――そういった丁寧な姿勢が生んだ信頼関係もあって、いよいよ『オダイバ!!超次元音楽祭』が実現します。しかも、いきなり2時間というのもすごいですね。
1時間だけだときっと「やっぱこのあたりか」みたいな人に限られてしまうと思って、2時間は絶対欲しかったんです。それに私、やっぱりこういう番組って地上波でやらないと意味がないと思うんです。地上波で放送して、たまたまテレビをつけていたような方に「わ、すごいな」とか「知らなかったけどいい曲だな」って思ってもらえるようにしないと、意味がないと思うんですよね。
――偶然チャンネルを合わせて出会う人がいて、そしてその人を惹きつけるような。
はい。そういう方々の目にたまたま触れたときに絶対何か引っかかるポイントのある番組にはするつもりですし、詳しい方にとっては「もう分かってるよ!」みたいなプロフィールも丁寧に紹介します。曲も鉄板曲をそろえるつもりですし……あとはバナナマンさんとのトーク。声優さんたちって、しゃべりもめちゃめちゃうまいじゃないですか?
――ラジオをやられている方も多いですし。
声優さんのタレント性の高さも引き出したいんです。声優さんたちって、絶対テレビスターになれる。いや、“なれる”というか“なる”んですよ。これから。ですから、そこを引き出すのも結構大きなテーマで。アニメにそれほど興味がなかったりアニソンに詳しくない人にとっての、いい“見本市”のような番組にしたいんです。
――だからこそ、あえて詳しい方ではないバナナマンさんをMCに。
「アニソン好きです!」っていう人が番組のMCだと、詳しくない人には分からない部分を飛ばしがちになってしまうと思いました。だから、それほど詳しくはなくてもアーティストへのリスペクトがあって、ゲストの良さを引き出してくれる方……という意味でお願いしました。きっとバナナマンさんが聞きたいことや疑問に思うことって、一般視聴者の方も同時に思うことのはずなので、視聴者目線から深堀りしてもらえればと思いますね。
■“アニソンのライブ”の熱をしっかり届けたい
――ということは、雰囲気的にはあまりバラエティバラエティはしない。
これだけの曲数を2時間の中でとなると、ちゃんとした音楽番組になると思います。でもトークの部分では笑いもあって、声優さんならではのちょっとアフレコ遊びみたいなこともしていただいたりと、詳しくない人にもとっつきやすいような要素も散りばめていきたいとも思っています。
――その他、見せ方の上で『オダイバ!!超次元音楽祭』ならではのポイントはありますか?
こういうジャンルの方々って、やっぱりお客さんの熱もパフォーマンスの一部じゃないですか? ですので、今回はセットを360度お客さんに囲まれるセンターステージのような感じにして、お客さんのコールやサイリウムの光もちゃんと画に乗せていきます。
――となると、映像面は普通の歌番組と結構違うものになりそうですね。
はい。それは「アニソンのライブって、こういう感じなんだよ」という空気感まで地上波でお届けしたいから。「ちゃんとコールが来るべきとこに来る」とか「サイリウムが変わるべき色に変わる」みたいなものを大事にしたいんですよ。ですので今回は、結構細かくお客さんを入れ替えます。それは、「この人のファン」という方に入ってもらいたいから。他局の大型音楽番組って、大会場でもお客さんが映ったときに意外と盛り上がってなかっていないこともありますよね?
――本来のお目当て以外のところで。
そうならないように『FNS歌謡祭』ではCMごとにお客さんを入れ替えたりしているんですけれど、そうするとやっぱり盛り上がり方が違うんですよね。この番組でもその手法は取り入れます。アーティストのみなさんがアウェー感ややりづらさを感じないよう、収録から魅せ方まで全てにおいて、そのアーティストの魅力を届けることを大事にしていきたいと思っています。
●浜崎 綾
1981年生まれ、北海道出身。慶應義塾大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『堂本兄弟』『僕らの音楽』『FNS歌謡祭』で演出を担当し、08年から『MUSIC FAIR』、14年からスタートした『KinKi Kidsのブンブブーン』を担当。
■著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)
群馬県出身。中学生の頃、ラジオを入り口にアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガーへのインタビューやレポート記事を手掛けている。
Twitter:@sunaken