1月11日よりWOWOWプライムにてスタートする『連続ドラマW 彼らを見ればわかること』(毎週土曜 22:00~ 全8話 1話のみ無料放送)で主演を務める中山美穂にインタビュー。二子玉川のとあるマンションを舞台に、そこで暮らす3人の女性とその家族の姿を「覗き見するかのような視点」で描いた本作。再婚相手との家庭の「妻」で「一児の母」でありながら、官能作品で絶大な人気を誇るレディコミ漫画家としての顔も持つ内田百々子役を演じる中山に、本作の見どころや撮影中のエピソード、アイドル時代からの心境の変化などについて聞いた。

『連続ドラマW 彼らを見ればわかること』に主演する中山美穂

中山美穂

――台本を読まれてどんなことを感じましたか?

あらゆることが多様化しつつある時代に「家族」を扱うという意味では、興味深い作品だなぁと思いました。特別大きな事件が起きるというわけではないんですが、微妙な心の動きが繊細に描かれるところがすごくいいなと思ったんですね。だからこそあまりわかりやすくはしたくないというか、「静かだけど激しい流れ」のようなものがにじみ出てくるようなお芝居ができたらいいなと。役に関しては私は何でも受け入れるタイプなので(笑)、“レディースコミックの漫画家”という設定については「あぁ、そうなんだ」という感じでした。

――レディコミの漫画家を演じるにあたって、何か特別な役作りはされましたか?

そもそもレディースコミック自体これまで全く読んだことがなくて……。というより漫画の読み方すらよくわかっていないんです(笑)。絵心も全くないし、努力すればなんとかなるようなレベルでは無いので、それらしく見えるように撮ってもらってます(笑)。百々子は「春画に興味がある」という設定なので、衣装や髪型にも“和テイスト”を取り入れたりはしていますね。

――ちなみに、台本には百々子がSMクラブに取材に行く場面もありました。

はい。そのシーンは撮り終えました。実際に「行ってみたいなー」と思いました(笑)。

――WOWOWドラマの撮影現場は「映画っぽい」とおっしゃる方が多いのですが、今回はいかがですか?

今回、深川(栄洋)監督はちょっと特殊な撮り方をされているんです。「誰かが覗いている」という視点で撮られているので、実際にそういったカメラワークもあったりして、すごく面白いなと思いますね。

――特に印象的だった演出は?

今まさに撮影中なんですけれど、深川監督はものすごく長いシーンを普通にワンカットで撮ってしまったりする方なので、かなり緊張感がありますね。他の俳優さんとも「ここどうする?」「間違ったらごめんね!」って、ドキドキしながらやってます(笑)。

――緊張感がありつつも、現場の雰囲気は和やかな感じですか?

旦那さん役の生瀬さんがすごく盛り上げ上手な方なので、和気あいあいと(笑)。

――息子役をジャニーズJr.の髙橋優斗さんが演じていらっしゃるそうですね?

彼は今回の役にピッタリ。頭も良いし、お芝居もちゃんとしてますし。私は「次なる大スター」だと信じています!

――瑞希役の木村多江さんとの共演はいかがでしたか?

木村さんとは「昔から友達だったよね?」みたいな感じで(笑)。ドラマのように、大人になってもお互いここまで言い合えたりする関係はすごく素敵だと思います。自分とはそれぞれ考え方が違うからこそ、仲良くできているのかもしれないですね。

――百々子、瑞希、流美の3人の女性の中で、誰に一番共感できますか?

誰にも共感しないですね(笑)。でも、大島優子さん演じる「流美ちゃん」はすごくいい子なので憧れます。それぞれみんな主人公だと私は思っていて……。

――昨年公開された映画『蝶の眠り』に続き、今年も松尾スズキ監督の映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』やNHKのBSプレミアムで放送されたリバイバルドラマ「Wの悲劇」など、さまざまな作品に立て続けに出演されていますね。近年、女優業に意欲的に取り組まれている理由は?

しばらく仕事を離れていた時期もあったりしたので、周りからは「きっともうやらないんだろうな」と思われているような気がしたんです。だからあえて「やりますよ!」って、積極的な姿勢を見せたいという思いがあって……。

――では、まさにいま第2幕の「序章」といったところなんですね。

そうですね。

――とはいえ、『108~』の衝撃を超えてくる作品は、滅多にないような気もしますが。

確かにそうかもしれないですね(笑)。あとはSFとかになっちゃうかな(笑)。

――オファーを受ける作品にも変化を感じることはありますか?

最近は、若い頃と違って「等身大」を求められなくなってきた感じはしてますね。どんな作品のどんなポジションであれ、今までとは全く違う役をいただける瞬間というのがすごくうれしくて。そもそも私はモノづくりの現場の空気感に惹かれるところがあって、撮影現場で皆さんの仕事を眺めているのが一番好きなんです。どちらかというと演じることそのものより、作品の一部として存在できる自分がうれしいというか。

――現場が好きになったきっかけは?

もともと裏方気質なんだと思います。割といろんなことに気が付いちゃう方なので、「あぁ、もっとこうした方がいいのになぁ」って、心の中でつぶやいてます(笑)。でもそれは彼らがこれから自分で学んでいくことだから、ただ黙って見つめてます。もちろん応援する気持ちで(笑)。皆さん職人だと思っているから、口は出さないですね。

――職人の方々の手によって出来上がった作品を観て、どんなことを思いますか?

やっぱり完成した作品を観て驚きがあるときは、本当にうれしいですね。現場で演じているときは、編集でどんなふうに仕上がるかわからないでやっているわけですから。「あぁ、こういう繋げ方するんだ!」って感動することはたくさんありますね。

――中山さんは、どっぷりと役柄に入り込むタイプですか?

もちろん作品にもよるんですけど、私は普段から役柄になりきるようなタイプではないですね。だから今回も現場に入れば「百々子さんになる」という感じなんです。それこそ昔は衣装をお借りして、家でもそれを着て過ごしたりするようなタイプだったんですけどね(笑)。

――え~!? そんな感じでは片時も気が休まらなかったのでは?

休まらなかったですねぇ(笑)。喋り方も普段から役の喋り方になってしまったりして、撮影が終わってしばらくしても、役が残っていたりするのがすごく嫌だったんです。でも、いまはもう脱却できてます。長年やっていく中で徐々に切り替えられるようになってきたのかもしれないですね。

――昔と今とでは、役を演じる上でどんな違いがありますか?

今の方が断然楽しいですね。昔はやっぱり自分が求めるものとは違うものを求められることに対して、いちいち悩んだりしがちでしたけど、今は割と何でも受け入れてしまうので、悩むこと自体がもうほとんどなくなって(笑)。昔の方が今より大人だったなって思います。

――どんなところが?

もっと物事を一つ一つ真面目に考えていたような気がしますね。もちろん今が考えていない、というわけではないですけど(笑)。自由というか、もはや怖いものがないというか(笑)。ジタバタしたりしないし、すごくバランスが取れてると思いますね。

――これからも、役柄に対しては「来るもの拒まず」というスタンスですか?

「良い監督」「良い脚本」であることが最優先なので、「素晴らしい!」と感じるものなら何でも引き受けたいと思っています。面白い作品ならどんな役でもいいから関わりたいんです。

――たとえば?

言ったら叶ってしまいそうで、つまらないでしょ(笑)。

――シリアスなことでも、意外と視点を変えれば違って見えたりするものですが、中山さんご自身も、辛いことも笑いに変えて昇華する強さを持たれていたりしますか?

そうですね。周りの友だちには結構"パンクだね"って言われることが多いかも(笑)。多分私、ちょっと変わってるところがあるんですよね。このドラマもそうですけど、一生懸命になって右往左往している姿って、ちょっと滑稽に見えたりしますよね? そういうセンスが私はすごく好きなんです。チャップリンの無声映画とかもそうですけど、本人が一生懸命であればあるほど、周りから見ると可笑しかったりするじゃないですか。ドラマの登場人物だけでなく、私自身も含めて、そんな風に見えたらいいなと思いますね(笑)。

――まだ撮影が半分ぐらい残っているそうですが、どんな作品になると思いますか?

どうだろう? 今回は全然想像がつかないですよね。他の家族の部分は全然わからないので、一視聴者としても楽しめると思います。話数を重ねるごとにいろいろ明かされることもあったりするので、すごく興味深いです。

――中山さんは、ご自身が出演した作品を客観的に観られるタイプですか?

それが私、作っている過程を見るのは大好きなんですけど、いざ出来上がってみると怖くて、なかなかすぐに観られなかったりすることが多いんです。そういう時は、ちょっと時間が経ってから観るようにしています(笑)。

――今回の作品はすぐに観られそうですか?

自分の演技と言うよりは、ドラマの撮り方自体が面白いので、そこは必ずチェックしたいですね。皆さんにもぜひ「覗き見」していただければと思います(笑)。