住宅ローンの相談を受けていると、様々な考えがあることがわかります。その家族の人生設計により最適な組み方を選ぶため違いがあって当然ですが、住宅ローンの組み方には、その人の考え方がストレートに現れます。そしてそれは、貯蓄に対する考え方にも結び付いているので、とても興味深いです。

住宅ローンの組み方は「リスク」というものに関しての想像力が大きく作用し、貯蓄の方法にも表れます。では貯蓄できる人と、そうでない人にどのような違いがあるのか、少し考えてみましょう。

  • 住宅ローンの組み方で判明! 貯めれる人との違いとは?

リスクを把握しない人は貯蓄できない

住宅ローンは「借金」です。それも、年収の数倍の、考えれば途方もない借金です。借金である以上、当然リスクはあります。リスクがあるからこそ、少しでもリスクを減らす借り入れ方法を考えたり、頭金をできるだけ多く準備したりと、いろいろ工夫するのです。

貯蓄も同様で、これからの人生で起きるかもしれない様々なリスクを把握して、万一に備えてせっせと貯金をし、それでも対応できないと分かれば生命保険や医療保険などに加入します。

リスクを正確に把握できなければ、貯蓄のモチベーションも高く維持できず、それは住宅ローンの借り入れリスクも高くしてしまいかねません。住宅ローンの借り入れに際して、どのような考え方がリスクを高めるか考えてみましょう。

頭金を20%用意できる人は返済破綻しにくい?

一般的に、住宅ローンの頭金は最低20%用意した方がよいと言われています。以前は通常、購入価格の80%が融資の限度で、頭金は20%用意しなければならないのが一般的でした。諸費用分も含めれば、それ以上の現金が必要でした。しかし、最近は100%融資も可能となり、頭金なしで融資を受けるケースもあります。

ファイナンシャルプランナーの勉強会で、旧住宅金融公庫の職員から、返済に窮して返済期間の延長等の相談に来るケースの中には、頭金を20%用意した人は少ないというデータがあると聞きました。頭金が多ければ、その分借入額は少なくなり、破綻するリスクも少ないのは当たり前のようですが、問題は別のところにあるそうです。

頭金を20%用意できた人は、それだけ計画性があるということで、そのことがローンの組み方にも返済の方法にも表れ破綻を少なくしている、ということだそうです。つまり頭金を用意できた人は、リスク管理がしっかりしているということです。

もちろん例外はあります。現在住宅ローンは極めて低金利です。世界的に見て経済が安定する住宅ローンの金利は6%程度だそうで、日本でも旧住宅金融公庫の金利は長く5.5%でした。

かなりの貯蓄高を有していても頭金等に拠出せずに、投資に回して高い利回りを得られるのであれば、そのほうが有利です。ただし、投資のリスクは住宅ローンより高いので、リスクに十分に対応できるだけの準備や余力が必要であることは言うまでもありません。

優遇措置の金利で返済計画を立ててしまうと危険……!

旧住宅金融公庫の融資は、一般的には当初の10年は低金利で、11年目から高くなる設定でした。当然、借り入れる際にはそのことは理解していたはずなのに、11年目になって返済できなくなり、相談に来るケースが少なくなかったそうです。

現在フラット35は借入期間を通じて金利は一定ですが、フラット35Sは最初の10年、または5年間金利が優遇されます。金融機関のキャンペーンなどで、初年度低い金利設定となっているケースもあるかもしれません。また、10年固定金利でその後は固定金利、変動金利のいずれかを選べる住宅ローンもあります。その際に金利が変わることは十分に考えられるのです。

当然そうした金利の変化も、借り入れ当初からわかっていることなのですが、旧住宅金融公庫のデータからすると、金利の上昇で返済に窮するケースは、今後も発生すると考えた方がよさそうです。

生涯設計から考えると住宅ローン返済中も、教育資金や老後の資金を並行してプールしていかなければならないでしょう。それらの貯蓄分を返済に窮して取り崩していては、当面何とかなってもその後の生活に問題を先送りしてしまいかねません。

力量以上の借り入れをすると、「住宅ローンを返済しているから、思うように貯蓄できない」となりますが、リスクを考慮して余裕のある返済計画をすれば、「住宅ローンを借り入れているから、生活に無駄をなくし一層貯蓄を心掛けていこう」という考えになるはずです。

「固定金利or変動金利」どっちがいい?

住宅ローンの相談で必ずあるのが、「固定金利」がよいか「変動金利」がよいかという質問です。高金利経済の時は変動金利、低金利経済の時は固定金利を選択するのが基本的な考え方です。つまり、現在の超低金利状態であれば固定金利を選択するのが基本だということになります。

夫婦で安定した高所得を得ていて、短期に返済予定などの場合は変動金利の選択もあります。しかし、余裕のない人の方が、変動金利を希望する傾向があります。超低金利の変動金利でしか返済できないとすると、その住宅ローンの借り入れ方法は大変リスキーなものとなります。


住宅ローンの借り入れ方を選ぶ背景には、リスクに対する想像力があるかが問われます。十分なリスク管理ができているかが、住宅ローンを返済しながらも貯蓄を増やしていける人かどうかにつながるのです。人生設計には「想像力」がとても重要だと常々感じます。想像力はリスク管理の原動力です。

現在は様々な情報が溢れています。想像力を補う国の統計値や制度の詳細なども、いつでも調べることができます。マイナスの言葉で関心を誘うセンセーショナルな情報に惑わされがちですが、将来への想像力の重要性を意識し、関心がある点や重要だと感じる点、不安な点などは、面倒でも元の1次データを検索するようにしましょう。

自分自身のリスク管理能力を高めていくことが、上手に住宅ローンを借り入れ、貯蓄していく上でとても大切です。

筆者プロフィール: 佐藤章子(さとうあきこ)

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。