●自分の弱さを再確認して苦しかった

――デビューに関して、色々とお話しいただきありがとうございました。続いて、実際にアルバム制作をしていく工程について教えてください。

まずは私の好きな音楽性や好きなアーティストをスタッフさんがリサーチしてくださいました。時間をかけて何度も打ち合わせをしていくなかで、私が欅坂46さんを好きということで、表題曲にバグベアさんを起用してくださることが決まって。もう感謝しかなかったです。実際にレコーディングが始まってからは立て続けに10曲を収録していきました。最後のほうは1週間に1度はレコーディングしていたんじゃないかな。制作時には自分の弱さや足りていない部分を再確認して苦しさを感じることもありましたが、全曲終えたときに「いいものができた」と自信を持って言えたんです。アルバム制作の過程も、私にとってかけがえのない経験と時間になりました。

――実際にアルバムに収録されている1曲、1曲についてお伺いします。まずは表題曲でもある「愛とか感情」。こちらのレコーディングはいかがでしたか?

ソロアーティストとして初レコーディングだったので、とても緊張しました。また、これまで歌ってきたキャラクターソングと違って「ニノミヤユイ」としてダイレクトに気持ちをぶつけることや、自分らしい歌声を追求するのが難しかったです。

――歌が好きだったとはいえ、そういうことを考えながら歌うことはあまりないですよね。

そうなんです。カラオケも好きなのですが、そのときは「歌えたら満足!」って感じなので、自分の歌声についてあまり深く考えたことはなかったです。レコーディングもまずは自分が出したい歌声の研究から始まりました。

――その研究の成果としてはどういう方向性に落ち着きましたか?

目指したい方向性としてはさユりさんのような、声を聴いただけで切なくなる、胸を締め付けられるような歌い方でした。そのイメージもありながら、自分の声を録音しつつ、どういう歌声がしっくりくるのか見つけていきました。そこからは、曲によってどういう声で歌い分けていくべきか、さらに研究していき……という感じですね。最終的な方向性としては、さユりさんをリスペクトしつつの自己流になったかなと思います。

――制作を担当されたバグベアさんからは歌声について何か言われましたか?

レコーディングのとき「素敵です」と言っていただけました。バグベアさんの楽曲に対する解釈と私の歌声が合致したように感じられて、嬉しかったです。

――レコーディングはスムーズに進んだ?

最初なので、たくさん試しながら何度も録ったのですが、そこまで大きく苦戦することはなかったです。

――バグベアさんとは楽曲について、どういうお話をされましたか?

最初にお会いする段階で元となる音源が出来上がっていたんです。その時点でもう素敵だったのですが、ピアノが立っている曲が好きとお話しさせていただいたら、その意図を汲んでくださって! この曲のピアノのメロディー、カッコいいですよね。バグベアさんのおかげで、いいスタートダッシュを切ることができました。

――続いて2曲目は「ヤミノニヲイ」。こちらのレコーディングはいかがでしたか?

作詞・作曲をしていただいたカノエさんが親しみやすい空気を醸しだしていらっしゃって、お姉ちゃんみたいでした。しかも、ちょっと似ている部分がある……と言ったら失礼かもしれないですが、そう感じるくらいに私の内面をズバッと言い当てられている歌詞を書いてくださったんです。だから、スッと私の中にしみこんできました。ジャズっぽい曲調も好きなので、歌いやすかったです。

――この曲はタイトルも気になりました。

そうなんです。アナグラム……になるようでならない。

――やっぱりならないんですね(笑)。

はい(笑)。このタイトルもカノエさんが付けてくださったのですが、並べ替えたらニノミヤユイ……じゃないなみたいな、ちょっとずれているところがいいのかなと思っています。そこがきっちりハマりすぎないのが“らしさ”だと解釈しました。

――続く3曲目「Lemon Gelato」。こちらはどのような楽曲に仕上がっていますか?

これは今回のアルバムのなかで唯一、アイドルとまではいかなくとも、女の子らしい歌になっている気がします。だから、ちょっとアイドル的な気分と言いますか、可愛らしさを出すというのが私のなかでの目標でした。私のなかにある「ちょっとは女の子らしく見られたい」という願望も詰めこんでいます。

――他の楽曲と比べて歌い方も可愛く感じました。

ありがとうございます!

――実際に歌ってみていかがでしたか?

すごく幸せな気持ちになります。他の曲はロック調でまくし立てるものが多く、歌詞も胸を締め付けられるものが多いので、アルバムのなかでもいい意味で浮いた曲になったんじゃないかな。

――アクセントになっている一曲なんですね。続く4曲目「乱反射↘↑↗」はニノミヤさんとバグベアさんが共同で作詞された曲です。

私が普段思っていることを書き連ねた歌詞の原案みたいなものをバグベアさんにお渡しして、そこから整えていただきました。私の思っていることをそのまま綺麗な言葉にしてくださったので、仕上がりをみたときに「これ、私だな」と思いました。Dメロは綺麗で切ない感じがして、自分で聞いていても泣けます。

――"とっくに美少女でもリア充でもないことぐらい分かってる"。なかなか尖っている歌詞ですね……!

私の原案でも"もっと可愛く生まれたかったし、リア充にもなりたかった"みたいな感じで書いた部分です。曲全体を通して偽りない私が出ていると思います。

――対する5曲目「私だけの、革命。」はご自身のみで作詞された曲です。

ひとりで作詞するのは初めてだったので、色々な人からアドバイスをいただきました。アルバム制作全体を通じて自分自身を再確認する時間が多かったのですが、この曲を作っているときは特に深く自分と向き合っていましたね。

――どういうときに歌詞のイメージが湧いてきましたか?

私、夜になると気分が沈んでよりネガティブになるんです。でも、そういうときの方が創作活動が捗って。詞を考えるときは、部屋を真っ暗にして電球ひとつだけを点けて、ひたすらノートに言葉を書いていきました。曲自体も難しかったので、苦しみながら作りましたね。それでも、初めて作詞した曲なので、ちゃんと自分が関わって完成したんだなという気持ちも強く、出来上がったときの達成感が一番あった曲です。

――先に曲をいただいてから作詞がスタートしたんですね。

そうですね。佐藤純一さんの楽曲はデモの時点で素敵だったんですけども、早くまくし立てるところが多かったので、言葉を当てはめるのが難しくて。自分の伝えたいことを言葉として当てはめることに悩みました。

――タイトルはニノミヤさんが付けた?

これは佐藤純一さんが提案してくださいました。この曲の最後がその言葉で終わっているんですが、そこが印象に残ったとおっしゃっていただいたんです。「私のなかに弱くて踏み出せない自分がいるけど、それでも前に進んでいく」という自分のなかの“革命”を言葉と歌にぶつけた曲なので、すごくマッチしていると感じました。

――革命という言葉自体は好き?

今まで叶えられなかったものを変えることができるという意味では、好きかもしれないです。ずっと誰かと同じでは意味ないと思うので。何かを変えられるような人になりたいっていうのは自分の理想でもありますね。