにずっとあるんです。もちろん、大変な病気なのは分かってるんですけど。

高須:笠井さんがこの病気になって、自分の周りに悪性リンパ腫を克服して、今普通に生活してる方が3~4人いるのを知ったんです。それで、イメージは変わってきましたね。それと今回の密着は、笠井さんの苦しい場面を見せるものになると思ったんですけど、取材していくうちに、笠井さんが同じ病気を患っている方に何かメッセージを届けるお手伝いができればと思うようになったんです。闘病生活のドキュメンタリーではあるんだけど、その方向性が変化してきましたね。同じ病気を抱えている方には、すごく励みになってると思うので、番組を見て、力がもらえるような放送ができればいいんじゃないかなって思うようになりました。

――番組への反響はいかがでしょうか。

高須:「私の家族も同じ病気です」という方から、手紙やメールでメッセージが届いています。「うちはこうだったから笠井さんにぜひ伝えてほしい」というお手紙もいただいて、その反響も笠井さんには伝わっています。

永野:ブログやインスタのコメントも、「私も同じ病気です」とか「知り合いがこの病気なんです」という人が圧倒的に多いって本人が言ってましたね。「ブログを始めたら応援してもらえるんじゃないか」って冗談めかしてましたけど、予想以上に応援のコメントが届いて、彼の力になってますよね。取材の際、コメントを見て、涙を流しているときもありましたから。

高須:そうでしたね。

――笠井さんから、密着取材の放送を見ての感想などは聞いていますか?

高須:電話で「ありがとうね、よくできてたよ」って言ってもらいました。

永野:あと、「こんなに俺出ていいのかな?」って心配もしてました(笑)。そんなこと言いながら、この密着を放送する日は、OAの直前に「スタジオでこれ入れてほしいんだよね」って指示が来るんですよ。「間に合わないです」って言っても、経験上、間に合うことが分かってるから、こっちが逃げられないんです(笑)。だから、今も変わらず、一緒に番組を作ってる感じですね。それはうれしいです。

――本当に、根っからの制作者ですね。

永野:ただ、今までは一緒に制作者としてやってきたんですけど、今回はこっちがディレクターで、彼は撮られる方っていう違う感覚もあると思うんです。それでも、やっぱり一緒に作ってるっていう感じもあって、いまだに不思議な感覚で取材をしていますね。

――“監督兼主演”みたいな感じですかね?

永野:そうですね(笑)

高須:たしかに(笑)

  • フジテレビ退社直後にマイナビニュースのインタビューを受けた笠井アナ

■「笠井さんは絶対克服できます」

――笠井さんと身近で、なおかつ取材者と取材対象者という関係だと、なかなか対面したときに言えないこともあるかと思うのですが、最後にこの記事を通して、笠井さんにお伝えしたいことをお話ししていただければ。

永野:もうこっちに気をつかわなくていいよって思います(笑)。何よりも自分のこと、体のこと、病気のこと、治療のことを考えてほしいっていうのは、私や高須だけでなく、スタッフの総意だと思うので。ただ、その中で彼は、テレビマンとして世の中の人に伝えようとしているので、同じ病気の方や、そうでなくても笠井信輔っていう1人の男の闘病を通していろいろ感じられるものを、きちんと伝えていけたらと思います。

高須:以前、笠井さんに「血液のがんと言っても、最近は薬も良くなってるし、絶対克服できますよ」って言ったら、「高須さん、それみんな言うんだよねぇ」って言われたんですよ(笑)。じゃあ何を言ったらいいのかなってそのとき困ったんですけど、本当に僕はそう思うんです。また面と向かって言うと同じように言われてしまうので、「笠井さんは絶対克服できます」って言いたいですね(笑)

永野:昨日も取材のことで電話がかかってきて、最後に「体調大丈夫ですか?」って聞いたら、「大丈夫大丈夫、最近調子いいんだよ」って明るい声でしゃべっていたのですごく安心したんですけど、やっぱり私の中で彼が助からないっていう画が全く見えないんですよ。本当に不思議なくらい、絶対助かるんだろうなって思えるし、本人もそうだと思います。

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『とくダネ!』は、番組スタート当初から、医療について力を入れて特集してきた。メインMCの小倉智昭が膀胱がんになったこともあり、あらためて意識されるようになったが、「番組を支えてきた笠井さんというフィルターを通してこのように伝えることによって、リアリティを持って身近に感じられると思うので、視聴者の方にとっても少しでもお役に立てれば」(今野秀隆デスク)と、制作に取り組んでいる。

笠井アナは、入院4カ月、自宅療養2カ月というスケジュールを立てているが、現在のところ予定通りに推移しているそうだ。