長谷川博己が戦国武将・明智光秀を演じる2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』(1月19日スタート、毎週日曜20:00~)で、美濃の守護代で光秀の主君・斎藤道三(利政)役を務める本木雅弘。“美濃のマムシ”と恐れられていた下剋上の代名詞ともいえる道三役は、本木にとってもチャレンジングな役だという。そんな道三役を演じるにあたって、大切に胸に刻んでおきたい義母・樹木希林さんの言葉とは? 日頃から言われていたアドバイスや、遺品として残っていたメモに書かれていた芝居についての言葉を明かしてくれた。

本木雅弘

『麒麟がくる』で斎藤道三を演じる本木雅弘

“梟雄”や“マムシ”というあくの強いたとえが多い道三役について、本木は「それはもうヘビーですよね。自分はもっと薄味に生きているので、毎回奮い立たせないといけない」と本音を告白。「例えば、“怒り”とか“凄み”というのも、大声を出すだけではダメで、静かな顔で奥歯を噛むとか、妙な間をつくるとか、一筋縄ではいかない道三を表現するのに苦心しています」と打ち明けた。

そして、「樹木希林さんがご存命でしたらどんなアドバイスをすると思いますか? もしくはご存命中の樹木希林さんの言葉で思い出したことはありますか?」という問いに対し、「役柄に関係なくでもあるんですが、私のどこか幅の狭い考え方に対して、樹木さんは常に『もっともっとその役のタイプの人間を面白がって、もっと気楽に』と言われていた」と、よく言われていた樹木さんからのアドバイスを明かした。

また、「実は、遺品の中で雑記帳みたいなものが残っていて、それには雑誌やニュースから拾った言葉や、他人との会話のセリフ、あるいは書物から、そして自分で感じたり、分析したような事がランダムにつづられているのですが、その中でお芝居についての文があって、その最後に『見せるのではなく、自分を出すのではなく、心を込めて無念の魂を鎮めていただくように演じる』と書いてあったんです」と樹木さんがメモに残していた言葉を紹介し、「『演じるということは鎮魂だ』という感覚なのだと思うのですが、それが今回にも当てはまる」と話した。

続けて、「あれだけの才能と覚悟のある道三も、最後は苦しく親子で争うことになり、息子に殺されるという運命をたどる。単に負けたのではなく、『あえて自殺行為に出る』というような、最後まで道三らしい戦いをするんですが、やはり複雑な思いであったはずです」と道三に寄り添う本木。

さらに、「時代を全うしたという意味では、とても“らしく”生きた人だと思いますが、戦を繰り返す中でどこか人の道からはずれてしまい狂気とともに生きる以外になかったという風にも見える。その先見性ゆえに最終的に、実子には失望し、子供たちもいがみ合って命をなくし、託せたのは自分の息子ではない光秀であり(織田)信長であるということでは、どこか無念が残ったと思う」と語った。

そして、「そういう意味で、少し大げさかもしれませんが、演じることに鎮魂の思いを込めて、あの時代に散った命に寄り添い、祈るような気持ちで役と向き合うことが大事なのかもしれないなと思っています」と、樹木さんからの金言を胸に道三を演じる。

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■本木雅弘
1965年12月21日生まれ、埼玉県出身。元シブがき隊のメンバーで、1988年に解散した後、本格的に俳優活動を開始。映画『シコふんじゃった。』(1998)では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。2008年には、自らが発案し、主演を務めた映画『おくりびと』が日本映画史上初となる米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。そのほか、ドラマ『西遊記』(日本テレビ/1993)、『水曜日の情事』(フジテレビ/2001)、NHK大河ドラマ『徳川慶喜』(1998)、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』(2009~2011)、映画『トキワ荘の青春』(1996)、『永い言い訳』(2016)などに出演。

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