――通常、「仮面ライダー」シリーズなどのアクションシーンはどのようにして作り上げられるのでしょうか。

まずアクション監督の淳くんが、立ち回りの"手"をつけるだけでなく、カメラアングルやカット割りにもアイデアを出し、もっとも効果的なアクションの見せ方を考えてくれます。それをもとにして、実際に画面を観ながら僕(監督)が「こういう風にできないか」と注文をつけ、両者のアイデアをすり合わせて最終的な演出を行います。

『ゼロワン』のパイロットでは、アクションの根底というか、動きをつける段階から一緒にじっくり話し合って「こういう手をやろう」「それじゃあ、それにこういう動きを加えてもいいか」という相談ができました。ここまで僕がアクション演出について口を出してもいいのかってくらい、2人でガッツリ意見を出し合って作っていました。画面を観ていただいて、今までとは雰囲気が違っているな、カッコいいなと思ってくれたらうれしいですね。

――『ゼロワン』が「令和」最初の作品だけに、杉原監督の言葉からは新たなる「仮面ライダー」の流れを作り出したいという意欲を感じます。

それは間違いなくありますね。「令和」一発目の「仮面ライダー」として、「平成仮面ライダー」シリーズ第1作の『仮面ライダークウガ』(2000年)には負けられねえ!という気構えは常に持っていました。『クウガ』は僕の師匠である石田秀範監督がメイン監督として第1話を撮っているじゃないですか。師匠と、師匠が作った作品には強い思いがありますので、僕が「仮面ライダー」の第1話をやるのなら、どこも手を抜くことはできないぞと、自分自身を奮い立たせていました。

――それでは映画『令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』のお話に移りたいと思います。まずは第1、2話に続いて「冬の映画」の監督を、と依頼があったときのお気持ちからうかがいしたいです。

通常、パイロット監督が冬の映画をやることはまれなのですが、今回は"ゼロワン誕生"にまつわるストーリーということで、僕が呼ばれたのだと思っています。

――ヒューマギアが人間に役立つ社会を描く『仮面ライダーゼロワン』と、常磐ソウゴと仲間たちが時空を自在に行き来する『仮面ライダージオウ』という個性の強い2作品を融合させるため、シナリオ作りはかなり難航したとうかがっていますが、初稿から決定稿に至るまで、ここは変えないでいこうとした「骨子の部分」があれば教えてください。

「仮面ライダーとは何か」という部分ですね。パイロットでは、或人は自分が変身した姿を「ゼロワン」だと認識していても、「仮面ライダー」とは言っていないんです。A.I.M.S.の不破諫や刃唯阿がバルカン、バルキリーに変身する際、ベルトの音声として「カメンライダー」というワードが出てくるだけ。ホン(脚本)の打ち合わせを始めたときからずっと「仮面ライダーとは何か」について真摯に考えてみよう、という姿勢は変わっていなかったんです。

――ゼロワンが自分を「仮面ライダー」だと自覚するまでが描かれる、ということでしょうか。一方でジオウは自分の顔に「ライダー」としっかり書いてありますから、最初から彼には仮面ライダーだという認識があるんですね。

そうそう(笑)。だから、ゼロワンとジオウは"真逆"の存在だといえます。お話のメインに置かれているのは或人なんです。『ジオウ』と『ゼロワン』を融合させた物語ですけれど、トップからラストまで、或人の感情を追いかけていく作りになっています。ゼロワンを主軸にすえながら、「歴史改変」「時間移動」「アナザーライダー」というトリック的なところで『ジオウ』に乗っかり、2つの作品を絡ませる。或人の住む世界が変わってしまうところから始まっているのですが、過去に「何か」が起きないと世界は変わりません。そこで『ジオウ』の敵だった「タイムジャッカー」を出し、事件の元凶をこしらえました。

――高橋さんは『ゼロワン』の第1話の時点ですでにナチュラルな感情表現とハイテンションのギャグなどで画面を圧倒し、新人とは思えない演技力を見せてくれました。

初めてという感じがしなかったのなら、それはもう彼の頑張りの賜物だといえますね。高橋くんはお芝居をすること自体は『ゼロワン』が初めてのようなもので、ほとんど演技経験のない状態から始めているんです。ホン読みをした段階ではまだ芝居として成立していないところもあったのですが、何度も台本のセリフを読んでもらったり、現場に入っても「このシーンではこんな風に演技してごらん」といったやりとりを繰り返したりしていましたね。

僕としては「初めての芝居だからこういうものかな」みたいな状態でOKを出すことができなくて、いくら初めてであっても僕が出すOKはちゃんとしたOKじゃないとダメだと思って、高橋くんの芝居を何度も撮り直しました。「ぜんぜんダメ」「それじゃ伝わらない」なんて、けっこう彼には辛く聞こえる言葉も発したかもしれません。一度、撮影した映像を監督用モニターの前で観てもらって、「この芝居で(視聴者に)思いが伝わるか?」なんて話して、感覚をつかんでもらいました。かなりスパルタでしたけれど。

でも、高橋くんはしっかり僕に食らいついてきて、何回もやり直してくれました。そうして何度も何度もテイクを重ねて、やっと出たOKテイクを使い、それをつないでいってできたのが、あの第1話の或人なんです。