ダイハツ工業のライトウェイトスポーツカー「コペン」に、トヨタ自動車がモータースポーツで培った知見を注入した新型車「コペン GR SPORT」が発売となった。前々からコペンには好感を抱いていたという安東弘樹さんは、新モデルをどう評価するのか。マニュアルトランスミッション(MT)仕様で一般道を試乗してもらった。

※文と写真はマイナビニュース編集部の藤田が担当しました

  • 「コペン GR SPORT」に乗る安東弘樹さん

    安東弘樹、「コペン GR SPORT」に乗る!

スポーティーなクルマであり続けることを目指して

コペンは軽自動車規格でオープンカーにもなる2人乗りのスポーツカーだ。初代の登場は2002年で、2014年に発売となった現行型は2世代目となる。現行モデルには「ローブ」「エクスプレイ」「セロ」の3タイプがあり、4つ目の新たなタイプとしてGR SPORTが登場した。

  • ダイハツ「コペン」

    左から「ローブ」「セロ」「エクスプレイ」

「競合他車の出現により、コペンのスポーティーなイメージが相対的に低下している」。ダイハツ 製品企画部の南出洋志さんは、同社がコペン GR SPORTの開発に乗り出した理由をこう説明する。ホンダ「S660」などの競合がスポーティーなイメージを打ち出しているため、コペンの「スポーティーである」というイメージが相対的に低くなっているのだ。

そこで、トヨタがモータースポーツ活動の知見をいかして展開しているブランド「GR」とともに、コペンの新たなタイプを作ることにした。ラインアップにライトウェイトスポーツを持たないトヨタにとっても、コペンを自社で販売できることにはメリットがある。

コペン GR SPORTは既存モデルに補強材を追加しているほか、足回りの最適化や空力向上のためのパーツ追加などを実施。スポーティーでありながら上質な乗り心地を目指したそうだ。

  • コペン GR SPORT

    専用のバンパー、ラジエーターグリル、ホイール、エンブレムなどを装備する「コペン GR SPORT」。価格は「7速スーパーアクティブシフト付CVT+パドルシフト」仕様が238万円、「5速マニュアル」仕様が243万5,000円

「ちょっと恥ずかしいですけど、これ、屋根は開けたままで行きます? じゃあ、せっかくなんで、開けて行きますか!」。おじさん2人でオープンカーに乗ることに多少の気恥ずかしさを感じると話しつつ、安東さんはコペンに乗り込み、試乗の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県中郡中郡)を出発した。

小さなスポーツカーの存在意義

安東さん(以下、安):これ、「6速」に入れてしまわないように、気をつけないといけませんね。

編集部(以下、編):あ、5速までしかないから、「6速」があるところが「R」になっているんですね()。安東さんはよく、「シフトパドル」の付いていないクルマでも、クセでパドルを叩く動作をしているくらいですから、本当に気を付けないといけませんね(笑)。

※編集部注:MT車は「王」という文字を横にしたような溝からシフトレバーが伸びていて、左上が「1速」、左下が「2速」という感じでギアが上がっていくが、「5速」までしかないコペンの場合、右下は「6速」ではなく「R」になっている。クセで「5速」から「6速」にシフトアップしようとすると、危ない。

:小さいスポーツカーって、お好きですか? 昔は結構あったと思うんですけど。

:ありましたね、各メーカーに。「ビート」(ホンダの軽規格スポーツカー)とか「オートザムAZ-1」(マツダ、同)とか。

  • ホンダ「ビート」

    ホンダ「ビート」

:そういえば、この間、番組の取材で町田の豪邸を見に行ったんです。そこには電動シャッター付きのガレージが2つあったんですけど、1つのガレージには往年の名バイクが4台、そしてもう1つのガレージには「S800」(ホンダの小型スポーツカー)が収まっていました。なんと、私と同じ歳のクルマ(1967年製)です!

:いくらでも高価なクルマが買えるのに、あえて選んでいるということですね。

:そうなんです。カッコいいですよね。当時の日本製のクルマの中に、マニアが自分のクルマとして選ぶクルマがあるということは、すごいと思います。もう1台は、実用車としてランドローバー「イヴォーク」をお持ちでした。

  • ホンダ「S800」

    ホンダ「S800」

:視点が低いから、大きなトラックとすれ違う時、少し恐いですね。おもちゃのクルマに乗っているみたいで。

:例の「マリオカート」に乗っている人たちの気持ちが、ちょっと分かったような気がします。

あ、小学生が歩道を歩いてますね。このクルマだったら、ちょっとは見てくれないかな……。あー、興味なしか。

:フィアット「500」に乗っていた時は、道行く子供によく見られたものですけどね。

  • コペン GR SPORT

    「コペン GR SPORT」のボディサイズは全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,280mm

:コペンの印象って、いかがです? 小さいスポーツカーが減っていった中で、独自な立ち位置ですよね。

:旧型も含め、何回も欲しいと思ったことがあります。気持ちいいスポーツカーというイメージです。

:車体が軽くて、MTもあって。排気量が660ccでも大丈夫ですか?

:それは全く、問題ないです。

(対向車線にクラシックなアルファロメオが登場)

:おー、アルファロメオだ、かっこいい!

(アルファロメオに向かい、おもむろにサムズアップする安東さん)

:え、カッコいいクルマとすれ違う時って、クルマ好きの間では、そういう風にするのがマナーだったりするんですか?

:いえ、なぜか今、やっちゃいましたね(笑)。

:今度、僕もやってみようかな(笑)。

  • コペン GR SPORT

    「コペン GR SPORT」のインテリアは黒基調。専用のレカロシートが装着してある

:わ、やっぱりエンジンは回るな! 時速100キロで4,000回転までいっていますね。問題ないですけど、燃費は期待できないかもしれませんね。あと、フットレストがないのかー。

:小さいクルマで足元のスペースにも限界がありそうなので、物理的に作るのが難しそうではありますね。

:でも別に、大人が2人で乗っても、そんなに窮屈ではないですね。身長190cmクラスの方はつらいと思いますが……。今って、オープンカーに乗るには最高の気候ですね。ちょっと肌寒いくらいが、ちょうどいい。シートヒーターも効いているし。

  • 「コペン GR SPORT」を運転する安東弘樹さん

    試乗したのは11月半ばの寒い日だったが、シートヒーターで体を温めつつ、顔だけ冷たい風に吹かれているのは爽快だった

:やっぱり、MTはいいなー! こんなに楽しいことを知らない人が、かわいそうなくらいですよ。私はお酒が飲めないので、お酒が好きな人に「お酒が飲めないなんて、人定の半分は損してるよ」などといわれることがよくあるんですけど、私にいわせれば、MT車を運転する楽しさを知らないなんて、人生の80%は損してますよ(笑)。

:今も楽しそうですもんね。

:ただ、靴がね。ドライビングシューズだったら、もっと楽しかったんだろうなー!()

※編集部注:多忙な中で試乗会に駆けつけたため、ドライビングシューズを用意するのを忘れてしまったことを、この日の安東さんは後悔し続けていた。詳しくは「C-HR試乗編」をご覧いただきたい。

:安東さんって、まだクルマに乗れない子供の頃、自転車でもギアチェンジを多用してたんですか?

:もう、もろにやってました!

:それって、ガチャガチャやるのが面白いからではなく、実用的な理由からですか?

:もちろん。やっぱり、楽ですからね。

:坂道を登る時にペダルが軽くなるギアに入れるのは分かるんですけど、普通の道って、1つのギアでも大丈夫だったりしません?

:でも、普通の道だって少し下っていたり、登りになっていたりしますからね。ちょっと下り気味のところなんかでは、思いっきりハイギアにしたりしてね。

:初めてクルマを購入する人が、このコペンを選んだら、どうでしょうね?

:いやー、楽しいと思いますけどね。日本の道って、ストップアンドゴーが多いじゃないですか? だからこそ、MTが楽しいと思います。しかも、このくらいの動力性能が、一番いいかも。スペックって、どうでしたっけ?

:最高出力が64ps、最大トルクが92Nmだそうです。

:100Nmないんですか。このくらいで十分なんだなー。

:重さは960キロです。

:まあまあ、重いんですね

:お値段は243万5,000円ということなんですけど、若い人が初めてのクルマとして買うには高いですね。

:そうですね、私の初めてのクルマは48万円でしたし。48万円でも楽しいクルマって、当時はたくさんあったんだけどなー。

:240万円ということは、あと20万円くらい出せれば、マツダの「ロードスター」が買えますよね。

:あー、そういうことになりますね。それはどうなんだろう。難しい問題ですねー! ちなみに、クルマにいくらまでなら掛けられます? もちろん、ローンを組んでもいいんですけど。私もローンでしかクルマを買ったことがないですから。

:月にいくら出せるか、ということですよね。うーん、3万円くらいですかね……。

:逆にいえば、3万円なら出せます? コミコミで3万円? そうすると、いろいろと選択肢はあるような気がするんですけどねー。例えば、2万5,000円が車両代だとして……。私は最初、月1万円でしたけどね。

:48万円のホンダ「シティ ターボⅡ」を48回ローンで購入されたんでしたよね。でも結局、駐車場にもお金がかかるし、保険とか税金のことも考えると、月3万円では難しそうですね。もっと払おうと思えば払えるかもしれないんですけど、よっぽど腹を決めないと。洋服も我慢する、食費も減らす、みたいな。

:そうですよねー、まあ、私は今、それに近い状態ですけどね。本当にクルマにしかお金を使いません。このスーツも、もう12年くらい着てますし、この眼鏡も長く使ってますからねー。

:ご家族を養う以外は、本当にクルマだけ(笑)。そういえば今って、メルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」とポルシェ「911 カレラ 4S」(MT)に乗っていらっしゃいますよね? 今度、新型「911 カレラ 4S」が発売になると思うんですけど、乗り換えは検討していらっしゃいますか? お財布的に、状況はいかがでしょうか。

:うーん、無理をすれば何とかなるのかもしれませんけど、こればっかりは分からないですね。常に、安定して収入が入ってくるわけではないので、なんともいえません。

:よく、芸人さんが「無理をしてでもいい家に住む」とかっていいますよね。

:それは、私には絶対にない発想ですね。「いいクルマに乗る」なら分かるんですけど。今は、車庫が欲しいと思っています。今も自宅に車庫はあるんですけど、横に3台のクルマをとめておける車庫を建てるのが、今の夢です。

  • ポルシェの新型「911」

    新型「911」(画像)にはMT仕様が登場するとのこと

:コペンの印象、今のところどうですか?

:楽しいです。MTだと、ほかのところはどうでもよくなっちゃいますね。シフトの剛性も、満足がいくレベルで不満はないです。このクルマであれば、MTの楽しさを十分に味わえるのではないでしょうか。クラッチペダルもC-HRよりは重くて、ちょうどいい踏反力ですね。

:こういうクルマって、なくなって欲しくないですね。

:本当に。でも、少し高いかな。だから、初めてのクルマとしては、これの中古でもいいかもしれませんね。

:これを若い人が新車で買うのは厳しいかもしれませんけど、小さくて楽しいMTのスポーツカーは、クルマの楽しさを感じられるものとして、必要ですよね。

:うーん、最初のクルマは、これにして欲しいなー! 絶対、クルマ好きになると思いますけどね。まあ最初の頃は、エンストすることもあるとは思いますけど、慣れてくると、こんなに楽しいことはほかにないと思えるのではないでしょうか?

それにしても、本当に、クルマの値段というのは難しい問題で、私は(TBSの)社員時代、サラリーマンとしては、恵まれている方だったと思うんですよ。学生時代はアルバイト漬けで年収が200万円くらいだったんですけど、それでも学生としては多いほうだと思うんです。その時代のことを考えれば、今の若い人の金銭感覚が分かりやすいかもしれないな。

私は中古で速いクルマが欲しかったんで、カリカリの、チューンされたクルマを買ったのが、クルマを楽しむことの原点になっています。今の若い人が、そういう感覚でクルマを選ぶとしたら、例えばCVT(無段変速器)の軽自動車の新車を120万円で買うよりも、120万円で楽しい中古車を探した方がいいでしょうね。まずは「新車信仰」をなくした方がいいかもしれません。

:あとは、このクルマを2台目として買って、楽しく運転するのもいい人生でしょうね。

:そういえば、この間、「製硯師」(硯を作る職人)という人をラジオ番組にお招きして話をうかがったんですけど、その方はロードスターのMTに乗っているそうで、「MTの運転はモノづくりに通じる」とおっしゃってました。本当に集中できるし、硯を削る作業にも似ているらしくて。素敵な方でしたね。

高速への合流が短くても、MTであれば恐くないですもんね。CVTを搭載していて、ペダルを踏んでもなかなか進まないクルマだと、やはり恐いですから。楽しいですね、こういうクルマ。いいなー!

  • 「コペン GR SPORT」に乗る安東弘樹さん

    「コペン GR SPORT」のMTを堪能できた様子の安東さん

一般道での試乗を終えた安東さんは、大磯プリンスホテルの駐車場に用意された特設コースで従来型コペンとの乗り比べを試すことに。感想としては、「GRの方が滑らかで、お金が掛かっている感じがしますね。上質です。段差を乗り越える時の印象が、驚くほど違う。GRも振動しますけど、おさまりがいい。ブレーキも圧倒的に、GRの方が安心できます」とのことだった。ただ、従来型コペンのMTは200万円を切る値段で買えるので、初めてのクルマとしては、そちらを買うのもありだと安東さんは話していた。

次回は、試乗後の安東さんが、コペン GR SPORT開発陣とどんな話をしたかをお伝えしたい。

著者情報:安東弘樹(アンドウ・ヒロキ)

1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。