フォルクスワーゲン(VW)の小型SUV「Tクロス」(T-Cross)が発売となった。サイズはマツダ「CX-3」くらいで使いやすく、日本市場導入を記念した特別仕様車「TSIファースト」の価格は300万円を切る設定だ。輸入小型SUVの本命になるかもしれないTクロスに早速、試乗してきた。

  • フォルクスワーゲンの新型SUV「Tクロス」

    フォルクスワーゲンの新型SUV「Tクロス」。撮影車は特別仕様車「TSIファースト・プラス」

やんちゃな表情も魅力の街乗りSUV

日本人にとってなじみ深い輸入車ブランドであるフォルクスワーゲンが、同社初となるコンパクトSUV「Tクロス」を発売した。カテゴライズではSUVに属するが、4輪駆動車の設定はない。前輪駆動車のみの街乗りSUVだ。最初の導入モデルは、充実装備の特別仕様車「TSIファースト」と「TSIファースト・プラス」の2タイプのみ。価格は299万9,000円~355万9,000円だ。

TクロスはVWのコンパクトカー「ポロ」をベースとする。そのため、ボディサイズも全長4,115mm×全幅1,760mm×全高1,580mmと、車幅の関係で3ナンバーとなるものの小さめ。日本車でいえば、マツダ「CX-3」に近いサイズだ。これなら、誰でも気軽に乗り回せるだろう。

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    いわゆる「3ナンバー」のクルマではあるが、日本市場でも使いやすいサイズの「Tクロス」

スタイルはSUVらしく仕立てられており、兄貴分となるSUV「ティグアン」の面影もしっかりと感じさせる。ただ、Tクロスはタフさが際立つというよりも、その凛々しさの中にやんちゃ坊主の表情が見え隠れする若々しいクルマだ。まさに、アクティブな生活の相棒に最適と感じさせる雰囲気である。

ボディカラーはターコイズブルーやオレンジなどの鮮やかな色を含む8色を用意。さらに「TSIファースト・プラス」には、外装色に合わせて専用のカラーコーディネートを施す「デザインパッケージ」を装備する。「ブラック」は全車で選択できるが、「オレンジ」と「グリーン」は選べるボディカラーが限定される。例えば、「オレンジ」のデザインパッケージを選ぶと、ドアミラーとアルミホイールがオレンジ色となり、さらにはシートやダッシュボードなどのデザインにもオレンジがアクセントとして使われるなど、同色が映える仕様となる。こういった色使いからも、SUVらしい遊び心を感じる。

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    遊び心あふれる色使いの「デザインパッケージ」。撮影車はホワイトボディにオレンジを組み合わせた仕様だ

インテリアはポロとの共通性が高いが、専用のアクセントを加えることで差別化を図っている。室内の広さは、サイズアップにより前席・後席ともに広々としたポロ同様、前後とも十分に快適なスペースを確保。ポロと比べれば頭上空間が広がり、視点も高くなるので、さらなるゆとりも感じられる。SUVとして重要なラゲッジスペースも、455L~最大1,281Lとポロよりも大きな容量を備える。

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  • 「Tクロス」は小型車「ポロ」をベースとするが、室内の広さは十分だ

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  • ラゲッジスペースの容量は455L~1,281L

導入記念の特別仕様車だけあって、装備も充実している。具体的に見ていくと、ナビゲーションシステム付きインフォテインメントシステム、バックカメラ、ETC2.0車載機、LEDヘッドライト、スマートキー、自動防眩ルームミラー、オートエアコンなど快適装備はそろっているし、先進安全運転支援機能では全車速追従機能付きACC、歩行者対応衝突被害軽減ブレーキ、駐車支援機能、衝突軽減ブレーキ付きリヤトラフィックアラート、後側方接近車両警報など、一通りの機能を備えている。さらに「TSIファースト・プラス」には、2インチアップとなる18インチアルミホイール、ルーフレール、スポーツコンフォートシート、パドルシフトなどの機能装備にプラスして、レーンキープアシストとオートハイビームの先進安全運転支援機能が加わる。

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    「TSIファースト・プラス」は18インチホイールを装備する

パワートレインは1タイプのみで、1.0Lの3気筒DOHCターボエンジンを搭載する。最高出力は116ps(5,000~5,500rpm)、最大トルクは200Nm(2,000~3,500rpm)。これにデュアルクラッチトランスミッション(DCT)の7速ATを組み合わせる。燃費消費率は16.9km/L(WLTCモード)となっている。

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    パワートレインは1.0Lの3気筒DOHCターボエンジン

小さくても走りに不足なし!

試乗車は18インチホイールを装着する「TSIファースト・プラス」だった。タイヤサイズが大きめなので、SUVらしいタフさを見た目からもしっかりと感じられる。まさに、日常の頼もしい相棒といった雰囲気だ。

インテリアはカジュアルな装いで、豪華さこそないものの、各部に触れるとドイツ車らしい作りの良さが十分に伝わってくる。この点はポロ譲りだ。しっかりとしたシートの作りは、VWの良心が光る部分。長距離を乗っても疲れにくい質の高さにはほれぼれする。操作系に目新しさはないが、至ってオーソドックスなので、初めての輸入車としても抵抗はないはず。ナビゲーション画面は高めの位置にあるので見やすい。

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    カジュアルな装いだが作りの良さが伝わるインテリア

もちろん、ドイツ車なので走りはいいし、小さなクルマらしい軽快さがある。1.0Lターボなのでパワフルとはいわないが、エンジンはポロよりもパワーアップしているとのこと。アクセル開度に合わせてシフトアップのタイミングを遅らせるなどのチューニングが施してあるので、走りに関して不足はない。

その小ささは街中だけでなく、峠道でも武器になる。ポロと比べると足が固められているので、乗り心地の良さでは一段落ちる気がするものの、その分、車高の高さを意識させない安定感を獲得している。トータルでは好バランスな味付けだと思う。個人的には、パワートレインのセッティングはポロにも反映させてほしいくらいだ。

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    「Tクロス」の小ささは峠道を走る際にも武器になる

輸入車デビューにオススメの1台

初めての輸入車としても、Tクロスはオススメできる。具体的には、単にコンパクトなだけでなく、実用的なキャビンサイズを備えていること、1.0Lターボでも不足がないようにパワートレインを手懐けてあること、そして、「デザインパッケージ」の遊び心が特筆すべき推薦ポイントだ。

今後、カタログモデルが登場すれば、装備が簡素化される分、エントリー価格はもっと抑えられるものと予測する。しかし、ナビや先進安全装備は絶対に欲しくなるだろうから、結果的に、「TSIファースト」に近い価格となる可能性は高い。さらに、洒落っ気として「デザインパッケージ」は外せない。だから、36万円高くはなるが、ぜひ「TSIファースト・プラス」をチョイスして欲しい。

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    オススメは「TSIファースト・プラス」だ。「デザインパッケージ」で遊び心をプラスしてほしい

どうしてデザインパッケージをここまで推すかといえば、このオプションが、ドイツ車特有の「気真面目さ」を持つTクロスを垢抜けさせるのに最適な選択肢だからだ。一般的に、ドイツ車のインテリアは黒を基調としたコンサバなものが多いが、デザインパッケージを適用すると、Tクロスではその雰囲気が一変する。なので、ボディカラーにも左右されるが、どうせ選ぶなら、アクセントカラーはブラックではなく、オレンジかグリーンとしたいところだ。

最後に、小さなことかもしれないが、気になる点を1つだけ。Tクラスは、VWとしては珍しく、エンジンフードオープナーが助手席側にある。その理由は、生産の都合だ。左ハンドル仕様も右ハンドル仕様も同じ工場で生産しているので、エンジンフードオープナーの位置が左ハンドル側に統一されているのだ。

この点を不満に思う人は少ないだろう。しかし、これまでのVWでは、エンジンフードオープナーがしっかりと運転席側に備わっていたし、個人的には、それをVWの良心と受け取っていた。時代の流れとして、滅多に使わないオープナーの位置など、合理的に配置するのがベターなのは間違いない。ただ、その判断が、VWの持つ良心に及ばないことを祈るばかりである。今は私の単なる杞憂でしかないのだが……。

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著者情報:大音安弘(オオト・ヤスヒロ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。