野球素人ながら、ダルビッシュ有投手をはじめとしたプロ野球選手からも支持を受ける謎の野球評論家「お股ニキ」氏。野球について多く発信している自身のツイッターは、数多くのフォロワーを抱えている。

そんなお股ニキ氏は、昨年の11月には『なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか』(宝島社新書)を出版した。

ツイッターでの発信を始めた経緯や、著書のテーマとなっている日本人メジャーリーガーにパリーグ出身者が多い理由、そしてパリーグ出身のメジャーリーガーとして輝かしい実績を残したイチロー氏のすごさなどについて聞いた。

■ダルビッシュの紹介でフォロワー数増

『なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか』

『なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか』

――お股ニキさんはTwitterでの野球評論が注目を集め、現在では様々な媒体で執筆活動を行っています。評論を始めたきっかけは何だったんですか。

母が病気になり、同じような境遇の人はいないのかなと知るために、Twitterを始めました。当初は発信することにまったく興味がなかったのですが、母の病気も治り落ち着いたところで、はじめはレアル・マドリーを中心としたサッカーについてつぶやいていましたが、野球の話をした方がウケが良いなと。

そしてなぜか分からないけど、2015年9月23日にダルビッシュが絡んできて、その後、「お股さんは野球詳しいです、面白いです」みたいな感じで紹介してくれたおかげで、フォロワーが700人から急に2000人くらいに増えましたね。

――それ以降はダルビッシュ投手をはじめ、現役プロ野球選手とも交流があるようですね。

ただ、そこは難しい問題で、一般人とアイドルとの交流とも似ているなと。プロ野球選手と一般人は、良い意味で距離感、壁があるべきだと思っているので、その辺に関しては自分はわきまえている方だと思います。彼らはある意味、スクリーンの中の人と割り切っています。

■「テレビ中継を見て分析する」に強み

――とはいえ、お股ニキさんの評論はプロ選手からも一目おかれています。

プロを経験した人じゃなきゃ分からない感覚は絶対にありますし、そちらの方が重要です。ただ、ずっと現場で同じ目線、ベンチから見ている目線ではあります。なので、僕ら一般人が見ているテレビ中継を見ても、意外と球種とかって分からなかったりするんです。

解説者もそうですけど、よくあるじゃないですか。「今のはフォークですね」って言ったのに、リプレイを見たら挟んでなくて、「あースライダーですねえ」とか(笑)。

ハッキリ言って、球場で見てもよく分からなくて、実はテレビで見た方が分かりやすかったりする。僕らは子供の頃からずっとテレビの画面で試合をよく見ていたから、プロの選手とはちょっと違う目線でいられるのかなと。

――確かにプロ野球選手になるような方々は、学生時代から練習で忙しいため、中継を全然見ていなかったりしますよね。

本当に中継を見てこなかったというのは、ありがちです。プレーするのは好きだけど、野球を見るのは好きじゃないという人も多いです。

子どもの頃からテレビで野球を見まくってきたから、「テレビ中継を見て分析する」という点だけにおいては、ある意味でプロの選手より経験があるのかなと思います。実際にプレーしている彼らからすると、テレビ中継は全然違った視点ですので。

これは推測ですけど、トップレベルになればなるほど、いろいろなことができるからこそ試そうという意識も能力も高いので、彼らに興味を持っていただいているのかなと思います。千賀(滉大)にも「ちょっと違った目線での話を楽しみにしています」と言われたこともありました。

■ソフトバンクが圧倒的に強い要因

――そして、昨年の11月には宝島社新書「なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか」を出版されました。

編集者の方に提案いただいて、このテーマで書くことになりました。思ってもいないテーマだったので、不安だったんですが、意外と書くことができました。

――2013年から7年連続でパリーグが日本シリーズを制するなど、セリーグと比べるとパリーグの強さが際立っています。

映像で構えと立ち位置を見ただけで、「西武のバッターみんな良いわ」と思いますし、やはりパリーグは全体的なレベルが高いですよね。そうはいっても、結局はソフトバンクが強いだけだろというのもあるんですが(笑)。

――たしかにソフトバンクはここ6年で5回の日本一と圧倒的な強さです。ここまで強い要因は何なんでしょうか。

結局、今は資本主義社会で、富を持ったものはさらに豊かになる世界です。余裕があるからリスクがある投資がどんどんできて、それでさらに成功していくという。ソフトバンクも資金があり、3軍制をできる余裕があって、「失敗してもいい」という感覚でやれたんでしょうね。

その結果、数打った一芸型の千賀、甲斐(拓也)、周東(佑京)といった育成選手が大化けして戦力になってます。むしろ本指名のドラフトでは、投手以外はそれ程選手が出てきている訳ではないですし。

逆に他のチームも3軍制をやりだすと、似たレベルの選手の取り合いになって、あまり差はなくなると思います。他のチームもやり出したら、前からやっていたから良いという話で、他のチームもやり出したら、じゃあ何で差をつけるの、となっちゃうので。

――本のタイトルにもなっている「なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか」の一因としては、本書では「パリーグには高身長で重量級の選手が多いから」と挙げています。

格闘技で階級制があるのがそもそも証明しているはずなんですよ。野球には階級制がないですが、同じ動きができるんだったら、そりゃデカい方が有利でしょという単純な話です。