JR東日本水戸支社は6日、常磐線富岡~浪江間の運転再開を前に、異常等が発生した際の対応力を養うことを想定した総合的な訓練を富岡~夜ノ森間で実施し、その様子を報道関係者らに公開した。常磐線は3月14日に全線運転再開となる。

  • 運転再開前の常磐線富岡~夜ノ森間で異常時対応総合訓練が行われた

富岡~浪江間は東日本大震災および福島第一原発事故の影響により、9年間にわたって不通区間となっていたが、昨年12月から列車の試運転が始まり、現在は乗務員の技術習熟等を目的とした訓練運転が実施されている。訓練運転は3月初旬まで続く予定で、1日1~2往復程度、常磐線の普通列車に使用されるE531系をはじめ、特急形電車E657系による運転も行っているという。

今回の異常時対応総合訓練では、JR関係者をはじめ、警察関係者(双葉町双葉警察署)、消防関係者(富岡町富岡消防署)、自治体関係者など約100名が参加。E531系5両編成の下り普通列車が富岡~夜ノ森間を走行中、線路を横断しようとした男性と接触する人身事故が発生したとの想定で実施された。

  • 富岡~夜ノ森間を走行中の普通列車が人身事故で緊急停止。乗務員が手歯止めで車輪を固定した後、現地責任者とともに現場の状況を確認する。レスキュー隊も現場に到着

列車が緊急停止した後、乗務員は手歯止めで車輪を固定し、続いて現場の状況を確認。車内では緊急停止による負傷者がいないか確認が行われた。その後、現場に駆け付けた設備関係の社員が現地責任者を担い、警察・消防関係者と連携しつつ、レスキュー隊による負傷者の救出作業、警察による現場検証などを実施。車内にも重傷を負った乗客がいたことから、担架で重傷の乗客を搬出する訓練も行われた。

訓練終了後、インタビューに応じたJR東日本水戸支社総務部安全企画室長の白土裕之氏は、「常磐線の全線再開を目前に控え、緊急時や輸送障害が発生した際にも速やかに対応できるように、警察・消防の方々と連携した総合的な訓練を行うこととしました。今後も安全を最優先に考え、行動し、さらなる『究極の安全』を追求したい」と話す。今回の訓練を振り返り、「9年ぶりに運転再開する区間であり、不慣れな場所ではありましたが、おおむねスムーズな対応ができたのではないか」とコメントした。

  • レスキュー隊による負傷者の救出作業が行われる

  • 重傷を負った車内の乗客を搬出する訓練も実施。警察による現場検証も行われた

3月14日に運転再開する富岡~浪江間のうち、本来は複線区間である大野~双葉間を暫定的に下り線のみの単線区間とし、上り線部分は緊急時などに使用する道路として整備するとの説明も。その他の区間も、線路内において安全性は確保されているという。富岡~浪江間の運転再開に向け、「ぜひ常磐線をご利用いただき、この東北の地に来ていただけるとありがたい」と話していた。

富岡~浪江間の運転再開にともない、常磐線は3月14日から全線で列車による運転を再開する。いわき~仙台間は運転再開に合わせて輸送体系が見直され、普通列車はいわき~原ノ町間でE531系、原ノ町~仙台間でE721系・701系による運転に。運転再開区間を含む広野~原ノ町間では、上下計11本の普通列車が運転される。

全線運転再開後の常磐線では、品川・上野~仙台間を直通する特急「ひたち」を3往復運転。E657系10両編成を使用し、全車指定席での運転となる。品川~いわき間で導入している新たな着席サービスがいわき~仙台間にも導入される。