• 本木雅弘

“梟雄”や“マムシ”というあくの強いたとえが多い道三役を演じている感想を尋ねると、「それはもうヘビーですよね。自分はもっと薄味に生きているので、毎回奮い立たせないといけない」と本音を告白。「例えば、“怒り”とか“息巻く”というのも、大声を出すだけではダメで、静かな顔で奥歯を噛むとか、妙な間をつくるとか、一筋縄ではいかない道三を表現するのに苦心しています。時にメイクの力も借りつつ……」と話した。

また、「戦国は装いがすごく力がある」と言い、映画監督・黒澤明を父に持つ黒澤和子氏が手掛ける衣装について、「紗のかかった羽織りの奥には柄on柄を合わせてすごくレイヤーが効いている。それが同時に道三の多面性やすぐには読み解けない複雑さを表現している」と説明。「そういうことを武器にしてやっていけたらなと思います」と衣装の力も借りる。

そして、自身について「役者としての不器用さを、生真面目さで埋めているところがある」と分析した上で、「今回はそういうストイックな方向で役をデザインするのではなく、良くも悪くも一瞬タガが外れてもいいという。予定不調和に、計算がズレてボーリングでいえばガーターが出るような、その不完全さも味と見えてくればと思っています」と本作での挑戦を語る。

また、池端氏から「あの頃に人たちは究極の選択が訪れたときに、最後の最後は感情で動くでしょう」と言われたことに衝撃を受けたことを明かし、「感情なんて置き去りにして考え進めていくのかなと思ったら、最後は気持ちでしょっていうことだったので、本番でお芝居するときも、抑制し過ぎずポンと出してもいいのかなと。普段、大仰なのは恥ずかしいって思うんですが、ちょっと乗ってみるかっていう小さなトライはしています」と照れ笑いを浮かべながら話した。

■今後の楽しみは「ハゲがつら」

今後の撮影で楽しみにしていることは、「ハゲがつら」とのことで、「4Kにも耐え得る、継ぎ目の見えにくい特殊メイクでツルッとさせて、少しずつシワを入れて60代な感じに」と楽しそうに説明。また、「楽しみではなくて、最後の親子の長良川の戦いを極寒の1月とか2月にやる可能性があり、もちろん内側にボディスーツとか着せてもらえると思うんですけど、その撮影に耐え得るか体力的なところが心配ですね」と打ち明けた。

本木雅弘
1965年12月21日生まれ、埼玉県出身。元シブがき隊のメンバーで、1988年に解散した後、本格的に俳優活動を開始。映画『シコふんじゃった。』(1998)では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。2008年には、自らが発案し、主演を務めた映画『おくりびと』が日本映画史上初となる米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。そのほか、ドラマ『西遊記』(日本テレビ/1993)、『水曜日の情事』(フジテレビ/2001)、NHK大河ドラマ『徳川慶喜』(1998)、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』(2009~2011)、映画『トキワ荘の青春』(1996)、『永い言い訳』(2016)などに出演。

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